Wednesday, June 10, 2026

『陽の光が消えた町で』ナオミ・クリッツァー(書評)

【6月9日 記】 この辺のジャンルには詳しくないので全然知らなかったのだが、ナオミ・クリッツァーはアメリカで今一番人気のある SF作家のひとりなのだそうだ。そして、この本はヒューゴー賞をはじめとする様々な賞を獲った6作品を集めた、日本独自の短編集とのことだ。

SF と言っても、ここにある6篇においては、宇宙に行くでもなく、タイムマシンに乗るでもなく、アンドロイドが登場するわけでもなく、そういう意味ではそれほど SFっぽい作品ではない。

ただ、その設定はある意味確かに SF的であり、作品によってはファンタジーっぽくもある。

» Continue reading

| | Comments (0)

Tuesday, June 09, 2026

映画『FUJIKO』

【6月9日 記】  映画『FUJIKO』を観てきた。

僕は大抵の場合、監督で映画を選んでいるが、今回の木村太一という人は全く知らない監督だ。帰宅してパンフレットを読むと、どういういきさつだかは知らないが、12歳で単身渡英して映画制作を学んだと書いてある。

エンディング・クレジットに「MUSIC “Dear Chiyo” 作曲 常田大希」という名前を見つけて驚いたのだが、監督はこれまでミュージック・ビデオをたくさん撮って来た人で、King Gnu の作品も手がけているらしい。

さて、今回の僕の目当ては主演の片山友希である。

それほど有名な役者ではなく、これまでに主演は1作だけ。代表作としては賞を獲った『茜色に焼かれる』(2021年、石井裕也監督)が挙げられることが多いが、僕がはっきりと注目し始めたのはその少し前の『君が世界のはじまり』(2020年、ふくだももこ監督)からかな。

今回の共演者であるリリー・フランキーは彼女についてこんなことを言っている。

いい女優さんですよね。掴みどころがなくて。いい感じに空気に漂っている。普通こうなったら収まるだろうなという風にはならない。そこがいいなと思いますね。

そう、そんな感じ。とっても雰囲気のある女優だと思う。

今回の映画は監督の母親をモデルにしているらしい。

冒頭はアニメ。精子が卵子に向かって泳いで行くデザインから、最後は赤ん坊の絵になって、主人公の富士子(片山友希)が激しい雷雨の日に女の子を産むシーンへと繋がって行く。

時代設定は 1977年からの数年。中ピ連が国政選挙に立候補者を立て、人々がカセットテープ+ウォークマンで音楽を聴き始め、お風呂場にはバスボンが置いてある時代である(こういう小道具が嬉しい)。

» Continue reading

| | Comments (0)

Monday, June 08, 2026

TOHO-ONE

【6月8日 記】 「6本観たら1本無料」の TOHOシネマズのシネマイレージとポイントプログラムが TOHO-ONE に統合されて、果たしてユーザとしては、と言うより、僕としては前より得しているのか損しているのか、今まであまり気にせずに使ってきたが、突然気になって、自分の履歴をチェックしてみた。

ふむ、これは明らかに前より得である(ま、もちろん東宝系の映画館で年間2~3本しか映画を見ないような人は、恩恵に浴することはできないのかもしれないが、それは前から同じである)。

今までは冒頭に書いたように映画を6本観たら次の1本が無料になった。そして、それに加えて、映画の分数に応じて、例えば 115分の映画を観たら 115マイルもらえて、それが 1000マイル溜まると、例えばポップコーンSサイズと交換できるというようなシステムだった。

さらに飲食物やパンフレット、ノベルティなどを購入すると抽選ができたのだが、これは当たっても映画鑑賞料金の割引である場合が多かった。

どんな割引も通常はシニア料金には適用されないし、一般料金に割引を適用したものよりシニア料金のほうが安いので、僕にとっては何の意味もない。

» Continue reading

| | Comments (0)

Sunday, June 07, 2026

映画『劇場版モノノ怪 蛇神』

【6月7日 記】  映画『劇場版モノノ怪 蛇神』を観てきた。『唐傘』『火鼠』に続く、これが第3弾。劇場はほぼ満席。

しかし、それにしても女性客が多いので驚いた。8割方が若い女性である。第1作、第2作もこんなに女性が多かったのだろうか? こういうのって女性に受けるの?

