Monday, October 05, 2026
Saturday, October 03, 2026
映画『時給三〇〇円の死神』
今月は観たい映画が目白押しで、とてもじゃないけれど全部観るのは不可能っぽいので、そうなると監督に対する好き度合いが強い順に観ようと思って、酒井麻衣監督の今作を選んだ。
客席はなにわ男子のファンと思われる女性客でいっぱいだった。
父親(山口馬木也)が不祥事を起こして逮捕され、それをきっかけに両親が離婚して母親とは音信不通になり、小さな町では噂がすぐに広がってアルバイトにも雇ってもらえない不遇を託っていた佐倉(西畑大吾)が、大学の同級生・花森(福本莉子)の誘いで、“時給三〇〇円の死神”のアルバイトを始める話。
冒頭は佐倉が花森に声をかけられるシーン。
雨の横断歩道。真上からの構図。歩行者は全員黒っぽい服を着て、黒い傘を差して横断歩道を渡っている。そこに白い服を着て白い傘を差した花森が現れる。── 佐倉の心境を背景に託した画作りである。
花森の「佐倉くーん」という呼びかけに、一瞬画面がフリーズし、雨粒の一つひとつが宙に浮かんで見える美しいシーンである。
アルバイトの内容は、未練を残したまま死んだ人たちの“ロスタイム”に寄り添って、彼らの未練を取り除き、彼らを送り出してやる、というもの。時給はわずか 300円。
佐倉にとっての最初の顧客は、父親の事件をきっかけに別れてしまった元カノの朝月(渋谷凪咲)。彼は彼女がすでに死んでいることさえ知らないまま、彼女に接してしまう。そして、彼との最後の思い出を抱いて彼女は旅立つ。
死者が旅立ってしまうと、ロスタイム中の出来事はなかったことになり、みんなの記憶からも消えてしまう。
佐倉は辛くなって、このバイトを辞めると言うが、花森に「死神を辞めるとロスタイム中の彼女との記憶も消えてしまうよ」と言われて、思い直す。
それから、彼らは2人でさまざまな、それぞれが結構重い事情を抱えた死者たちと関わって行く。
パンフレットでは「衝撃の事実」として伏せられていた秘密は、残念ながら僕にはかなり早い段階で、花森がロスタイム中の死者の特技を説明したシーンで、完全に読み切れてしまった。
ただ、ひょっとすると監督はその事実を必死で隠し通す気はなかったのかもしれない。もしそうなら、オープニングの雨のシーンをあんな風には作らなかったはずだ。
Friday, October 02, 2026
衣替記
【10月2日 記】 衣替えをした。
毎年こんな時期にやってたかな?と思って、日記を検索してみたら、検索できる範囲で確認できた記述は、2020/9/20 の1箇所だけだった。この年は今年より 10日以上前にやっていたわけだ。
地球温暖化が進んで、近年では東京でも 10月に入ってからでも平気で 30℃ を超えたりするので、年々遅くなっているのは確かだろう。
Tuesday, September 29, 2026
Battleship Island
【9月29日 記】 長崎に旅行に行ってきた。端島(通称:軍艦島)に上陸した。
かつて炭鉱の島として栄え、最盛期には 5,000人以上が暮らしていたが、主要なエネルギーが石炭から石油に切り替わったこともあって炭鉱は閉じられ、今は無人島になっている。
僕はその島の存在を、2024年の10月期に TBS が日曜劇場枠で放送した『海に眠るダイヤモンド』の舞台になるまで全く知らなかった。そして、ドラマの出来が素晴らしかったこともあって、一度行ってみたいと思っていたのだ。
Friday, September 25, 2026
映画『我々は宇宙人』
【9月25日 記】 映画『我々は宇宙人』を観てきた。
予告編に魅せられて、何の予備知識もなく見に行ったのだが、いやぁ、すごい作品だった。
門脇康平という 29歳の映画監督/アニメーション作家が、企画から5年の年月をかけて完成したオリジナル・アニメ。
門脇は東京藝術大学を卒業後、アニメ会社に就職し、その後独立し、YOASOBI の MV などを手がけて来たらしい。
オリジナル・アニメに求められるものは作画能力だけではなく、ストーリーの構成力も必須で、そのいずれが欠けても我々を驚かすような作品にはならないが、この作品は、そのいずれについても、凡百の作品を遥かに凌駕したものがある。
