Wednesday, November 06, 2024

歌舞伎の道

【11月5日 記】  会社を辞めてから時々夫婦で歌舞伎を観に行っている。

初めて観に行ったときにもここに記事を書いたが、その一回では終わらなかった。

もっと難しいものではないかと思っていたのだが、決してそんなことはなく、いつ何を観に行っても気軽に楽しめる。

作品ができた時代によって、台詞が完全に分かるものもあればほとんど分からないものもある。でも、全体としての面白さはそういうことには左右されないのである。

ま、もっとも、初心者なのでずっと耳寄屋のイヤホンガイドに頼っての鑑賞ではあるが。

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Monday, October 02, 2023

記憶力

【10月2日 記】  最近テレビなどを観ていて思うのは、ミュージシャンにしても舞台俳優にしても、よくそれだけたくさんのものを憶えられるものだ、ということ。

ミュージシャンはライブをやるとなると 10曲も 20曲も歌うわけである。中には譜面台に歌詞を書いたものを置いている人もいるが、全く見ずに歌う人もいる。少なくとも最初から最後まで譜面台から目をそらさない人はいないとだろう。よくそれだけたくさんの歌詞が頭に入るものだと思う。

僕はフォークやニュー・ミュージックが台頭してきた時にその洗礼を受けて育った世代で、一時はシンガー・ソングライターになりたくて、曲もたくさん作った。だが、その中から 10曲選んで空で歌えと言われてもとても無理である。

人によってはそれだけではない。ギターを弾きながら歌ったりもしているのではないか。もちろんこれも、譜面台に楽譜を置いている人もいるが、何もなしで弾いている人もたくさんいる。

歌詞に加えてコード進行までよく憶えられるものだと思う。いや、コードをかき鳴らしているとは限らない。リフやフレーズを弾いていることもある。すごいと思う。

ま、それは「手が憶えている」という状態なのだろうということは、多少楽器をやってきた僕にも分かる。だが、僕の手はそんなに憶えていない。出だしは憶えていてしばらく快調に弾き続けたとしても、どっかで引っかかるともうダメである。何小節か戻って頭から弾き直さないと元のレールには乗れない気がする。

そういうことをさーっと造作もなく、いや、ひょっとするとものすごく練習したのかもしれないけれど、あんな風に歌い、あんな風に弾くのは、僕はとても真似できない。

僕の場合はシンガーやプレイヤー志望ではなくソングライター志望だったので、その道を極めようとはしなかったけれど、本気でシンガーになろうとしたらすぐに挫折していただろうと思う。

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Sunday, August 20, 2023

半券

【8月20日 記】 僕にはデータを紙で保存したいという思いはない。ただ、単なる記録ではなくコレクションとして有形保存したいと思うものはある。

なんのことを言っているかと言うと、たとえば昨日行った Billboard Live 東京でのライブ。

最近のイベントは専らネットで予約することになる。そうすると返信メールが来て、そこに載っているリンクをクリック/タップして専用ページに進み、予約番号やパスワードを入れて QRコードを表示するとそれが入場券代わりになるようなケースが増えてきた。

その結果何が起きるかと言うと、ライブが終わったときに手許に何も残らないのである。ネットで予約しても、例えばコンビニなどで紙の発券をするようなケースはそのチケットが残る。しかし、紙の発券ではなく QRコード表示となると何も残らないのである。

僕は演劇や音楽ライブ、美術館や博物館、展示会などのイベントに行ったら、その「半券」をスクラップブックに貼っているのだが、貼るものがないのだ。

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Saturday, August 19, 2023

かしぶち哲郎『リラのホテル』トリビュートライブ

【8月19日 記】 「かしぶち哲郎没後10年 『リラのホテル』リリース40周年記念 『リラのホテル』トリビュートライブ」に行ってきた。於:Billboard Live東京。1_20230819224801

1983年に発売された『リラのホテル』を僕が初めて聴いたときに思ったのは、「なんだ、これ、ロックじゃないじゃないか」ということだった。確かにかしぶちのドラムスやシンドラが8ビートを刻んでいる曲もあったが、もっとまったりしたリズムの曲もたくさんあり、全体的にまるでヨーロッパの映画音楽のテーストだった。

