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Wednesday, April 08, 2026

映画『鬼の花嫁』

【4月8日 記】 映画『鬼の花嫁』を観てきた。

鬼の花嫁と言っても、鬼みたいに怖いお嫁さんのことではなく、鬼に嫁いだ人間女性の話である。

神は人間のほかに人間にはない超能力を持つあやかしを作り、現代では人間とあやかしが共存して、政治・経済・芸能などの世界ではあやかしの活躍がめざましい世の中になっている、という設定である。

あやかしには多くの種族があるが、鬼・妖狐・烏天狗が三大種族で、中でも鬼が強大な能力であやかし全体を統率している。

あやかしの中には本能によって人間の中から自分の結婚相手を見つけ出す者がいる。

主人公の東雲柚子(しののめ・ゆず、吉川愛)の妹・花梨(片岡凜)がまず、小学生時代に「あやかし特区」の入口で妖狐の狐月瑶太(伊藤健太郎)に出会い、婚約者となる。

それをきっかけに東雲家はあやかしの庇護を受けて金満家となり、花梨はわがまま放題な娘に育ち、その一方で両親も花梨も柚子を疎んじ、虐げるようになる。

瑶太はと言えば、花梨を盲目的に愛するあまり、ほとんど花梨の言いなりに妖力を使っている。とにかく瑶太と花梨の夫婦が絵に描いたような徹的的な悪人なのがすごい!(笑)

ところが、ある日柚子は、あやかし界の頂点に立つ鬼の鬼龍院一族の次期当主・鬼龍院玲夜(永瀬廉)に見初められ、鬼龍院家の花嫁として多くの使用人を抱える彼の豪邸に連れて行かれる。

この映画で描かれるのはそういう極端な世界でのラブストーリーなのだが、問題は、本能で相手を見出すと言ってもそれはあやかし側の一方的なものであり、人間の女性のほうは突然の求愛と別世界での暮らしにただただ当惑してしまうというところであり、それがこの物語のフックとなっている。

僕は妖怪ものは結構好きだが、この設定と展開はあまりにおとぎ話と言うか、まるで少女漫画で(まあ、原作が小説を少女漫画にコミカライズしたものだから仕方がないけど)、ちょっと僕の趣味ではない。

それでも見に行ったのは監督が池田千尋だったからだ。

全体として美術が際立った映画だった。

これは大本の小説からそうだったのか、あるいはコミックスからなのかは知らないが、あやかしの正装を和装にしたのは大正解だった。その一方で、当然人間の衣装は現代風なので、あやかしたちが麗しく映る上に異世界感が出る。

また、和装と言っても、完全な和装ではなく、あやかしたちの和装/洋装はいずれもアレンジを効かせた和洋折衷で、玲夜の邸宅の建築様式や装飾も同じような感じで、これは知っているはずがないのにどこか懐かしい大正浪漫を感じさせる。

カメラワークも大変きれいだった。

玲夜と柚子が初めて(キスするのかと思ったら、そうではなくて)抱き合うシーンでは俯瞰のカメラがパンダウンしてきて人間の目の高さになってから玲夜が柚子に歩み寄る。舞踏会のシーンではやっぱり2人のダンス(このダンスシーンも非常に美しかった)を真上から撮っていたカメラが今度はそのままの位置で柚子に歩み寄る玲夜を押える。

去って行く玲夜を柚子が追う階段のシーンも非常に映えていた。

そして、この映画のキモは何よりもキンプリの永瀬廉である。こういう物語のメインの登場人物として、彼ほどの嵌り役はないだろう。どうしてもこういうきれいな顔が必要だったはずだ。表情と言い、身のこなしと言い、台詞回しと言い、なんというクールな男か!

それに比べて吉川愛とは、やや地味な感じがしないでもないのだが、ただ、それなりにキャリアのある女優なので、演技面は悪くなかった。

今まで自分をいたぶって来た両親と妹と妹の婚約者の前に鬼龍院家の次期当主と現れて、自分が彼の婚約者であることを告げられたときの、複雑な表情の演技(あまりに速い展開にとまどう一方で、初めて自分を大切にしてくれた人と出会った喜びと、妹に対する勝ち誇った気持ち、でも、ここであんまり嬉しそうな顔をしてはいけないという自制心のミックス)には感心してしまった。

吉川愛のほうがひょっとして歳上なのかと思ったが、2人は同年生まれ(永瀬は早生まれだが)だった。

で、まあ、ラブストーリーなんだから、こんな感じで良いと言えば良いのかもしれないのだが、そうは言っても、霊力を失ってしまった玲夜はこの後どうなるのよ?という問題をほったらかして終わったのには驚いた。

この映画の続編が制作されるのかどうかは分からないが、多分原作はここからもっと長く続いているんだろう。

烏天狗の当主・烏水(うすい)役の嶋田久作は例によって魁夷だったが、和楽器の鼓の外側の赤いひもみたいなやつで顔を荷造りされていた妖狐の当主・狐雪撫子(こせつ・なでしこ)も強烈で、扮しているのが誰なのかエンディングのキャストを見るまで分からなかったのだが、これはなんと尾野真千子だった。

ま、そんな感じで、ある意味他愛もないのだが、結構楽しめる娯楽作品だった。脚本は喜安浩平と共同で『夢中さ、君に。』(MBS)を書いていた濱田真和。

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