映画『シンディ・ローパー レット・ザ・カナリア・シング』
【4月12日 記】 映画『シンディ・ローパー レット・ザ・カナリア・シング』を観てきた。
観ている最中に何度も目頭が熱くなり、True Colors のところでついに落涙してしまった。
Girls Just Want to Have Fun を初めて聴いたときの衝撃は今もって忘れない。心を揺さぶられた。
この歌は女の子たちを元気にさせる歌だったが、僕は東京支社の営業第一部に配属されて間もない、精神的に一番しんどかった時期で、この歌にとても励まされた。
そう、When the working day is done, boys also want to have fun なのである。そう叫んで踊りだしたくなるような作品だった。あれからずっと Cyndi の熱烈なファンである。もちろんスタジオ・アルバムは全て持っている。
日本公演にも2回行った。1986年9月13日と 1989年9月19日。どちらも日本武道館。
今回の日本公演もチケットを獲ろうと頑張ったのだが、本公演、追加公演ともに果たせなかった。
この映画は本人、シンディの姉と弟、そして関係者たちのインタビューとミュージック・ビデオ、ライブやテレビ出演時の過去映像、及びさまざまな資料映像で構成された、シンディ・ローパーの軌跡を幼少時からたどったドキュメンタリである。
シンディが最初は、masculine な視点で描かれた歌だと感じて気に入らなかった Girls Just Want to Have Fun にみんなで少しずつ手を加えて、まさにシンディでなければ表現不可能な作品に仕立て上げた過程は面白かった。シンディが何を思い、何をデザインしてあのビデオが出来上がったのかを知って胸が熱くなった。
そして、あのビデオで父親役を演じたのがプロレスラーだということは何となく知っていたが、母親役が彼女の実の母親だったとは知らなかった。彼女は度々母親をビデオに出演させている。
彼女がソロ・デビューする前に組んでいたバンド Blue Angel については、もちろん僕も CD を持っているもののあまり聴き込んでいなかったので、この映画で演奏シーンをじっくり観られたのは嬉しかった。もう一度 CD を聴き直してみたい。
Time after Time の歌詞で「君は先を急ぎすぎる。もっとゆっくり行きなさい」と言われているのは、彼女の当時の恋人でありマネージャーだったデビッド・ウルフにしょっちゅう言われていたことだったと知った。
そして、あの歌詞で長らく疑問だったフレーズの謎が解けた!── The second hand unwinds 「第二の手が緩む」とは何だろうと思っていたのだが、hand は「手」じゃなくて「時計の針」だったのだ。つまり、「秒針が巻き戻される」ような、過ぎた過去への強い想いを述べたものだった。
そして、She Bop の bop という単語も、僕は to dance to popular music ぐらいの意味だろうと思っていたのだが、そうではなくて「自慰する」との意味であったことも今日初めて知った(もっとも、かなりの俗語で、当時聴いていたアメリカ人の多くもその意味を知らなかったらしい。ちなみに、帰宅してから英英辞書を3つ引いてみたがどこにも載っていなかった)。
パティ・ラベルとの Time after Time のデュエットは想像を絶するハーモニーと迫力で、鳥肌が立つほどの名唱だった。
他人に言われるままに生きることに反発し続けてきた彼女の生き方に痺れるほど共感する。
来日公演のチケットは取れなかったけど、来日を記念して今回特別に上映されたこの作品を観られたのは無上の歓びである。
なお、タイトルの Let The Canary Sing は、シンディがデビッド・ウルフと出会う前のマネージャーに訴えられて、新曲の発表を差し止められそうになった裁判での判決文の一部だそうだ。つまり、彼女は裁判に勝ったわけだが、如何にも彼女に相応しい表現で、こちらも嬉しくなる。
この映画鑑賞はかけがえのない体験になった。シンディ・ローパーは僕にとって何ものにも替えがたい存在である。


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