しかし、「ロックじゃない!」と思ったのはまさに若気の至りであって、別にロックでなければならないことはないのである。ロックではなくても、今から思えばこれほどまでにかしぶち哲郎的なアルバムは空前だったし、今聴き直しても唯一無二の感動がある。

僕が初めて聴いたかしぶち作品はまだはちみつぱい時代の『釣り糸』だった。このことはあちこちに書いたが、僕がこの不思議な曲を聴いて思ったのは、「こいつはきっと音楽の基礎が解っていない奴なんだろう」ということだった(僕らの中高のバンドでは音楽性はなくても運動神経と体力があってしっかりリズムを刻める奴がドラムスを担当していたのをついつい想起してしまったのである)。

しかし、その偏見は MOONRIDERS の『砂丘』を聴いて粉々に打ち砕かれた。この人はすごい作曲家だと僕が認識した瞬間である。それから何年彼の曲を聴いてきただろう。ソロ・アルバムはこの『リラのホテル』しか持っていないのだが、メンバー全員が作詞作曲をする MOONRIDERS にあって、とりわけ彼の作品群は異彩を放っていたと思う。

特にこの『リラのホテル』については、その収録曲を一つひとつ吟味すると、彼の代表曲とされる『砂丘』や『スカーレットの誓い』や『二十世紀鋼鉄の男』などと完全に繋がっている感じがある。

♪ 僕は窓辺でからっぽの夢を見てる
(『屋根裏の二匹のねずみ』 詞曲:橿渕哲郎)

なんてフレーズは明らかに

♪ 僕はいつも砂を握りしめて倒れている
(『砂丘』 詞曲:橿渕哲郎)

と詞で繋がり、曲想は『二十世紀鋼鉄の男』と紐づいている。

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Thursday, January 05, 2023

人生初歌舞伎-追記

【1月5日 追記】 昨日生まれて初めて歌舞伎を見に歌舞伎座に行って、気づいたことをいくつか。

ひとつめは、初めて観る人に対して親切だな、ということ。

ホームページの記事でも歌舞伎座内のアナウンスや掲示でもいろいろなことを教えてくれています。

普段の服装で見に来て構わないとか、座席で食事をしても良いが黙って食べろとか(笑)

確かに僕も最初は、せめてブレザーぐらいは着て行かなければならないかな、と考えたくらいです(結局はセーター着て行きましたが)。冷静に考えたら、晴れ着や正装でないと見せてくれないなんてはずはないのですが、歌舞伎というと何となくそんなイメージがありました。

それから席で食事して良いのかどうか、持ち込みはアリなのかどうか、今回の公演がちょうどお昼時にかかる時間帯だったので、これはかなり心配しました。でも、ちゃんと事前に教えてくれました。

みんなフツーに食べてますね。ま、どうやら幕間に食べるのが礼儀で、公演の最中に弁当食ってる人はいませんでしたが(そこまでは教えてくれませんでしたw)。

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Wednesday, January 04, 2023

人生初歌舞伎

【1月4日 記】 歌舞伎座で『壽新春大歌舞伎』第一部を観てきました。人生初歌舞伎鑑賞です。Photo_20230104170501

僕は父親が貿易関係の零細企業を経営していて、2度も倒産して自分の学習机にも差し押さえの紙を貼られるなど、そこそこ貧しい環境で育ってきたので、ゴルフとオペラと歌舞伎は自分には一生縁がないだろうと思っていました。少年時代の僕にはそういうものは大金持ちの象徴に見えたのです。

ところがゴルフは会社に入って営業セクションに配属されたら無理やり始めさせられました(日本人が猫も杓子もゴルフをやり出した時代でしたね)。ちっとも楽しくなかったけど。

あとはオペラと歌舞伎ですが、ま、日本人に生まれたら一度歌舞伎に親しんでみたいという気持ちは中年に差し掛かったころからずっとありました。妻に訊いてみたら彼女もほとんど観たことがないと言うので、僕が会社を辞めて暇になったこともあり、それじゃ行こうということになった次第です。

