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Monday, May 04, 2026

映画『ラプソディ・ラプソディ』

【5月4日 記】  映画『ラプソディ・ラプソディ』を観てきた。びっくりするくらい良い映画だった。

利重剛は、俳優としては 1981年の TBS金ドラ『父母の誤算』を見てぶっ飛んで、それ以降ずっと好きな役者なのだが、監督としてもわりと好きで、1996年の『BeRLiN』と 2013年の『さよならドビュッシー』を見ている。その『さよならドビュッシー』以来 13年ぶりの監督作なのだそうだ。

夏野幹夫(高橋一生)はパスポート更新のために戸籍謄本(実は 2023年以降は不要になっているはずなのだが、この映画ではそうなっていた)を取り寄せたところ、自分が、知らない間に知らない女性「夏野繁子」(呉城久美)と結婚していることになっていることを知る。

役所に聞くと、婚姻届は手続き通りなされているとのことで、結婚ってそんなに簡単に届け出が可能なのかと驚くが、役所としても本人確認さえできれば疑う余地はないと言われ、なるほどと思う。

何かと幹夫の世話を焼いている叔父で歯医者の大介(利重剛)には、警察に届けるように言われるが、幹夫は「どういう事情か分からないのに、いきなり刑事事件にしたくない」と言い、まず話を聞くために繁子を探し始める。

そう、幹夫はありえないくらい「いい人」で、自分のことよりもまず周りの人たちの意向を気にし、そして、何があっても怒らない男なのだ。

とは言え、そう簡単に見つかるはずもなく、諦めかけていたとき、ふと近所の花屋の前を通りかかると、店員のゲイチ(芹澤興人)が「夏野さん、シーちゃん」と呼びかけているのが聞こえ、まさかと思って確かめたら、そこにいたのが本物の繁子だったのだが、驚く暇もなく、繁子は脱兎のごとく逃げ出す。

それを幹夫は息を切らしながら走って追っかけるが、逃げ足が速くて捕まらない。

しかし、花屋に戻ると、ゲイチが、繁子は実は自分の家に居候していると教えてくれて、やっと捕まえることができた。

幹夫と対照的に、繁子はわがままでへそ曲がりで繊細、かつ激情型の女性で、幹夫が何を尋ねてもろくに答えないし、時には悪意に満ちた反応をすることも。しかし、ゲイチと大介はなんとかふたりの関係を取り持とうとする。

繁子はそんなゲイチに苛立って家を飛び出すが、行くところがなくて、なんと幹夫の家に行く。この辺りが繁子のキャラクターをよく表した脚本だと思った。

そこからふたりの変な同居(同棲ではない)生活が始まるのだが、幹夫が繁子のことを知ろうとしていろいろ気を使うと、その何があっても決して怒らない無限の優しさに繁子がキレまくるという悪循環である。

だが、幹夫は決して「怒れない」人間ではなかったことがその後の展開で明らかになる。

ちょっと書きすぎたかな。まあ、このぐらいにしておこう。

ともかく2人の役者が素晴らしい。

この極端な人物は多分高橋一生にしか演じられなかっただろうと思うし、対照的な繁子を演じた呉城久美が、もう、これは主演女優賞級の見事な演技だった。

調べてみると、僕は彼女の出ていた映画を5本も観ていたが、名前にも顔にも全く記憶がなかった。こんな女優が今までそれほど注目されずに埋もれていたとは信じられない。なんと、京大法学部卒なのだそうである。

そして、幹夫の会社の派遣社員役の池脇千鶴が、これまた秀逸な演技でいっちょ噛みしてくる。笑えて泣ける(笑)

映画は全編横浜ロケで、その風景も美しいが、キッチンで幹夫と繁子が「対決」するド迫力の長回しや、ラストがキスではなくハグであるところなど、良いシーンがたくさんあった。

それは何よりも、利重剛自身による脚本が綿密に計算された素晴らしい脚本だったからだ。観ていて何度も声を上げて笑ったし、台詞も筋運びも一流だった。

前述の『父母の誤算』や『金八先生』の脚本を手がけた小山内美江子も力量のある脚本家で、僕は大好きだったのだが、利重剛もまた母に比肩できる脚本家になったと感じさせられた。

最後にめでたしめでたしで、ああ、これで終わりかと思ったら、もう一山あった。こういう作りも巧い。

めっちゃ後味の良い映画でもあるし、「この映画、いろんな賞をいろんな部門で獲ってほしいな」と思った。そう、「賞が獲れるんじゃないかな」ではなく「獲ってほしい」と思ってしまうくらい、本当に良い映画だった。

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