まず画のほうについて言うと、背景は徹底して写実的なのに対して、人物はデフォルメされた手書きの線画である。
線画アニメと言うと、人物の輪郭が一本の曲線でスーッと描かれているものを思い浮かべるが、この作品ではまるでデッサンのようなタッチで、輪郭は何と言うか、“毛羽立っている”感じだ。
構図がまた秀逸で、多用される俯瞰映像、そして胸元から煽るような顔のアップ、そこからもっと寄った、睫毛もくっきりの目のアップ。とりわけ目の動き。目による芝居が大げさなくらいフィーチャーされており、強烈に印象深い。
全般に高さを意識した構図(上からと下からの両方)が特徴的で、そこに動きを取り込んだ画作りも巧く、冒頭の高速道路の降り口のシーンなどで描かれた、黒目に映る風景描写なども鮮烈だった。
色遣いも秀逸で、トイレでトイレットペーパーに血が滴り落ちて、巻き取っても巻き取ってもまだ下の紙に血が滲んでいるというシーンは強烈だった。走る車窓から捉えた赤い月など、カメラが動くカットもとてもきれいだった。
光と影のあしらい方は極めて多彩で、美しい。その一方で、人間は必ずしも美男美女には描かれていない。
子どもがよくやる無駄な動き(おどけてまともに走らなかったり、無意味に飛び跳ねたり)の捉え方が本当に巧みで、「ああ、そうそう、子どもって、そうなんだよな」と思わせる。
パンフレットによると、これはロトスコープ(カメラでまず人間の動きを撮影して、それをアニメにトレースする方法)から「要素だけ」「すくい取り」、あとはアニメーターが描き足したらしい。
ストーリーは、後藤翼(CV:慎木悠人、坂東龍汰)とそのクラスメートだった星暁太郎(CV:中込佑玖、岡山天音)の、小学校3年生から 20代前半ぐらいまでの話。
Tuesday, September 22, 2026
映画『さとこはいつも』
【9月22日 記】 映画『さとこはいつも』を観てきた。沖田修一監督のオリジナル脚本。
ぎっしり満員で、最前列の席しか取れなかった。
3人の「さとこ」が出てくる。15歳の中井聡子(姫野花春)、35歳の西田沙都子(有村架純)、55歳の飯島里子(石田ひかり)。
3人いっぺんには出てこない。まずは聡子。
アレルギー性鼻炎が持病の聡子が耳鼻咽喉科でネブライザーの治療。両方の鼻の穴にチューブを突っ込んで口から蒸気を吐いているという、女子中生からしたら見られたくないシーンで映画はスタートする。そこに同級生の早瀬(小川冬晴)が副鼻腔炎の治療にやってきて、隣に座って同じくネブライザーをやる。
恥ずかしいところを見られてしまったことで、逆に聡子は屈託がなくなり、意外に話が弾む。そして、一気に恋に堕ちる。
この聡子役の姫野花春が素晴らしかった。
演技経験がほとんどなかったらしいが、そんな彼女が画面に登場するファースト・シーンでいきなり2ショットの結構な長回しである。しかし、この子は長回しに耐える役者だ。表情が良い。そして、表情の微妙な移ろいを表現することができる。しかも、その変化は微妙であるにも関わらず、妙にメリハリがある。
カメラは芦澤明子だ。全般的に長回しが多い構成になっている。
彼女の学校には寺尾という変な国語教師(吉田羊)がいる(この寺尾の台詞の一つひとつが秀逸で、かつ、吉田羊の演技が圧巻で、結構笑けるが、しかし、深い)。
課外活動で歌舞伎を見に行って感想を書くという課題のときに、聡子はほぼずっと寝ていて何も見ていなかったのでテキトーに書いて出したら、寺尾に「歌舞伎を観ないで書いた子の中で、ダントツだわ」と変な褒められ方をして、作文の練習を勧められ、ノートを渡され、課題を与えられる。
それが聡子が書くことの楽しさを覚えた最初だった。
聡子が作文を命じられて家でせっせと書いては消し、消しては書きするシーンがあるのだが、映画によってはこういう場合、ノートを渡されたシーンから、聡子が書き上げたノートを寺尾先生に提出するシーンに直結したりもするところだが、この映画はそんなことはしない。
こういうところをじっくりと描くところに意味があるのである。
聡子が握るシャーペンの上半分をカメラが舐めながら、奥に聡子の顔の大きなアップを捉える。ひとりで自分にツッコミを入れてみたりしながら、真剣な顔をしたりニヤッと笑ったりする聡子のアップがどかんと映る。
舞台は変わって、2人目の沙都子。
小さな映画配給会社の宣伝担当。韓国映画に深い造詣と思い入れがあり、映画の宣伝についても彼女なりの哲学があって、仕事態度は結構厳しい。