で、歌舞伎に詳しい元部下の女性に懇切丁寧な教えを請うた上でこの公演を選びました。演目は「卯春歌舞伎草紙」と「弁天娘女男白浪」。

前者は歌舞伎らしい華やかなステージが見られそうだし、後者については、白浪五人男であれば 1980年代半ばに下北沢のスズナリに足繁く通った劇団鳥獣戯画の“歌舞伎ミュージカル”で何度か見ていて、ある程度の設定は知っているのでいいかなと思って。

一応ホームページに載っていたあらすじを読んで軽く予習をした上で、イヤホンガイドも予約しました。

さらにたまたま前々日にテレビをつけたら NHK Eテレで、この歌舞伎座公演を含む新春歌舞伎の紹介番組が放送されていて、しばし見入ってしまいました。

当然上記2つの演目もダイジェスト的に紹介されたのですが、それよりも同じ公演の第三部の『十六夜清心』が生中継されて、貞女から悪女に豹変する七之助の見事な演技に完全に魅了され、なるほど歌舞伎の“芸”とはこういうものか!と、ほんの一部ではありますが少しその魅力が解ったような気になりました。

事前にこの番組を見られたのは大変良かったと思います。見終わって暫くは夫婦揃って七五調で喋っていましたが(笑)

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Thursday, May 05, 2022

浪花節シェイクスピア『富美男と夕莉子』

【5月5日 記】 浪花節シェイクスピア『富美男と夕莉子』を観てきた。紀伊國屋ホール。Img_1164

タイトルから分かるように(分からんか?)『ロミオとジュリエット』のパロディ。場所が日本に、時代が昭和32年に変えられて、富美男が元・関西ジャニーズJr.の浜中文一、夕莉子が桜井日奈子。全編大阪弁のシェイクスピアである。

モンタギュー家は紋田木家、キャピュレット家は九羽平家という2つのヤクザの家に変えられている。

女性の一人客がとても多くて、最近の女の子たちはひとりで芝居を観に行くのか!我々の若い頃にはあまりそういう子はいなかったが、と思ったが、彼女たちはどうやら浜中のファンらしい。彼ももう34歳である。

対する桜井日奈子は大東建託の CM で名が売れ始めた頃には「岡山の奇跡」と言われ、僕もその当時から目をつけていたのだが、最近は少し露出が減っているような気もする。彼女は今25歳。

さて、この芝居、企画としては非常に面白いのだが、一番面白かったのはその題名と言って良い。中身はちょっと単調。何と言っても最初から最後まで役者が大声を張り上げすぎ。これは役者じゃなくて演出の責任かなと思う。

作・演出は惑星ピスタチオ出身の末満健一。劇団が解散した後は特定のメンバーを組まずに、公演ごとに役者を募ってプロデュースしているらしい。

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Saturday, May 09, 2020

YouTube 『12人の優しい日本人を読む会』

【5月9日 記】 YouTube で『12人の優しい日本人を読む会』を観た。そもそもは生配信されたものだが、5月一杯はアーカイブされている。

これは、言うまでもなく、三谷幸喜・作、東京サンシャインボーイズの舞台であり、映画化もされたあの『12人の優しい日本人』を、コロナ禍のこのご時世に合わせて、zoom を使ってリモートで演じた、と言うか、読み合わせみたいなものである。

僕は舞台は観ていないが、中原俊監督の映画版は結婚した年に妻と2人で観た。めちゃくちゃ面白かった。「実は弁護士なんだ」と名乗る男に豊川悦司が扮していたのをよく憶えている。相島一之という名前はこの映画で憶えた。

この YouTube版では、4回の舞台と映画版にゆかりの出演者が、その多くはかつて演じた役柄で集まっている。──甲本雅裕、相島一之、小林隆、阿南健治、近藤芳正、梶原善、西村まさ彦、宮地雅子、野仲イサオ、小原雅人。多くはサンシャインボーイズの(元)劇団員である。

