Monday, March 31, 2025
Sunday, March 30, 2025
映画『少年と犬』
馳星周の原作は読んだ。例によって中味はほとんど憶えていないのだが、そこそこ面白かった記憶はある。
ただ、ノワール作家だと思って読んだら、なんじゃこりゃ、という肩透かしの感じがしたのもはっきり憶えている。
で、ま、原作読んだから映画も観ておこうかという感じだったのだが、映画館で観た予告編のコピーが「『ラーゲリより愛を込めて』のスタッフが贈る」というものだった。
なんじゃ、その線かい!とこれまた少し引いたのだが、まあ、瀬々敬久監督だし、一応観るか、ってとこ。瀬々敬久は僕が好きなタイプの監督ではないが、別に嫌ってはいないし手腕は評価している。脚本も林民夫だから、大外れはしないだろうという思いもあった。
で、見始めたら、設定とストーリーを相当変えているではないか! 本を読んでもほとんど忘れてしまう僕でも、かなり触っているということは分かる。
原作者はよくこれで OK を出したなあと思う。実のところ、納得ずくなのか不本意なのか知りたいところではあるが、まあ、原作者の考え方次第である。収まるところに収まったのだろう。
しかし、問題は原作を読んで、(僕とは違って素直に)大感激してこの映画を観に来た、(動物愛護家みたいな)人たちではないだろうか。憤懣やる方ない人もいるんじゃないかな、と思う。
でも、僕自身はこの改変は大成功だったと思っている。原作のままだと子供っぽい話にしか仕立て上げられなかったと思う。
Saturday, March 29, 2025
映画『悪い夏』
【3月29日 記】 映画『悪い夏』を観てきた。城定秀夫監督作品。
原作は染井為人のデビュー作にして横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作。当時「クズとワルしか出てこない」と言われたそうだが、そのことを知らずに観て良かったと思う。
冒頭は真夏のシーン。と言うか映画を通じて真夏しか描かれない。クソ暑い。セミが鳴いている。空気が蒸れて揺れている。道端にセミの抜け殻。それを踏み潰して歩く足のアップ。不吉なオープニングだ。
その足は市役所で生活保護の担当をしている佐々木(北村匠海)。顔がアップになる。汗が浮いている。その汗を何度もハンカチで拭いながら、これから生保受給者の山田(竹原ピストル)の家を訪ねる。
次のシーンは、シングルマザーで、これまた生保受給者の愛美(河合優実 ──最近彼女はこんな役柄ばかりになってきた)が歩く下半身を後ろから切り取った画。意外に足が太いんだなと思った。コンビニで弁当と煙草を買おうとするが、意外に高かったので弁当は返す。結構態度が悪い。
そして、彼女の肌にも汗。ケバくて濃い化粧 ──しかし、このメイクが映画の進行に伴ってだんだん薄くなって行く。この辺りの演出も良いなと思った。
先輩の高野(毎熊克哉)は愛美が生保を受けながら働いている事実を掴み、脅して肉体関係を強要するだけでなく、支給された生保の一部を奪い取っている。
同じく佐々木や高野の同僚で、真面目で正義感が強い宮田(伊藤万理華)は、匿名の通報を受けて高野が不正を働いているのではないかと嗅ぎつけ、佐々木に協力を求める。
一方、愛美は高野のことを友だちの莉華(箭内夢菜)に相談してしまったために、莉華の彼氏で、裏社会で手広く悪事を働いている金本(窪田正孝)が出てきてしまい、話はどんどんややこしくなる。金本は高野を脅して、新たに生保詐欺のビジネスを始めようとしたからだ。
Wednesday, March 26, 2025
映画『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』
【3月26日 記】 映画『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』を観てきた。
僕が「続編が制作されそうな終わり方だったので、もしあるなら何が何でもそれも観たい」と書いた前作『劇場版モノノ怪 唐傘』から8か月、舞台は同じく大奥だが、前作では脇役だった中﨟のボタンとフキが今回の主役である。
