3 word phrase
【6月11日特記】 昨日、阪急梅田駅のプラットフォームで60歳くらいの女性に呼び止められた。
携帯音楽プレイヤを聴いている人間を呼び止めるなんて珍しいなあ、と思いながら、たまたま静かな曲がかかっていて「すみません」という声が聞きとれてしまったので、僕はやむなくイヤフォンを外した。すると女性は言った。
「わたし、韓国、大阪駅」
これを聞いて僕は、人間のコミュニケーション能力はなんと素晴らしいものだろうと感心してしまった。そのおばさんのコミュニケーション能力ではない。おばさんの 3 word phrase を聞いて、「私は韓国から来ていて道が分からないのですが、大阪駅にはどう行ったら良いでしょうか?」という文章を再構成してしまった自分自身の能力に対してである。
しかし、これに対してどう返すか? 彼女と同じ流儀で、
「あなた、ここ、まっすぐ行く、阪急百貨店、角、右曲がる、突き当たり」
などと言っても多分通じないだろう。現に僕が「JRの大阪駅に行きたいんですか?」と訊き返しても明瞭な反応がない。
幸か不幸か時間もあったので、
「仕方がない、一緒に行きましょうか」
と言ったら、言葉の意味を理解した感じはないが僕の意図は解した模様。
ところで本当にJR大阪駅で良いのか? まあ、阪急も阪神も地下鉄も駅の名前は梅田で、大阪となるとJRだけだから多分JRなんだろう。それを間違ってたってさすがに知らんわ。ところで、ええと、大阪駅に出るなら茶屋町口から出ないほうが良いか、などと考えているうちにこのおばさん、すたこらさっさと茶屋町口の改札から出てしまう。
ありゃりゃ、難儀なおばはん。さて、ここからJRに抜けるにはどこから行ったら近いかなあと考えていたら、突然
「ちかてつ」
と来た。
「え、地下鉄に乗るの?」
「はい」
「地下鉄でどこ行くの?」
「地下鉄梅田駅」
と言うので方針変更。紀伊國屋書店と地蔵横町の間を抜けて17番街の前の階段を下りて無事に御堂筋線の駅まで送り届けた。
ひょっとして地下鉄は地下鉄でも谷町線や四ツ橋線の駅に行きたかったんじゃないだろうな、と気になるが、それなら西梅田駅、東梅田駅と言ってもらわないと困る。
良いことをしたはずなのに妙に心残り。それは、この場合僕ら2人の間で交わされたやりとりの半分は通じたコミュニケーションで残りの半分は通じなかったコミュニケーションだからなんだろう。
うむ。


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