家族持ちの村本(オダギリジョー)と不倫6年目だったが、とうとう終焉を迎え、しかもとんでもない修羅場になる。そして、村本との破局のあと、彼女はストーリーを書き始める。
村本との会話の中で、聡子のシーンで出てきたエピソードととてもよく似た話がでてきて、ひょっとして沙都子は聡子の 20年後なのか?と思ったりもするのだが、語られたエピソードは微妙に違うし、第一さとこの漢字が違う。
偶然というにはあまりにわざとらしいこの辺の組み立ては、しかし、沖田監督ならではのいたずら心でもあり、その一方で寓意を含んでいるようにも思えてしまう。
Monday, September 21, 2026
台風対策
【9月21日 記】 台風接近のニュースで、どこかの離島に住んでいる人が家の壁や窓枠に木の板を打ちつけているのを見て、「ああ、まだそういうことをやっている人がいるのか」と思った。
と言うか、「ああ、ウチでもそんなことをやっていたなあ」と遥かに思い出したのである。
Saturday, September 19, 2026
秋冬物
【9月19日 記】 リアル店舗/ネットショップの別を問わず、ファッション/衣料品関係のお店の品揃えはすでにほぼ完全に秋冬物に入れ替わっている。昨日今日に始まったことではないので驚くようなことではないのだが、そういう事態に僕は毎年あまり馴染めない。
「このクソ暑いのに冬服のことなんか考えられるか!」あるいは「このクソ寒いのに夏服なんか見たくもない!」なんてこともあるにはあるのだが、最大の問題はそこではない。
衣替え前に提案されても、去年のことはすっかり忘れているので、次のシーズンの自分のワードローブをしっかり把握できておらず、何を買えば良いのかというイメージもまだ湧かないのである。
衣服を入れ替えてみて初めて、「あ、そうか、あれは裾が切れちゃったから去年捨てちゃったのか」とか、「そうそう、この上着に合うパンツがほしかったんだ」とかいう実感を取り戻すのである。
Wednesday, September 16, 2026
映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』
【9月16日 記】 映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』を観てきた。
監督の近藤亮太という人のことは全く知らなかった。ホラー出身、と言うか、ホラー以外の映画を撮るのは今回が初めてらしい。
今回の目当ては重岡大毅である。
NTV『知らなくていいコト』(2020年)での吉高由里子の相手役のダメ男の演技を見て驚き、僕はアイドルに疎いもんで彼のことを知らなくて、慌てて調べたらジャニーズWEST(当時)のメンバーだった。
その後も TBS 『#家族募集します』(2021 年)や NTV『それってパクリじゃないですか?』(2023年)も観ていて、これは良い役者だという思いを強めた。
2024年の主演映画『ある閉ざされた雪の山荘で』においても、彼の演技は光っていた。
いつも思うのだが、旧ジャニーズ系の人たちって、不思議に演技の筋が良い。歌やダンスの練習はともかく、芝居の稽古についてはそんなに時間をかけているとは思えないのだが。
で、これは『信長協奏曲』や『マスカレード・ホテル』、『#マンホール』などの脚本を担当した岡田道尚が、今回は「原案・脚本・プロデュース」というものものしい肩書で手がけた作品である。
タイトルから分かるように、これは生成AI が絡んだ設定の映画だ。
Monday, September 14, 2026
『推したちとどう生きるか』三宅香帆(書評)
【9月14日 記】 同じ著者の本を連続して読むというのは僕にはあまりないことなのだが、同じ時期に出版されたから仕方がない。すぐに両方いっぺんに買わなければ良いだけのことなのだが、すぐに買いたい著者なのである。
コンテンツにおける「父の不在」からコンテンツにおける「夫婦関係の描写の欠如」に着目し、そこから現代社会のありようを描いてみせた『「夫婦」不在社会』と比べると、この本は単なる分析から脱して、とても思想性に富んだものを感じさせる。
