Saturday, February 17, 2024

映画『身代わり忠臣蔵』

【2月17日 記】 映画『身代わり忠臣蔵』を観てきた。Photo_20240217162701

僕は本格時代劇はほとんど観ないが、こういう時代劇だったら観る。

こういう時代劇とは言え、しかし、東映である。オープニングは岩に波しぶきに三角のロゴである。本格的なセットとロケで撮られた立派な時代劇である。

とは言いながら、僕としては単なる時代劇コメディだと思って見に行ったのだが、いやいや、これが却々どうして良くできていた。

監督は河合勇人。今まで何本か観た作品もあるが、僕はその名前をとりたてて意識したことがない。そして、原作者であり、脚本も担当したのが土橋章宏である。

吉良上野介と、その実弟であり上野介の身代わりを務めることになる孝証(たかよし)の二役を演じたムロツヨシは、いつものおちゃらけた感じはところどころ抑えめで、シリアスな演技もしっかりこなしていて、好感が持てた。

物語が実に良くできていて、みんなが知っている忠臣蔵を自由な空想力と現代的な感覚で見事にアレンジし、悲哀も無常観もカタルシスもしっかりとある、現代社会に通じるドラマになっていた。

監督はムロツヨシについてこう言っている:

もちろんアドリブもありましたが、基本は台本どおりに演じてくれました。それでも動きや言い回しなど、ムロさんにしか出来ない独特なものばかりでしたね。

脚本の土橋はこう言っている:

ムロさんが決まった後、ムロさんならあれもいける、これもいけると書きましたが、完成した作品を観たら、意図したものを軽く超えていて。“おいっ!おいっ!”と言ううなり声だけで笑えるし、いろんなセリフ回しが面白くなっているんです。
(以上、いずれもパンフレットから引用)

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Saturday, February 10, 2024

映画『夜明けのすべて』

【2月9日 記】 映画『夜明けのすべて』を観てきた。三宅唱監督。とても良い映画だった。Photo_20240210131201

今回は三宅監督だけではなく、瀬尾まいこの原作であることも観ようと思った理由のひとつなのに、それをすっかり忘れてしまっており、エンドロールを観ながら、

しかし、こんなに何も起こらない、何も解決しない話を映画に撮るのは勇気が要っただろうな。でも、そんな話をきっちりとこんな良い映画に仕上げるのはやっぱり監督の力量なんだろうか。

などと思っていたら「原作 瀬尾まいこ」のスーパーが出てきて、

そうか、これは瀬尾まいこだったのだ! 如何にも瀬尾まいこらしい、瀬尾まいこにしか書けない世界だった!

とため息をついた。

PMS(月経前症候群)のイライラと薬の副作用でせっかく入った会社を辞めざるを得なかった「藤沢さん」(上白石萌音)と、突然のパニック障害で電車にも乗れなくなり、こちらも会社を辞めるしかなかった「山添くん」(松村北斗)が、子供向けの科学学習用品を作っている栗田科学という会社の社員同士として出会い、最初はぎくしゃくしながらも、ほどなくしてお互いの事情を知り、やがてそれとなく助け合えるようになって行く話である。

上にも書いたように、ほとんど何も起こらない映画である。そして、2人の持病については何も解決しない。映画が解決を提示しないことを不満に思う観客もひょっとしたらいるのかもしれないが、僕は嘘っぽい解決を見せてしまう映画のほうがひどいと思う。

人はそれぞれに解決しない問題をいろいろ抱えたまま生きて行くしかないのである。

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Saturday, February 03, 2024

映画『熱のあとに』

【2月3日 記】 映画『熱のあとに』を観てきた。全くノー・マークの映画だったのだが、監督の山本英は東京藝大大学院で諏訪敦彦や黒沢清の教えを受けた人と知って、興味を持った。Photo_20240203192201

しかし、これは却々しんどい映画だった。

冒頭、ビルの外階段を駆け下りてくる女性の足許のアップ。主人公の沙苗(橋本愛)が、自分が愛していたホスト・望月隼人(水上恒司)を刺したという設定は映画.COM で読んで知っていたので、上階で彼を刺して駆け下りてきたのかと思ったら、彼女が降り切った地下(?)に金髪の男が血まみれでうつ伏せに倒れていた。

この辺の繋がりが、映画を見終わった後の今でもよく分からない。ただ、沙苗の殺伐とした、荒んだ感じがとても印象的だった。

6年後に沙苗は小泉健太(仲野太賀)とお見合いをする。健太は沙苗に「なんでそんな死んだ目をしてんの?」と問い、でっかいエビの甲羅を割ってガツガツ食べる。そのがさつな感じがこれまた印象的である。

沙苗の母(坂井真紀)は娘を誰でも良いから誰かとくっつけようとしていて、健太が鈴木と偽って身代わりで来ていることを知りながら、「娘をよろしくお願いします」と言って帰って行く。