前作のときにも書いたが、とにかくべらぼうなアニメである。この芸術作品を完成するのにどれだけの時間と労力とノウハウと、それとチームワークが注ぎ込まれたのかと思うと気が遠くなる。
和紙テクスチャーに極彩色、それも和の色合いと洋のパステル・カラーの混在。透過性のあるレイヤー構造。
人物も事物も、江戸時代の現実の外見とは程遠いはずだが、とても美しく、ごちゃごちゃした色とデザイン。画面いっぱいに精緻な描き込みが溢れ返っている。
前作の映画評にはその辺りをもう少し詳しく書いたので、ご興味があればご参照あれ。
Monday, March 24, 2025
Play Log File on my Walkman #157
【3月24日 記】めちゃくちゃ久しぶりに僕が Walkman でランダムに聴いている楽曲を披露します。なんと半年近く書いていませんでした。全然聴いていないわけではなくて、ここに書いていなかっただけですが。
このシリーズ、当初は毎回 10曲ずつ披露していたのですが、文章を書くのが面倒くさくなって最近では 5曲ずつ選んでいます。
- 渚のうわさ(弘田三枝子)
- 雨が空から降れば(吉田拓郎)
- Cool Dynamo, Right on(MOONRIDERS)
- ドンファン(神田広美)
- ノーサイド(麗美)
Sunday, March 23, 2025
【note】 スウェーデンでもデンマークでもちょっと驚きました
【3月23日 埋】一昨日書いたスウェーデンとデンマーク旅行関係の記事を note に上げました。
と言っても、旅行記や観光情報みたいなものは全く書いていませんが(笑)
ま、一応ここにも貼っておきます。
Friday, March 21, 2025
コペンハーゲン空港のスウェーデン人家族
【3月21日 記】 夫婦でちょっとスウェーデンとデンマークまで行ってきた。
このブログを暫く更新していなかったのはそのせいである。
帰りにデンマークのコペンハーゲン空港の待合室で搭乗時刻を待っていると、僕の眼の前に座ったスウェーデン人(であるということは後に判ったのだが)の爺さんが、僕の顔を時々チラチラ見るのである。
「なんやねん、この爺さん」と思って(ま、僕も爺さんだけど)こちらもチラチラ見返していたら、しばらくして意を決したのか、にこやかに英語で話しかけてきた ── 「あなたも日本に行くのですか?」と。
多分僕のことを「この東洋人は日本人かなあ」「こいつは英語がしゃべれるだろうか」などと思案しながらチラチラ見ていたのだろう。
Saturday, March 15, 2025
日本アカデミー賞
【3月15日 記】 いつ決まったのかは知らないのだが、日本アカデミー賞の発表があったらしい。知人の facebook 投稿で知った。
このブログにも何度も書いているが、僕はこの賞をあまり当てにしていない。
信頼感がないと言うと反感を買うかも知れないのでもう少し違う言い方をすると、僕とは趣味趣向が全く異なるので、そういう意味で当てにしていないのである。
今回は僕が、
僕の知人は「文句なしに今年一番の映画」みたいな書き方をしていたが、僕はそこまで称賛はしない。
と書いた『侍タイムスリッパー』が最優秀作品賞だそうな。
それから、僕が、
最後に、なんか、日本アカデミー賞あたりがうっかり作品賞か何かを与えてしまいそうな映画だったと言っておこう。
と書いた『正体』は、最優秀は逃したがきっちり優秀作品賞には選ばれており、最優秀監督賞と最優秀主演男優賞、最優秀助演女優賞を獲っている。
やっぱりね、という感じ。
Friday, March 14, 2025
映画『早乙女カナコの場合は』
【3月14日 記】 映画『早乙女カナコの場合は』を観てきた。
そんなにたくさん観ているわけではないけれど、矢崎仁司監督作品には本当にハズレがないように思う。まあ、今読み返すと『太陽の坐る場所』の時には少し貶してはいるがw
しかし、この映画はまさに絶品だった。
で、本筋に入る前にちょっと脇のネタに触れておくと、今回山田杏奈がエロいので驚いた。今までこんな山田杏奈は見たことがない。
男に媚びを売って甘えるタイプの役柄ということもあったし、前半では化粧も濃く、如何にもという衣装を着ていたこともあるが、とにかくエロいのである。肉感的でそそられるのである。
