映画『宝島』
原作の直木賞受賞作は読んでいないので知らないが、この時代の沖縄を描くとなると、必然的にジャーナリスティックな方向に寄ることになるだろう。
僕は大友啓史という監督は、歴史物も扱いはするけれどその根っこはどこまでもエンタテイナーであると思っていて、彼がこれをどんな風に描くのか興味が湧いた。
しかも、大友啓史と並んで高田亮が脚本に名を連ねている(他に大浦光太)。この組合せがどういう化学反応を起こすのかも楽しみだった。
戦後の沖縄。駐留していた米軍から物資を奪い、貧しい島民たちに分け与えてきたオン(永山瑛太)、グスク(妻夫木聡)、オンの弟のレイ(窪田正孝)ら、通称「戦果アギヤー」、そしてオンの恋人のヤマコ(広瀬すず)。
ある夜「予想外の戦果」を挙げたリーダーのオンが消息を絶ってしまう。
刑事になってオンを探すグスク、ひたすらオンの帰りを待ち、いつしか小学校の教師になったヤマコ、米軍に捕まって投獄されたことがきっかけでヤクザになってしまったレイ。
オンの失踪の謎と血眼になってオンの消息を探るグスクたちと、米軍占領下から本土復帰までの沖縄の難しくて辛い歴史を重ねて描く。
3時間11分の巨編である。しかし、これは縮めようと思えば縮められる構成だった。
一つひとつのカットが長めで、そして、乱闘や暴動のシーンではカット数が多い。台詞を少し削ったり、台詞と台詞の間(ま)を短くしたり、台詞を言った後の余韻を早めに切り上げたり、あるいは人が入り乱れて細かいカットが連続するシーンではもう少しカット数を減らしたりしても、充分内容は伝わるだろう。
そうするべきだったと言いたいのではない。これはそんな風にこってりとした演出の映画だったのだ。そうしなければ、多分こんなに重いテーマを扱えなかっただろう。
とにかく画力が強い。アップも引き画も、とにかく画力が強い。
短いカットを積み重ねたシーンが多いが、その一つひとつのカットに(詳しくは書かないが)こだわりと工夫があると感じた。圧巻だったのは県民の怒りが爆発するコザ暴動のシーンで、よくもまああんな広い範囲で暴走する映像を撮ったなあと思う。エキストラは映画全体で延べ 5,000人を動員したのだそうだ。
上で挙げた4人に加えて、塚本晋也、中村蒼、瀧内公美ら、巧い役者が揃って、それぞれの人物の焦りや苛立ち、苦悩などがスーッと伝わってくる。
しかし、残念なことに、肝心のところで沖縄の言葉が理解できなかったりする。途中で話がよく分からなくなったことが何度かあった。『パラダイスビュー』ほどでなくても良いから、一部に字幕をつけるようなことも考えて良かったのではないだろうか?
最後まで観ると進行上ちょっと作り物っぽい印象も残ったし、沖縄の政治的な話がいつの間にかヒューマニズムの話に置き換えられちゃったなという気もしたのは確かだが、でも、全体として力のこもった良質の映画ではあったので、やっぱり言葉が分かりにくかったことが一番残念である。
それから、映画館を出たところで、男性の客が連れの女性に、「洗骨だけやって、あんなの、可愛そうだよ」と、如何にも沖縄のアクセントで語っているのが聞こえてきた。僕には全く分からないが、伝統的な弔いの儀式を省略して描いてしまっていたか何かなんだろう。そういうところも気をつけなければならない。



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