ヘボン式と訓令式
【8月30日 記】 昨夜、妻はテレビをを観ていた。別室で別のことをやっていた僕が入って行くと、「ねえねえ、新橋って M だって知ってた?」と訊かれた。
何のことかと思ったら、NHK『チコちゃんに叱られる!』で、
駅の表示では、どうして新宿は SHINJUKU で、新橋は SHIMBASHI になっているのか? どうして同じ「ん」なのに新橋は M なのか?
というのをやっていたのだ。
僕はびっくりした。
まずは JR の表示で新橋が SHIMBASHI だということに、今の今まで妻が全く気づいていなかったということに。
僕は「ことばのウェブ」というホームページをやっていた(すでに閉鎖)くらいだから、普段から言葉遣いには強い興味と深い関心があって、ローマ字の表記を見るたびに、「この会社(例えば JR)はちゃんと(外国人も馴染みやすいように)ヘボン式で書いているな。でも、あの会社は訓令式なのか」などとチェックしている。
ヘボン式とか訓令式とかいう名前は知らなくても、ローマ字の書き方にはいろいろあることは誰でも知っていて、かつ、ヘボン式では日本語の「ん」に N が充てられるケースと M が充てられるケースがあることぐらいは誰でも知っているのだと思い込んでいた。
ところが、昨日の『チコちゃんに叱られる!』では、そのこと自体が出題に採用されており、しかも学者がそれを「B や P のような、両方の唇がくっつく音の前では N は発音できない(しにくい)」などとしかつめらしく解説して、さらにわざわざ外国人にそれを発音させたりもしている。
そして、3人のスタジオ出演者が誰もまともに答えられないではないか!
なにそれ! びっくり。
ということは、妻も、番組の出演者も、みんな訓令式で SINBASI とか SINBUN とか書いてたわけ? あ、でも「し」はちゃんと SI ではなく SHI と書いてるんだよね?
うーむ、ほんとに驚いた。業界用語で言うと、クリビツテンギョウイタオドロ!である。
もし僕がこの番組のプロデューサーだったら、企画会議の際に、「そんなこと誰でも知っているだろ? それ、問題にしても仕方がないよ。もっと誰も知らないような事例はない?」と言って却下していたかもしれない。
世間の人はことほどさように言葉なんかにはとんと興味がないのである。きっと世間の人から見たら、むしろ僕のほうが変なことに興味のある変な人なのだ。
心の底からびっくりした。
ちなみに僕は必ずヘボン式で書いている。訓令式はただ読むだけでも気持ち悪いと思うことがある。
ところで、昨日の番組の内容をもう少し厳密に言いなおすと、ローマ字では日本語の「ん」に2通りの表記がなされていると言うよりも、むしろ逆に、日本語では N や (B/P/M音の直前の)M や、場合によっては NG などの異なる音を全部「ん」という文字で表していると言うべきだと思う。
そのことについては大昔に自分のホームページに書いたことがあり、note にも転載している。


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