それもこれも映画の中でのキャラの描き方が素晴らしいということの証明だと思う。
この映画は、タイトルこそ『早乙女カナコの場合は』だが、実際は単に主人公の早乙女カナコ(橋本愛)に終始していないのだ。
彼女の大学入学以来の彼氏で、いろいろありながら腐れ縁が切れない長津田啓士(中川大志)、長津田に一目惚れする女子大生の本田麻衣子(山田杏奈)、カナコの大学と就職先(永和出版)の先輩でカナコに告白する吉沢洋一(中村蒼)、そして、同じく永和出版の社員で新人カナコのコーチ役で実は吉沢の元カノの慶野亜依子(臼田あさ美)の5人の主要人物の「場合」が、かなり鮮明に描き分けられている。
よくあるパタンとしてはそれぞれの人物が、主人公/恋人/恋敵/親友みたいな固定的な役柄を与えられて固定的に描かれるのであるが、この映画にあっては、それぞれの人物がお互いに交わることによってそれぞれの関係性が次第に化学変化を起こすのである。── 今までこういう描き方をした映画があっただろうか? そこが一番素晴らしいと僕は思った。
この映画は決して、単にちゃらんぽらんな男に惚れてしまった真面目な女の子の「場合」を描いたものではないのである。この5人のキャラクターが五人五色で非常に個性的に描かれ、如何にもその人らしい「場合」が展開して行くのだ。
観客は「切ないよねえ、でも、その人だったらきっとそうだよね」と思うのである。
Thursday, March 13, 2025
アイドル♡ミラクルバイブルシリーズ ファイナル
【3月13日 記】 前に何かを買った時にキャンペーンをやっていたらしく、SONY MUSIC SHOP の 500円クーポンが手許にあったのだけれど、別に買いたいものもないし、このまま期限切れを迎えるかなと思っていたのだが、サイトを見ていたらどうしても手に入れたい CD があるのを発見した。
それは『アイドル♡ミラクルバイブルシリーズ ファイナル』というコンピレーション・アルバムで、帯には「入手しづらい隠れた名曲を歌う女性歌手 10組。待望の初CD化多数!」とある。
何故「このアルバムを買わなければ!」と思ったかと言うと、その 10組の最後に小川美希の名前があったからだ。
小川美希は、僕がこのブログでも繰り返し取り上げて書いている 1970年代歌謡界を代表する歌手である(と、ヒット曲はなかったけれど、僕はそう思っている)小川みきが、1975年にフィリップス・レコードから CBS・ソニーに移籍した以後の芸名である。
ここには彼女の、CBS・ソニーでの第1弾シングルの『朝食』と、その B面の『夜のページ』が収められているのである。
『朝食』は、聴いたことはあるにはあるのだが、曲を憶えるほどではなく、かつ、音源は持っていなかった。だから飛びつくように買ってしまった。
Tuesday, March 11, 2025
スマホリング・デビュー記
【3月11日 記】 この間 MagSafe 充電器デビューの記事を書いたが、使い始めると、なんかこのピタッとくっつく感じが妙に良くて、ついにスマホリングまで購入してしまった(笑)
昔はスマホリングなんて、なんであんな無粋なものをつけるんだろう、と忌避していたのだが、とは言え前に使っていた iPhone は硬い路上に落として画面が割れてしまったから買い直したのであり、指がかかるところがあると安心なのは間違いない。
Sunday, March 09, 2025
数字に対するちょっとした執着
【3月9日 記】 特に今日は書くほどのことはないのですが、それでも今日だけは(普段はそんなことは全く思わないのだけれど)無理やりにでも何か書いておこうかな、と思います。
理由は単純で、今月は 1日、3日、5日、7日と、奇数日には全部、と言うか、奇数日だけに記事を上げてきたから、今日も上げておこうか、ってな感じ。
まあ、そんなことに拘って 31日まで続けようなんて気はさらさらないのですが、でも1桁の間ぐらいはやっておこうかと(笑)
こういう数字が並ぶのって気持ち良いじゃないですか? そんなことない?
僕の場合は日常生活の至るところでそういうことを意識してしまいます。
でも、それは誰にでもあることで、例えばゾロ目とか、キリ番とかの例を挙げると分かるでしょ?
