転送禁止と還元禁止の発想
【4月14日特記】 政治というものはときどき変な対応をするものである。最近気になることが2つあった。
ひとつは公職選挙法改正案での「メール転送」禁止である。
日本では漸く選挙運動にインターネットの様々なメディアやツールが使えるようになりそうな状況で、メールもそのひとつである。ところが、一般有権者はメールを使った選挙運動ができないので、受け取ったメールを転送することはできないのだそうである。
うーむ、なんだろう、これは?
そもそもがポスターやチラシの枚数を総量規制しようという元の選挙法の発想を引きずっているからこういうことになる。いや、分からないでもない。転送を許すとメールはねずみ講的に広がって行く。「無尽蔵は良くない。歯止めをかけなければ」ということだ。
でも、その根拠は「なんとなく」ということでしかないのではないか?
これはやはり選挙運動をする側を縛ろうとしているのか、それとも、メールを送りつけられる側の迷惑を防止しようとしているのか?
前者であるとしたら、どうしてたくさんメールを撒いてはいけないのか、解るようで今イチ解らない。
だいいちメールをたくさん送ると当選するというものではない。僕などは送ってくれと頼んでもいないメールが送られてきたら、それだけで嫌気が差して、その候補者には投票しないのではないかと思う。
そして、後者であるとすれば、それは本来あくまでオプトイン/オプトアウトの原則で縛るべきことではないのか?
何よりも問題は、メールの転送というのは今では誰もが日常的な感覚でやっていることである。その日常的な行為をなんらかの理念によって禁止しようとするのは、方便として無理があるということである。
そして、もし転送がダメなら、引用はどうなのか? 自分の書いたメールに、受け取ったメールの全文ではなく一部を引用して送るとどうなるのか?
日常的にやっていることだけに、何故ダメなのかを気分的に納得させるのが難しいし、どこまでがダメでどこからがOKなのかという線引も難しいのである。
インターネット選挙の解禁は各候補者の資金の大小によって差が出なくするための方策である。ならばあまり変に小細工せずにいろんなことをオープンにすれば良いのではないかと思うのだが。
あるいは、それ以外に僕が気づいていない観点があるんだろうか?
それからもうひとつは来年4月の消費増税時の「消費税還元セール」の禁止である。これは大手小売業者の財界人がこぞって反対している。
ファーストリテイリングの柳井会長兼社長は「そんな法案をつくること自体が理解できない。先進国のやることではない」と怒っている。
イオンの岡田会長も「(もし消費税還元セールのために立場の弱い仕入れ業者に値下げを迫ることを心配しているのであれば)小売業者を信用していない。不当なことをする小売業者がいるなら現行法で摘発すればいいだけだ」と怒っている。
これもなんなんだろう? 非常に気分的な規制であるような気がする。
「消費税還元セール」というのは、増税した分の消費税を払いませんというのではない。上がったのと同額を値引きして客寄せをしようというマーケティングの手法である。
小売業はあの手この手で売上の拡大を図っている。クーポンや景品もそうだし、値下げというのもそのひとつである。
そういう普段からやっていることを、ある時期だけ禁じようとするのは非常に無理があるのだ。
その値下げの名目をどんな風に設定しても、それは売り手の勝手ではないか? それこそ宣伝の上手い下手が如実に現れる部分である。
これを禁じようとするのであれば、むしろ一切の値上げを禁じてほしいと僕は思う。そのほうがよっぽど消費者の生活を守ることになるではないか。もっとも、それは歪んだ方法で守っているのであるが。
多分、「俺が増税をするって言ってんのに、その上がった分をお返ししますって、お前は俺をなめてんのか!」みたいな感覚に支配されているのではないかと思う。そうでないとしたら、一体何が理由なのだろう?
僕は思う。すでに社会に浸透して、普段から人が当たり前にやっていることを禁じようとするのであれば、そこによほどの説得力がなければ人は反発するということである。
もしもそういう基本的なことが解らない人たちが政治に携わっているとしたら、それはとても哀しいことである。


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