語感、あるいは意味
【3月23日 記】 夫婦間で話が通じないことがある。いや、別に夫婦間である必要もないのだが、ここではひとつの例として。
それは地域的な問題、つまり東京弁と大阪弁みたいな問題とは限らない。育ってきた環境の違いなどによる語感の違いである。
例えば、妻に「今日は病院に行く日でしょ?」と言われて「いや、病院に行くのは今日じゃないよ」と答えたのだが、これは「病院」という単語の語感の違いである。
僕は確かに今日、普段から通っている開業医のところに薬を処方してもらうために行く。でも、手術の経過を診てもらうために病院に行くのは4月になってからである。
何が言いたいかと言うと、僕にとって「病院」という単語は、少なくとも複数の医者が勤務していて、入院のための設備がある、比較的大型の医療施設である。一般的な個人開業医のことは「病院」とは言わない。
僕と妻の会話がすれ違ってしまったのは、ひょっとして妻は「病院」という言葉で開業医の診療所も指すのだろうか?と思って確かめてみたら、「そうではない」と言う。
そもそも僕が長年通っている開業医は勤めていた会社の近所にあるので、彼女はそれが大規模な病院なのか小さな開業医なのかは知らないから「病院」と言ったまでだと言う。
しかし、その後に続けて、「でも、一般名称としては『病院』という単語を使う。『早く病院に行ったほうが良いよ』みたいに」と言うのである。
僕はそれは言わない。病院はあくまで大型施設である。そういう場合は、一般名称としては、「医者」あるいは「お医者さん」と言う。「早くお医者さんに行ったほうが良いよ」とか「医者に行って診てもらいなよ」などと。「病院で診てもらう」とは言わない。それは最初から大学病院などに行くことを意味してしまうと感じている。
妻はそれはおかしいと言う。「お医者さん/医者」は人物を指す言葉であり、施設を指す言葉ではないと言う。
確かに元はそうだが、でも「八百屋さんに行って玉ねぎ買ってきて」とか「散髪屋さんで切ってもらう」とか「量販店ではなく近所の電気屋さんで買った」などと、「職業+さん」で施設を表すことはよくある。
しかし、何よりも驚いたのは、そういう話をしていると妻が少しムキになってきたことだ。
僕は慌てて、これは妻の言い方が間違っていると非難しているのではないと釈明したのだが、「非難しているようにしか聞こえない」と言われてなおさら驚いた。
僕はただ「人によって言葉の捉え方が違っていて面白いなあ」と思って話していただけなのだ。すると妻は「そういう風に言ってくれれば分かる」と言った。
逆に言うと、そういう風に最初から注釈をつけて語らないと分かってもらえないのかと仰天した。
僕は言葉に対する興味が強くて、言葉に関することをネット上にいっぱい書き散らしている。しかし、その文章は読んだ人に「面白いな」とは受け取られずに、「非難された」と怒らせてしまっていたのかもしれない。
今後は気をつけなければならない、などと言いたいのではない(もちろん、それはそうなのだが…)。
単に驚いた。びっくりした。大きなショックを受けた。
僕には既に人の間違いを正してやろうというような思いはない。言葉は変わって行くものだ。それを観察して楽しんでいる。それに気づくのが愉悦の瞬間である。


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