魅惑のペンタトニック・スケール

【2007年6月初稿】 2002年1月に私なりの転調名曲選みたいなものを書いてみたのですが、その時から次はペンタトニック・スケール名曲選を編んでみたいなと思ってました。

ペンタトニック・スケールって何?という方のために書くと、ペンタ=5、スケール=音階ですから(トニックとは何かということはとりあえず措いといて)5音で構成された音階です。

誰もが知ってる普通の音階(これをイオニアン・スケールと言います)はドレミファソラシの7音からできていて、そこからファとシを除いた5音からできているのが、ペンタトニックスケールです。

ファが第4音、シが第7音であることから「ヨナ抜き音階」などと呼ばれたりもします。

ここまで読んで「何か難しい話になってきたぞ。自分は楽器もできないし、そんな音楽理論の話にはついて行けない」と思い始めた方もあるかもしれませんが、いえいえ、私が書こうとしているのはそんな難しい話じゃないんです。

このペンタトニック・スケールはとても綺麗な音階です。もしお手許に何か楽器があればドレミソラドと弾いてみてください。ね?とても特徴的な旋律でしょ?

で、5音しかないから簡便なんですよね。ギターを弾き始めたころ、とりあえずファとシを避けて(つまりペンタトニック・スケールで)適当に弾いているとまともなアドリブが弾ける、などと教えられたもんです。

そして、世の中にはメロディにこのペンタトニック・スケールを使った名曲というのがたくさんあるんですよ。大変特徴的な節回しになるので楽器ができない人でも聞けば「ああ、そういうメロディか」とピンと来るはずです。何曲か並べると特徴も掴みやすいと思います。

私自身もこのスケールの虜になって何曲か作曲したりしてみたもんですが、私の作った駄作ではなくて、日本ポップス史に残るペンタトニック・スケール名曲選をここで紹介したいと思います。

もちろん、ペンタトニック・スケールというのは全世界的なものであるし、ポップス/流行歌に特有のものでもなくて、例えば『めだかの学校』みたいな童謡に使われていたりもしますが、下に挙げたのはとりあえず第2次世界大戦以降の日本の歌謡曲/演歌/フォーク/ロック/ニュー・ミュージック/Jポップの中から私が選んだものです。

長調のものだけではなく短調のペンタトニックもあります。

全編を通じてペンタトニック・スケールだけで構成された曲もあれば、出だしをペンタトニック・スケールで始め、サビでは第4・第7音も加えて幅を広げた作品、あるいは逆に頭は7音階で始めておいてペンタトニックの特徴的なサビを持ってきたものもあります。

それから、下のリストでは、曲全体としては第4・第7音も結構使ってはいるんだけどメロディの一部に非常に巧くペンタトニック・スケールを取り込んだもの(例えば『心の旅』)も含めています。