そして、今回はそこに吉田羊と妻鹿ありかが加わっている。映画と共通のキャストは相島と梶原。映画ではピザ屋の役だった近藤が今回は舞台でも演じた陪審員6号の役である。ほかに原作者の三谷幸喜も登場する(今回の演出は他の人だ)。

当たり前だがみんな年を取った。当時は新進気鋭の、どちらかと言えばアングラ系の役者だったのが、今はみんなテレビや映画でよく見る味のある脇役になった。

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Sunday, February 09, 2020

SONGS & FRIENDS 佐野元春 Café Bohemia

【2月8日 記】 新日本製薬 presents SONGS & FRIENDS の第3弾、佐野元春 Café Bohemia に行ってきた。

武部聡志のプロデュースによる、往年の名盤をもう少し下の世代のミュージシャンに引き継いでもらって後世に伝えて行こうとする企画である。

第1弾が荒井由実の『ひこうき雲』、第2弾が小坂忠の『HORO』と来て、第3弾が佐野元春の『Café Bohemia』とは、少し意表を突かれた感はあるが、しかし、このアルバムがとんでもない名盤であることは間違いがない。

佐野元春は、デビュー間もない頃こそ、ブルース・スプリングスティーンの亜流みたいな捉え方をする人もいたが、その音楽的指向と冒険心の幅は広く、新しくアルバムを出すごとに、スカやレゲエなどの新しいリズムを取り入れ、誰よりも早く(ではなかったかもしれないが、少なくとも誰よりも効果的に)ラップやヒップホップの要素を取り入れたりしていた。

このアルバムは、言わばそういう“1周目”が終わって“2周目”に入ったような感じの、第1円熟期とでも言うべきタイミングに発表されたものだ。ここでは昔と比べてジャズっぽいアレンジが多い。何しろ、ドゥワップからヒップホップまでやる人なのだ。懐は深い。

「完璧」という形容をしたくなる素晴らしいアレンジ。パーカッションからブラス・セクションまでの大編成で分厚い音を作り上げ、フィルインのひとつひとつまで見事に有機的に機能していて、多彩なリズムを織り込んで変化を連続的に生み出し、カッコいいハーモニーが僕らをあの夜の向こうに突き抜けさせてくれる。

──都市の詩人とも言うべき彼のことばのキレ。

間違いなく彼は、僕の人生がしんどかった時、危うかった時に、僕を救ってくれた人のひとりである。

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Thursday, January 09, 2020

チーズtheater プロデュース公演『鈴虫のこえ、宵のホタル』

【1月9日 記】 久しぶりに芝居を観た。

『鈴虫のこえ、宵のホタル』。劇団チーズtheater プロデュース公演(下北沢OFF・OFFシアター)。

──つい先日までは聞いたこともなかった劇団の、知らない劇作家(花田朋子)による知らない演目である。

ただ、なんか面白そうだという勘が働いた。そう、こういうのはたいがい勘であり、一瞬のひらめきである。

思えば1970年代の終わりに(辰巳琢郎が入る前の)劇団そとばこまちに夢中になったのも、1980年代の半ばに劇団鳥獣戯画の虜になったのもそうだった。全部自分の勘で見つけてきたのだ。

それで今回のきっかけは何だったかと言えば、twitter だった。今回の出演者の一人である辻凪子さんにフォローされたのだ。

彼女が何を思って僕をフォローしてくれたのかは分からないが、それをきっかけに彼女の粒を読むと、これがかなり面白い。

関西人らしいサービス精神旺盛なイチビリぶりで笑いを誘いながら、演劇に対する真摯な思いも読み取れる。それで僕もフォローさせてもらった。

そしたら、この芝居の告知がやってきた。上述の通り知らない芝居である。でも OMS戯曲賞の佳作を獲ったと言うからには面白いはずだ。

ちなみに、OMS と聞いてすぐに「扇町ミュージアムスクエア」という固有名詞が出てくるのはある程度年配の大阪人の証である。

閑話休題。

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