ここで書かれているのは、彼女がこれまでにも書いてきた「半身」とか「複層化」とかいうことにも通じるものであるが、おそらく彼女がネット上でいくつかの炎上(と言うか、はっきり言えば「心ない多数の人間に浴びせられた罵詈雑言」)を身を以て体験したこともあってのことだろうと思うが、この歪み始めた「推し」文化をどうやって正常化すべきかという視点が明確で、それが読み進むにつれてどんどん強くなってくるのをひしひしと感じた。
今回、著者は「推し」を分析するに当たって、江戸時代から始めている。こういう歴史的アプローチは、彼女のデビュー当時には多分あまり色濃くなかった手法で、僕はその辺りに(僭越ながら)彼女の成長を感じて嬉しくなったりもする。
そして、日本における「推し」の開始を近代日本の誕生期に絞り、歌手、野球、歌劇という3つの分野から説き起こしている。そこからの例示と解題は非常に深く、そして連綿と繋がっている。
歴史から始めて現代の描写に至ると、途中からそれは歴史ではなくなり、実体験となる。そして、僕のような、著者よりはるかに年長の読者にとっては、実は彼女よりもかなり早く、歴史的事実を自分の体験として読めるのである。
若い人が書物やネットから仕入れた歴史的事実と、年寄りが身を以て体験したものとでは、得てして食い違いが生じ、年寄りが違和感を覚えたりするものだが、この本においてはそういうところが全くなく、まさに真髄を押さえているなと感じて、ここにも共感と好感を覚えてしまった。
さて、彼女の分析をここで僕が要約しても良いのだが、終章まで読み進めばその必要はない。
この終章で彼女はまず「本書の概要をまとめて」いるのである。著者が最後にここまで丁寧な書き方をしている本はめったにない。
そこには、自分の思いをできるだけ正確に伝えたいという渇望を感じる。「どうやって正常化すべきかという視点が明確で、それが読み進むにつれてどんどん強くなってくるのをひしひしと感じた」と書いたが、それがここに来て最高潮に達するのである。
Friday, September 11, 2026
映画『ルックバック』
僕は原作の漫画は読んでいないが、映画化されたアニメは観ていて、とても良いアニメだと思った。
それを是枝裕和監督が映画化すると聞いてびっくりしたのだが、予告編を観ていると、タイトルロゴも同じだし、アニメと同じ構図のカットもいっぱい出てきて、さらに驚いた。
是枝監督もこの漫画の大ファンで、そのことを話したら「一度お会いになります?」と仲を取り持ってくれる人がいて、実際に原作者の藤本タツキに会いに行ったそうである。
是枝監督としては単に「素晴らしい作品をありがとうございました」と感謝の意を伝えに行ったつもりだったのだが、先方にしてみれば、是枝監督が来るからには実写映画化の申し入れだろうと思っていたらしく、「え? それだけ?」みたいな妙な空気になってしまい、一旦はその場を辞したが、帰りのタクシーの中で映画化を決意したのだそうだ(実はその仲立ちした人がこの映画のプロデューサーであり、彼は最初から是枝監督での映画化を考えていたようだ)。
出口夏希と蒔田彩珠の共演となると、思い出すのは同じ是枝裕和が総合演出を務めた Netflix の『舞妓さんちのまかないさん』である。
このドラマでは出口は準主演で、舞妓になりたくて青森の中学を卒業して京都に出てきたばかりの少女・すみれ役、蒔田はそのすみれを預かる屋形の女将の娘・涼子の役だった。
蒔田はすでに是枝作品の常連になっており、また、蒔田のほうが花街においては先輩格の役だったこともあって、僕は蒔田のほうが年上だろうと思っていたのだが、実は出口のほうが1歳年上だった。
かなり若い時から見ているが、この2人もすでに20代半ばになった。その2人が、小学生時代を演じた子役の後を受けて、中学生以降を演じている。
Wednesday, September 09, 2026
TBS『VIVANT』
【9月9日 記】 TBS の『VIVANT』を第1シーズンに続いて今期も観ている。面白いから。
でも、観ていて、「面白けりゃ良いってもんじゃないぞ!」って思う。
他の面白いドラマを観ていても、そんなことは全く思わない。そう、面白けりゃ良いのである。
しかし、このドラマだけは、なんか「面白けりゃ良いってもんじゃないだろう!」と思ってしまう。
そこがこのドラマの面白いところだ(いや、この「面白い」は別の意味での「面白い」である)。





Recent Comments