『十二月の十日』ジョージ・ソーンダーズ(書評)
【12月29日 記】 基本的に長編小説が好きで短編はあまり進んで読まない僕が、どこでこの本を知り、何故読もうと思ったのか記憶がない。
多分誰かが書評で激賞していたのだろう。あるいは、「現代アメリカを代表する」と言われているジョージ・ソーンダーズという作家を初めて知って興味を持ったのか、それとも翻訳者である岸本佐知子に惹かれたのかもしれない。
しかし、いずれにしてもこの短編集が全米ベストセラーになったということが信じられない。陽気なアメリカ人たちは本当に好んでこんな小説を読もうと思うのだろうか?
訳者があとがきに書いているように、
ソーンダーズ作品の登場人物に、順風満帆な人生を歩んでいる人はほとんどいない
(『十二月の十日』訳者あとがき、岸本佐知子)
のである。いや、ほとんどじゃない、全然いないではないか。
しかも、彼らは、人生のある時点まではそれほどの苦難もなく幸せに暮らしていたのに、ある時ある事件をきっかけに人生の奈落に突き落とされた ── というわけでもない。
この世に生まれた瞬間から、家がとても貧乏だったり、親がとんでもない奴だったり、自身の性格に問題があって誰ともうまく溶け込めなかったりして、もう人生全てが不遇なのである。そして、
さまざまな理由で人生の歯車に押しつぶされている人々が、そこからなんとか脱却しようとして、ますますのっぴきならなくなっていく
(『十二月の十日』訳者あとがき、岸本佐知子)
のである。
ただ、彼らは、そんな中でもなんかひょっとして、ひょっとしたきっかけさえあればここから抜け出せるんじゃないかという淡い希望、と言うか、根拠のない自分勝手な妄想を抱いていたりもする。実際宝くじで 10,000ドルが当たったりもするのだが、残念ながら、そんなものは彼らの人生における小さな息継ぎでしかなく、大きなターニング・ポイントにはならないのだ。
設定は必ずしもリアルなものではなく、むしろ SF的、あるいは荒唐無稽でさえあったりして、読んでいてすぐに何のことか分からないようなことも少なくない。










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