よく「コンビニで買い物したら合計税込みで 777円だった」とか言って 、レシートの写真を X にアップしてる人いますよね。あんな感じ。
Friday, March 07, 2025
【note】 僕とディランとその周辺
【3月7日 埋】 以前ここに書いた『名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN』の映画評を大幅に加筆修正して、note に『僕とディランとその周辺』という一文をアップロードしました。
かなりの長文になってしまいましたが、もしもご興味が湧きましたらご一読ください。
Wednesday, March 05, 2025
タッチでエキナカ 入場券ポイントバック! キャンペーン
【3月5日 記】 2/18 の記事に書いた通り、Suica、JREポイント、JRE BANK の三種の神器を揃えて、僕はすっかり JR族になった。
その結果いろんなポイントや特典がつくことになったのだが、その中にとてもありがたいものがあった。
駅ナカというものができて非常に便利になったのだが、それはあくまでこれから電車でどこかへ出かけるか、あるいはどこかから帰ってくる途中でお店を利用するシチュエーション、つまり、自分も駅ナカにいる場合である。
わざわざ何かを買うために駅ナカに行こうとすると当然入場料を取られてしまう。
ところが、Suica で入場して、特定の駅の駅ナカで 1000円以上の買い物をして、代金を Suica で支払って、2時間以内に Suica で改札を出てきたら、入場券分の 150円が 150ポイントとして返還されるというのである。
Monday, March 03, 2025
MagSafe Charger デビュー記
【3月3日 記】 iPhone の充電用コードを MagSafe に変えた。こっちのほうが良いから、と思って変えたのではない。仕方なく変えたのである。
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今使っている iPhone13 の lightning の端子(そう、iPhone13 はまだ USB-C ではない)がバカになって、うまく充電できなくなってしまったのである。
とにかく接触が悪くて、グサッと奥まで挿しても充電が始まらない。左右にクネクネ押し込んでみるとうまく繋がって充電がスタートしたりもするのだが、とにかく安定しない。
ちょっと手が当たったりするだけで、充電がストップしたり、ひどい場合はコードが抜けてしまったりするのである。
僕の場合は睡眠計測アプリを使っているので、就寝時にはそのアプリをスタートさせて、iPhone を充電しながら枕元に置いておくのだが、朝起きて全く充電ができていなかったり、コードが抜けてしまっていたりするとほんとにがっかりする。
何よりもこんな状態では旅行に行ったときなどが不安である。
もう新しい iPhone に買い替えるしかないのかな、と考えていた時に、しかし、ふと気づいたのである。── そうか! MagSafe にしたら、もうこの端子を使う必要がないのだ!と。
Saturday, March 01, 2025
映画『名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN』
【3月1日 記】 映画『名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN』を観てきた。
生きている間に自分のことが映画になるってどんな気分なんだろう? ボブ・ディランにそれこそ How does it feel? と訊いてみたい気分だ。
きっと事実と違う部分もあるだろう。いや、そもそもディランはこの映画を観るんだろうか?
そんなことを考えながら観に行ったのだが、終わってからパンフを読んだら、ジェームズ・マンゴールド監督は準備段階でボブ・ディランと直接話す機会があったと書いてある。
おまけに主演のティモシー・シャラメについては、自身のソーシャル・メディアのアカウントでディランが「ティミーはすばらしい俳優だから、きっと僕の役を完璧に演じてくれると思うよ」などと投稿していたというではないか。
まあ、そりゃそうなんだ(当然ディランの事務所の社長も P に名を連ねている)けど、その一方で、「なーんだ」という感じ。僕が感じたこのギャップは、ことほど左様にディランという存在は神格化され、常に時代に対する反逆児みたいなレッテルを貼られているということだ。
この映画は 1961年から 65年までの、それこそ a complete unknown だったディランが a rolling stone のような人生を歩み始めたところまでを描いたものである。
しかし、僕がディランをまともに聴き始めたのは 1971年にジョージ・ハリスンが主宰した『バングラデッシュ難民救済コンサート』からである。
このレコードには彼がアコースティック・ギターとブルーズハープで歌った 5曲が収録されていて、その中には、この映画の中でディランが、舞台上でジョーン・バエズがギターで前奏を弾き始めたのに歌うのを拒否した『風に吹かれて』も入っている。
そう、彼はアコースティック・スタイルで昔の曲を歌うことを未来永劫拒否したのではないのである。
ディランが初来日した時の記者会見で、「あなたはフォークソングの神と言われているがどう思うか?」と質問したバカな記者がいた。ディランは「私は神ではない」と答えた。
そう、ディランは神ではないのである。そしてこれは神ではないディランを描いた映画である。




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