まずは下表をご覧あれ。そして、魅惑のペンタトニック・スケールを思い浮かべて満喫していただきたいと思います。

なお、この表も他のいくつかのコーナー同様、思いつくたびにどんどん加筆して行きたいと思います。


春の海
宮城道雄/作曲、1929年
燦めく星座(灰田勝彦)
佐々木俊一/作曲、1940年
ここに幸あり(大津美子)
飯田三郎/作曲、1956年
蘇州夜曲(渡辺はま子)
服部良一/作曲、1959年
上を向いて歩こう(坂本九)
中村八大/作曲、1961年
北帰行(小林旭)
宇田博/作曲、1961年
骨まで愛して(城卓矢)
川内康範/作曲、1966年
ノー・ノー・ボーイ(ザ・スパイダース)
かまやつひろし/作曲、1966年
君こそわが命(水原弘)
猪俣公章/作曲、1967年
恋の季節(ピンキーとキラーズ)
いずみたく/作曲、1968年
グッド・ナイト・ベイビー(キング・トーンズ)
ひろまなみ/作曲、1968年
白いサンゴ礁(ズーニーブー)
村井邦彦/作曲、1969年
もう恋なのか(にしきのあきら)
浜口庫之助/作曲、1970年
X+Y=LOVE(ちあきなおみ)
鈴木淳/作曲、1970年
さらば涙と言おう(森田健作)
鈴木邦彦/作曲、1971年
さらば恋人(堺正章)
筒美京平/作曲、1971年
お世話になりました(井上順之)
筒美京平/作曲、1971年
潮風のメロディ(南沙織)
筒美京平/作曲、1971年
ともだち(南沙織)
筒美京平/作曲、1972年
純潔(南沙織)
筒美京平/作曲、1972年
芽ばえ(麻丘めぐみ)
筒美京平/作曲、1972年
私は忘れない(岡崎友紀)
筒美京平/作曲、1972年
ひとつぶの涙(シモンズ)
瀬尾一三/作曲、1972年
喝采(ちあきなおみ)
中村泰士/作曲、1972年
心の旅(チューリップ)
財津和夫/作曲、1973年
五番街のマリーへ(ペドロ&カプリシャス)
都倉俊一/作曲、1973年
グッド・バイ・マイ・ラブ(アン・ルイス)
平尾昌晃/作曲、1974年
はじめての出来事(桜田淳子)
森田公一/作曲、1974年
恋のインディアン人形(リンリン・ランラン)
筒美京平/作曲、1974年
岬めぐり(山本コータローとウィークエンド)
山本厚太郎/作曲、1974年
年下の男の子(キャンディーズ)
穂口雄右/作曲、1975年
乙女のワルツ(伊藤咲子)
三木たかし/作曲、1975年
心のこり(細川たかし)
中村泰士/作曲、1975年
となりの町のお嬢さん(吉田拓郎)
吉田拓郎/作曲、1975年
たえこMY LOVE(吉田拓郎)
吉田拓郎/作曲、1976年
セクシー・バス・ストップ(浅野ゆう子)
Jack Diamond(筒美京平の変名)/作曲、1976年
嫁に来ないか(新沼謙治)
川口真/作曲、1976年
未来(岩崎宏美)
筒美京平/作曲、1976年
乙女座宮(山口百恵)
宇崎竜童/作曲、1978年
雨に泣いてる…(柳ジョージ&レイニーウッド)
柳ジョージ/作曲、1978年
安奈(甲斐バンド)
甲斐よしひろ/作曲、1979年
ユー・メイ・ドリーム(シーナ&ザ・ロケット)
鮎川誠/作曲、1979年
風を感じて(浜田省吾)
浜田省吾/作曲、1979年
別れてそして(渡辺真知子)
渡辺真知子/作曲、1979年
ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ(鹿取洋子)
Pim Koopman/作曲、1980年
悪女(中島みゆき)
中島みゆき/作曲、1981年
ラヴ・イズ・オーヴァー(欧陽菲菲)
伊藤薫/作曲、1982年
情熱☆熱風🌙セレナーデ(近藤真彦)
筒美京平/作曲、1982年
矢切の渡し(細川たかし)
船村徹/作曲、1983年
そんなヒロシに騙されて(高田みづえ)
桑田佳祐/作曲、1983年
お久しぶりね(小柳ルミ子)
杉本眞人/作曲、1983年
君に、胸キュン(Yellow Magic Orchestra)
Yellow Magic Orchestra/作曲、1983年
渚のはいから人魚(小泉今日子)
馬飼野康二/作曲、1984年
ニュアンスしましょ(香坂みゆき)
EPO/作曲、1984年
涙の茉莉花LOVE(河合その子)
後藤次利/作曲、1985年
壊れかけのRadio(徳永英明)
徳永英明/作曲、1990年
夏祭り(JITTERIN' JINN)
破矢ジンタ/作曲、1990年
春よ、来い(松任谷由実)
松任谷由実/作曲、1994年
フラワー(Kinki Kids)
HΛL、音妃/作曲、1999年
桜坂(福山雅治)
福山雅治/作曲、2000年
CRY NO MORE(中島美嘉)
Lensei/作曲、2006年
Flavor Of Life(宇多田ヒカル)
宇多田ヒカル/作曲、2007年
Baby Don't Cry(安室奈美恵)
Nao'ymt/作曲、2007年
若い広場(桑田佳祐)
桑田佳祐/作曲、2017年

見てくださいよ、この作曲者の顔ぶれ。どうです? 日本のポップス界を代表する作曲家たちが皆一度はペンタトニック・スケールで名曲を書いているということなんですよ。

それから、こうやって並べて検討すると、『セクシー・バス・ストップ』と『嫁に来ないか』が妙に似通ってたりして面白いでしょ?