森の子ヤギ
【2月26日特記】 子供の時に何度か聴いて、だんだん記憶が薄れてきているのにも拘らず、いつまでも気になって忘れられない歌があった。
それはウチにあった童謡のレコードだった。
親父が新し物好きだったので、僕の家にステレオが来たのは他の家庭よりいくらか早かったはずだ。そのステレオを買った時におまけについていたのか、あるいは母が子供たちの情操教育のために買い求めたのか、とにかくウチには何枚かセットになった童謡のレコードがあったのである。それはその中の1曲だった。
若い人はレコード自体を知らないのだろうが、一口にレコードと言っても、それはLPになる前のSP(78回転)だった。盤の素材は何だったんだろう? まだ合成樹脂にはなっていなくて、下手に落としたりするとパリンと割れてしまうようなレコードだった。
それは「めぇ」で始まる歌だった。そう、「めぇ」──山羊の鳴き声の「めぇ」である。僕の記憶ではなんとも悲しげな「めぇ」なのであった。
「めぇ」の後に「森の子ヤギ」という歌詞が続いていた。そこから先は歌詞もあやふやになり、もう少し先まで行ったところでメロディまであやふやになってしまうのだが、ともかく何かが悲しくて子ヤギが泣くという歌だった。
忘れてしまったがためになおさら、何が悲しくて子ヤギは泣いていたのか、気になって気になって仕方がなかったのである。
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