さて、今回も過去2作同様、怒涛の画作りである。

透過性のある和紙、それも漉き紙をレイヤーに重ねて描いたような構成。

和の伝統的な色合いと中華のデザインに、西洋のパステル・カラーを合成したかのような色使い。

日本建築に日本の建具、しかし、あの時代の日本には決してなかったであろう様々な意匠と極彩色。

描かれる顔は西洋風だが、髪は日本髪で、着ているのはきもの。しかし、そこにもかなり現代的なアレンジを加えてある。髪も目も黒ではない。この辺りも極めてアニメ的。

そして、目まぐるしく動く構図。ぐるぐる回る。ぐらぐら揺れる。奥から手前に飛び出してくる。人が飛び上がって落ちてくる。人は動かずに背景が急展開する。頭がクラクラするぐらいの猛スピード。

三角形をモチーフに、それを組合せて長い紐状に編んだ蛇神。そこに薬売りが撒き散らす長方形の無数の護符が縦横きれいに配列して不吉なもの全てに張り付く。

» Continue reading

| | Comments (0)

Friday, June 05, 2026

折りパケ

【6月5日 記】  カルビーがかなり前から「折りパケ」という運動をやっている。

「折りパケ」とは何かと言うと、食品パッケージのプラスティックの袋をそのまま捨てるとかさばるので、折って畳んで小さくしてから捨てましょう、という運動である。

折り方を文章で説明するのも面倒なので、この辺り ↓ のページから探して読んでみてほしい。

カルビー ルビープログラム

僕もフルグラをよく食べるのでこれをやりだした。一時はそれを写真に撮って、キャンペーンに応募して、ポイントをもらうというようなこともやったが、今はもうやっていない(報酬があまりにショボいからw)。

ただ、パッケージを折るのはいつしか習慣になって、今も続けている。

» Continue reading

| | Comments (0)

Wednesday, June 03, 2026

若者にはアンケートが通用しなくなっている件

【6月3日 記】  先日とあるイベントで登壇していた調査関係の仕事をしている人が言っていた話:

Twitter分析など、ネット上に上がっている言説だけを取り上げて分析していると、それは往々にして何かにつけて書き込みをしてくる、ごく少数の、所謂 noisy minority の意見しか反映していないことが多い。

そういう方法では多数を占めている silent majority の意向は掴めないのである。

では、どうするかと言うと、そんな風に積極的・自発的に書き込む層だけではなく、無作為に抽出した、汎ゆる階層の人に対してアンケートを実施することになるわけだが、若い層に関しては最近大きな問題が持ち上がっているのだそうだ。

最近の若い人たちはとにかくコスパ/タイパ重視で、少しでも長い文章は読まなくなっている。

そのため長めの文章に対する読解力が大幅に落ちていて、設問の意味が理解できずにトンチンカンな回答をしてくる例が続発しているのだそうだ。

だから、アンケートという手法では若者に対する適切な調査ができなくなっているとのこと。

母語である日本語の読解力がそこまで落ちているとは! 仰天するしかない。

» Continue reading

| | Comments (0)

Tuesday, June 02, 2026

日本語版 Grammarly の災厄

【6月2日 記】  僕は英語の文章を書くときに Grammarly というアプリを使っている。Free AI Writing Assistance というキャッチフレーズがついており、書いた英文上の誤りを指摘して正してくれるアプリである。僕としてはかなり重宝している。

有料にすれば、単に誤りを正すだけではなく、誤ってはいないがあまり巧くない表現をもっと分かりやすくスマートな表現に直してくれるのであるが、僕はそこまでは望まない。無料版で充分である。

そのアプリが、最近日本語を対象とするベータ版を出したようなのだ。僕は別に登録したわけでも設定を加えたわけでもないのだが、急に僕が書いた日本語にも訂正を入れるようになってしまって、これが鬱陶しいのである。

このアプリが正しい表現としている範囲が極めて狭く、別に良いじゃないかと思うような表現を修正してくる。

句読点の打ち方などが典型的なのだが、それ以外でもいろいろとうるさい。

今日は「プラスティック」と書いたら「プラスチック」に訂正せよと言ってきた。より英語の発音に近い「プラスティック」は日本語として間違っていると言うのである。

» Continue reading

| | Comments (0)

Sunday, May 31, 2026

5月のお楽しみ

【5月31日 記】 今日で5月も終わりだが、今月はいろんな所に行った。こんなにあちこちに足を伸ばすことはもうあんまりないだろうから、ちょっと備忘録風に。

» Continue reading

| | Comments (0)

Thursday, May 28, 2026

『俺の恋バナを聞いてくれ』新川帆立(書評)

【5月27日 記】 前に読んだ『女の国会』が面白かったからまた読んでみる気になったのだが、新川帆立がどういう出自の作家なのかは把握していなかった。多分『女の国会』の巻末には略歴が記してあっただろうから、それを読んだはずなのだが、記憶に残っていなかった。

今回この本を読み終えて改めて巻末の略歴を読み、ウィキを引いてみたら、東大卒の元弁護士で、デビュー作の小説で第19回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞したと言う。そして、『女の国会』は山本周五郎賞の受賞作である。なんと幅広い。

この本は6作からなる短編集だが、その第5話「ハングレ」が、もちろん表題である統一テーマに沿った恋愛の話ではあるが、結構本格的なミステリ仕立てになっていて僕は驚いたのだが、なるほど、元々そういう作家だったのかと納得した(確かに『女の国会』にも謎解きはあった。僕はそこにはあまり着目していなかったが)。

おまけに、さらに調べてみると、新川は司法修習中に最高位戦日本プロ麻雀協会プロテストに首席で合格し、1年間だけプロ雀士として活動したと言うから、これまたびっくりである。麻雀小説も書いているようだから、それも読みたくなってきた。

