映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』
【9月16日 記】 映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』を観てきた。
監督の近藤亮太という人のことは全く知らなかった。ホラー出身、と言うか、ホラー以外の映画を撮るのは今回が初めてらしい。
今回の目当ては重岡大毅である。
NTV『知らなくていいコト』(2020年)での吉高由里子の相手役のダメ男の演技を見て驚き、僕はアイドルに疎いもんで彼のことを知らなくて、慌てて調べたらジャニーズWEST(当時)のメンバーだった。
その後も TBS 『#家族募集します』(2021 年)や NTV『それってパクリじゃないですか?』(2023年)も観ていて、これは良い役者だという思いを強めた。
2024年の主演映画『ある閉ざされた雪の山荘で』においても、彼の演技は光っていた。
いつも思うのだが、旧ジャニーズ系の人たちって、不思議に演技の筋が良い。歌やダンスの練習はともかく、芝居の稽古についてはそんなに時間をかけているとは思えないのだが。
で、これは『信長協奏曲』や『マスカレード・ホテル』、『#マンホール』などの脚本を担当した岡田道尚が、今回は「原案・脚本・プロデュース」というものものしい肩書で手がけた作品である。
タイトルから分かるように、これは生成AI が絡んだ設定の映画だ。
高校生の幸来(さら、原菜乃華)が教師・伊野(森岡龍)の自宅で補習を受けているときに暴行されそうになり、必死で抵抗するうちに彫像で伊野の頭を殴って殺してしまう。
幸来はどうして良いか分からず、10歳上の兄・航(わたる、重岡大毅)に助けを求める。普段から生成AI を駆使している航は、現場に駆けつけると、まず生成AI に相談した。
すると生成AI は「必要以上に何度も殴っているので、正当防衛とは認められず、殺人罪に問われるかもしれない」と答えた。焦った航はさらにプロンプトを打ち込んで、この殺人を完全犯罪にするにはどうすれば良いかを問うた。
そして、生成AI の言う通りの証拠隠滅と小細工をして、とりあえずすぐに嫌疑がかかることからは逃れたが、彼らが死体に施した小細工が、ここのところ3件連続して発生している殺人事件と全く同じ手口であることが分かり、そこから彼らといろんな事実や人物が繋がってきて、次々と新しい展開が起きてくる。
近藤監督はホラーで鳴らしてきただけのことはあって、緊張感のある画を撮っている。──モリアーティ(石丸幹二)が現れるときはいつも背景をかなり省略した暗がりであったり、根津(黒田大輔)が廃工場の階段を登ってくるシーンの上からのカメラ・アングルとか、ガラスが割れてそこに映っていたモリアーティが粉々に割れるシーンとか…。
トップ女優の七希(なつき、田中みな実)が航と幸来にあまりに早くたどりつくところとか、航がどうやって拳銃を入手したのかとか、ちょっと乱暴で粗のある展開もあるが、まあまあよく練った脚本である。
僕はこの映画を見ながら、「しかし、このストーリー、どうやって収拾するよ? 結局関係者全員が逮捕されましたっちゅうわけにも行かないだろうに」と考えていたのだが、まあ、結局僕が「こうするしかないだろう」と思ったのと同じ形で事件は決着した。
ただ、この作品の良かったところは、そこで終わらずに、そこから2ひねりして、七希が幸来との別れ際に言う台詞と、ラストの幸来の短いシーンを入れて映画を終わったことだ。このラストは却々怖かった。
タイトルの「5秒」というのは、単に生成AI が驚くほどの短時間で答えを返すという意味ではない。航は何度もプロンプトを追加して答えを求めているので、決して完全犯罪が5秒で生成されたわけではない。
その5秒の意味が分かるのがラストシーンである。その5秒が重くのしかかってくるのである。
こういう風に、最後まで見て初めて意味が分かるタイトルって、僕は大好きである。
昨今では長文で全てのあらすじを書いてしまうようなタイトル(「会社で落ちこぼれていた中年男が異界に転生してみたらトップアイドルになった」みたいな)しか受けないらしいが、そういう風潮に逆らってどんどんこんな話を書いてほしいと思った。
今回、重岡にはそれほどの見せ場はなかったけれど、終盤で手詰まりになって追い込まれ、自棄になって行く感じはよく出ていたと思う。
AI に頼りすぎることに対する警鐘もほどほどに組み込まれていて、まあまあ面白い映画だった。


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