「プラスティック」と「ビニール」の語感
【10月7日 記】 最近「プラスティック」という言葉(あるいは「プラスチック」、大阪のおっちゃん・おばちゃんたちは「プラッチック」などとも言ってました)の持つイメージが変わってきたと思うのです。
きっと若い人たちはそんなことないんだろうと思いますが、僕らが子供だった頃は、プラスティックと言えばもっぱら硬いものでしたから。
多分、当時の日本にはまだ柔らかいプラスティック製品があまりなかったんだろうと思います。
当時の僕らにとって典型的なプラスティック製品といえば、それはプラモデルでした。
はい、硬いプラスティック。そして、透明ではなく、色がついていました。
それから各種おもちゃ関係。グリコのおまけもそうでしたし、後の時代にはプラレールなどという大ヒット商品も出てきました。
女の子たちの人形も、僕らの幼少期にはセルロイド(これもプラスティックの一種なのですが)だったのが、次第にセルロイドよりも割れにくいプラスティックに変わって行き、今のフィギュアにたどり着いたのだと思います。
あとは何かな、弁当箱かな。筆箱もあったかな。
いずれにしても、それらは全て(でなかったとしたら大抵)硬めの素材でした。
じゃあ、柔らかいものは何と言っていたかと言えば、それは「ビニール」です。典型的なのは「ビニール袋」。
ところが、これは大人になってからのことですが、ビニール袋のことを英語では a plastic bag と言うのだと知って大変驚きました。え? あんな柔らかくて透明のものを「プラスティック」って言うのか!って感じ。
ちなみに、東京の名の通ったホテルのフロントで、外国人に Do you have a plastic bag?(ビニール袋ないですか)と訊かれて、意味がわからず何度も聞き返しているホテルマンを見かけたことがあります。
そして、「ビニール傘」もまた a plastic umbrella です。
一方、レコード盤のことは a vinyl と言います(主に米国。a record とも言いますが)。え? あんな硬いレコード盤がビニールで、あんな柔らかいビニール傘がプラスティックなん? 日本語のイメージと反対やんか!
ビニールというのは塩化ビニルのことで、それがプラスティックの一種であるということは、今では知っています。
「ビニール袋」と言う代わりに「ポリ袋」と言ったりもしますが、ポリエチレンもポリプロピレンもビニールも全部プラスティックで、要するにプラスティックというのは総称であるということは、今では知っています。
でも、初めに書いたように、当時僕らは硬いものはプラスティックで、柔らかいものはビニールだと思い込んでいたのです。当時は硬いものをプラスティックと呼び、柔らかいものはビニールとかポリエチレンなどと、個別の種類名で呼んでいたと記憶しています。
それがどうした?と言われると、別にどうもしていませんが、ま、時代とともに言葉は変わるということですよね。
ちなみにペットボトルの材料となっている合成樹脂 PET はポリエチレンテレフタレートのアクロニム(頭文字を連ねた略語)で、これもプラスティックの一種だと思うのですが、ゴミの分別という点で見ると、多くの自治体で PET とプラスティックは区別され、分別回収されています。
今では多くの容器や包装などに「プラ」「PET」などのマークがついていて、僕はあの「プラ」マークを見て、柔らかいものもプラスティックなんだという認識が次第にできてきたように思います。そう、「プラ」マークが「プラスティック」という語感を変えたのではないかと。
で、あの分別によって逆に PET はプラスティックじゃないようなイメージさえできちゃったと思います。
ただ、和英辞典で「ペットボトル」を引くと、まず出てくるのは a plastic bottle で、米国では少なくとも日常生活においては PET というアクロニムはあまり用いられていないみたいです。
と言うか、ひょっとしてそれはペットボトルの分別回収をしてないということなんでしょうか?
もちろん、米国ではペットボトルのことを a plastic bottle と言うのであれば、 plastic bottles という分類名で分別回収すれば良いだけのことですが、しかしボトルには PET ではないプラスティックのボトルもあります。日本だとそれは「PET」ではなく「プラ」に分別しなければなりません。
その辺のことは、米国ではどうなっているのでしょうか?
疑問がまたひとつ増えてしまいました(笑)


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