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Saturday, April 26, 2025

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』

【4月26日 記】  映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を観てきた。

僕は 2007年の『恋するマドリ』以来、大九明子監督のかなりのファンである。

とりわけ 2015年の『でーれーガールズ』以降の映画については1本たりとも見逃していないのだが、今回の出来は特に素晴らしい。

こんなに心を揺さぶられたのは初めてである。

いつも小さな日傘を差していて、なんとなく冴えない感じの小西(萩原利久)。髪の毛をてっぺんでお団子にして、授業が終わったら一目散に出て行き、食堂では一人姿勢正しくざるそばを食べている桜田(河合優実)。ともに関西大学の学生である(関大がロケで全面協力している)。

小西には、友だちと言えるのはとんでもなく変人で、これまたイケていない山根(黒崎煌代)ぐらいしかおらず、一方桜田にはひとりも友だちがいない。

そんな2人が大学で出会う。まずは小西が桜田に魅かれる。思い切って話しかけてみると、ものの感じ方や価値観がめちゃくちゃ近くて、2人はすんなり友だちになる。

いつも疎外感を抱いて生きてきた小西が、初めて自分と心を通じ合える女性と巡り会えた高揚感が、スクリーン上でなんとも上手に表現されている。

そして、一つひとつの台詞が秀逸で、この本はちょっと書けない気がする。

この映画の原作はジャルジャルの福徳秀介の処女小説なのだが、果たしてこれらの台詞は原作にあったものなのか、それとも脚本を手掛けた大九監督によるものなのかがめちゃくちゃ気になったが、パンフレットを読むとかなり原作に忠実であるらしい。

舞台は大阪なので、横浜出身という設定の小西以外は大体関西弁で喋る。そのそれぞれの台詞に関西弁が見事に活かされている。

会話に自然に入ってくるギャグと自虐、そしてノリツッコミ。この豊かなニュアンスは関西人にしか書けないと思うし、逆にこのニュアンスが関西人以外の観客に伝わるのかどうか心配になるくらいである。

重要な登場人物にもうひとり、小西のバイト先の銭湯の同僚であるさっちゃん(伊東蒼)がいる。

この伊東蒼がびっくりするほど素晴らしい。これまでいろんな映画に出演して、あまり大きな役でなくてもその巧さを十全にアピールしてきた彼女だが、この映画での演技は、それこそレベルが違った。

映画の中に2箇所、長い長い台詞のシーンがある。最初に出てくるのが伊東蒼の、引き画での、ものすごい長台詞。これがもう、彼女の思いがビンビン伝わってきて、圧巻である。

そして、もう1箇所は河合優実。こちらもぶっちぎりの見せ場である。突然カメラがガバっと寄ってドアップになるの(クイック・ズームと言うらしいですね)には驚かされた。

大阪出身の伊東の滑らかな大阪弁に魅了された一方、東京出身の河合はよくここまで大阪弁を話せたなと感心した。

映画は恋と友情をメインに淡々と大学生活を描いて行くのかと思ったら、途中で大きな事件があり、そこからの展開も秀逸である。

さらに細かいところに目を向けると、日傘と頭のお団子と段ボールとか、「好き」と言うのが恥ずかしいから「アレ」と言ってしまうところ、スピッツの『初恋クレイジー』、犬のさくら(小西がさくらになるシーンも含めて)、山根のワケの分からん「山根弁」、とんでもなく変な喫茶店のとんでもなく変なマスター(安齋肇)、「幸せ」を「さちせ」、「好き」を「このき」とする妙な読み方(後でその由来が分かる)、テレビの音量を最大にする、前半でにこやかだった銭湯のおやじ(古田新太)の突然の大声 ──などなど、脇のエピソード自体の面白さもさることながら、そのいくつかは単独で放置せずしっかり繋げてくる構成にも舌を巻いた。

唯一、なんでさっちゃんは関大前ではなくて出町柳の駅から出てくるんだろう?と不思議だったのだが、さっちゃんだけは関大生ではなくて同志社大生という設定だったようだ。これはちょっと台詞に入れておいてほしかったかな。

いずれにしても、これは紛うかたなく大九明子監督の最高傑作だと思うし、令和に残る名作だと思う。痛々しくて切なくて、でもほんのり明かりの見える良い終わり方だった。

感服した。

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