話をこの本に戻すと、これは6人の男性の恋バナを綴った本である。それぞれの主人公は 19歳から 49歳まで。職業はコンサル、無職、院生、医師、大学生、漫画家とバラエティに富んでいるが、いずれも「ちょっと、それ、どうよ」と思わせるところのある人物である。

ただ、新川は彼らを、女性の側からの一方的な、糾弾するような視点では描いていない(と僕は感じた)。あくまで無限に考えられる「恋」のパタンの中からいくつかを提示しているだけだと思う。恋はどんなろくでもない男女でも、どんなどうしようもない状況でも生まれてきて、場合によっては当事者を成長させるのである。

» Continue reading

| | Comments (0)

Wednesday, May 27, 2026

プラスティックごみ分別回収の恐怖

【5月27日 記】 ウチのエリアはプラスティックごみの分別回収が導入されるのが遅かったのだが、導入されて初めて、今の世の中、家庭ごみの大半はプラスティックだということに気づいた。

同じプラスティック製品でも PETボトルは別回収になっているので、これを合わせると家庭ごみの、もう大部分がプラスティックになっているのだと言える。

で、何が困るかと言えば、プラスティックごみを見ると、その家の生活状況がバレバレになってしまうということだ。

何故ならプラスティックごみのほとんどがパッケージであるからだ。パッケージには商品名、メーカー名をはじめ、賞味期限やら効能やら、ひょっとすると値段まで書いてあったりするからだ。

ウチはマンションだから、マンション内のごみ置き場の大きな袋にバラバラと放り込むだけで、つまり、その大きな袋の中に複数世帯のごみが混じり合って、どれがどの世帯のごみなのかを明らかにすることは難しいのだが、一軒家なら、区の決めたルールに従って、家庭ごとにひとつの透明の袋に入れて出すことになるはずだ。

そうなると、袋の外から見ただけで、その家庭が何を買って、何を食べ、何を着て、どんな消費財を使ってどんな風に暮らしているのかがかなり見え見えになる。

前だったらそこに一般ごみが混在していたので、紙ごみや生ごみの存在が中身をある程度隠してくれていた。それが今ではほぼ丸見えではないか。

まるでマイナンバーカードみたいに情報むき出しである。

» Continue reading

| | Comments (0)

Sunday, May 24, 2026

映画『名無し』

【5月24日 記】  映画『名無し』を観てきた。

日曜日であるとは言え、そして、小さなシアターだったとは言え、佐藤二朗が脚本を書いて主演している映画がぎっしり満員になるとは少し驚きである。

僕は共同脚本と監督でクレジットされていた城定秀夫の名前につられて観に行った。これが佐藤二朗自身の監督であったら(まあ、前作『はるヲうるひと』は悪くはなかったが)ひょっとしたら観に行かなかった可能性もある。

この2人の組合せによって初めて、何か尋常でないものが生まれる気がしたのである。

右手に何かを持った瞬間にそれが人の目には見えなくなり、右手で動植物に触れた途端にそれが枯れたり死んでしまったりする ── もしもそんな男がいたら、というジャスト・ワン・アイデアで作られた映画である。

その男・山田太郎(戸籍がなかったので後付けの名前である)に扮したのが佐藤二朗で、その彼がその右手に見えない包丁や金属バットやピストルを握りしめて、次々に、無差別に人を殺しまくる。

太郎の境遇については多少同情できる面もあるにはあるが、基本的にサイコパスの類だと思って良い。社会的なメタファーを描こうとしているのは間違いないが、しかし、小難しいことを感じさせる映画ではない。娯楽作品だと言う人もいるかもしれない。

» Continue reading

| | Comments (0)

Friday, May 22, 2026

『ニュー日本文学史』三宅香帆(書評)

【5月21日 記】 日本文学史を学びたい(あるいは、学び直したい)と思ってこの本を手に取った人もいるんだろうけれど、わりと古くからの三宅香帆ファンからしたら、これは文学史の教科書ではなく、ただただ三宅香帆の解釈を楽しむ本である。

「なるほど、三宅香帆はこの作家を、この作品をそんな風に解釈して、そんな風に位置づけたのか」と、時には目から鱗を落とし、時には顔に笑みを浮かべながら読んでしまう。

そもそも、日本文学史と名乗るには、取り上げている作品があまりに少ない、と言うか、スカスカで、「この内容でこのタイトルじゃあ、詐欺だと言われたりしないだろうか?」と心配しながら、「ああ、なるほど、そういう観点で彼女はこの作家を取り上げたのか、そういう目論見でこの作品をここに入れ込んで来たのか!」と、読み進むにつれてどんどん楽しくなる。

何しろ古典文学だから、僕にとってはそれほどよく知っている作家はなくて、でも、そこそこ好きな作品もあって、その一方で全く読んだことのない作品も取り上げられており、その辺の塩梅がこれまた楽しいのである。

» Continue reading

| | Comments (0)

«Play Log File on my Walkman #165