銀行員の鈴木のはずが実は林業従事者の健太が、林業の会社の社名入りの車で「近くの木を見に行こう」と沙苗を誘う。沙苗は自分が人を刺して出所して間がないことを明かし、「私たち、気が合いませんね」などと話す。

しかし、次のシーンは「結婚しました」ハガキ用の写真撮影をしている2人である。ここでは沙苗の無邪気ににこやかな、健太を置いてけぼりにするような笑みが印象的。

次のシーンは2人の新居となる元ペンションへの引っ越しシーン。そして、健太が仕事で木を伐るシーン、新宿のメンタル・クリニックに沙苗がカウンセリングを受けに行くシーン…。こんな風に冒頭はシーンを飛ばしながらポンポンと進んで行く。

ただ、そのあとどんどん重苦しくなる。特に近所に小さい息子と住んでいる足立(木竜麻生)という女性が現れてから。

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Wednesday, January 31, 2024

三宅香帆の記憶力

【1月31日 記】 最近僕は三宅香帆のことばかり書いているが、また彼女の記事を読んで感心してしまった。

先日読んだのは note で『ゴールデンカムイ』(原作漫画と実写映画)を夏目漱石の『こころ』と対比して、いずれも「生き残った者の罪悪感を描いた物語」であると総括した記事(有料)である。

この読解力、分析力はすごいと思う。

その読み込む力をすごいと思うのも確かだが、しかし、僕にはできないなと思う一番の理由は、度々書いているように、僕は読んだもの、観たものをいつまでもはっきりと憶えていないということだ。

『ゴールデンカムイ』はさすがに映画を見た直後だからまだいろんなことを思い出せるが、例えば『こころ』となると(僕は少なくとも2回読んでいるはずだが)非常に心許ない。

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Monday, January 29, 2024

『ブギウギ』の吉柳咲良を待つ

【1月29日 記】 去年の 12月に NHK BS4K で放送した『アイドル誕生 輝け昭和歌謡』を観て、山口百恵役で出ていた吉柳咲良がとても良かったので名前を憶えておこうと書いた。

そうしたら、暫くして今度は NHK の朝の連続テレビ小説『ブギウギ』に出演が決まったという発表があった。

NHK の朝の連ドラに脇役で出演して注目され、そこから大きな飛躍を遂げた役者は多い。彼女もそんな風になれれば良いなと、僕は大きな期待を抱いている。

──みたいなことを X(twitter)で呟いたら、早速本人が「いいね」してくれた。

『ブギウギ』には実在の歌手や作曲家らをモデルにした登場人物が多数出てくるが、『アイドル誕生』での山口百恵とは違って、今回の彼女が演じるのは架空の歌手である。連続して歌手役での起用というのは、やはり彼女が『ピーターパン』を出発点として多くのミュージカルに出演してきた実績を買うものなのだろう。

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Saturday, January 27, 2024

映画『コット、はじまりの夏』

【1月27日 記】   映画『コット、はじまりの夏』を観てきた。大変良い映画だった。世界の映画賞で 60 を超えるノミネートを受け、42 の賞を獲ったというのも頷ける。

まず驚いたのは画額が4:3であったこと。アイルランドではこれが標準なんだろうか?

それはともかく、冒頭は少し分かりにくいのだが、アイルランドの片田舎に暮らす9歳の少女コット(キャサリン・クリンチ)は、母のお産が終わるまで母方の親戚であるアイリン(キャリー・クロウリー)とショーン(アンドリュー・ベネット)のキンセラ夫妻に預けられて、1981年の夏休み一杯をそこで過ごすことになる。

両親がコットを預けることにしたのは経済的な理由である。それが「口減らし」に他ならないことは、父親のダン(マイケル・パトリック)の台詞の中にときどきあからさまに現れている。

だからと言って、たくさんいる娘たちのうちの末っ子だけ預けてどうする?と思うのだが、逆に言うと、それくらいカツカツの暮らしを送っているということなのかもしれない。後に出てくるが、ダンは過去に博打に負けて牛を手放したりしているのである。

キンセラ夫妻には子供はなく、2人で忙しく牧場を切り盛りしている上に、何かと言うと近所同士のつきあいや助け合いに駆り出される。

アイリンはとても優しい女性だ。コットをお風呂で洗ってやり、「おさがり」の服を着せ、髪を梳かし、水汲みや料理の仕方を教える。

ショーンはぶっきらぼうな男だが、決してダンのようなろくでなしではない。あたかも置き忘れたみたいにしてコットにクッキーをやり、新しい服を買うために街に連れて行ってやり、やがては人で楽しそうに牧場の作業をやるようになる。

コットの足が長いと褒め、だったら足が速いだろうと言い、ドライブウェイの入り口にある郵便受けまでコットに郵便物を走って取りに行かせる。

月夜の浜辺で優しい喩え話を聞かせるシーンはとても美しい。「何も言わなくていい。沈黙は悪くない」という台詞が深く胸に染み込む。

そう、この映画の英題は The Quiet Girl である。

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Tuesday, January 23, 2024

Netflix & Amazon Prime 鑑賞記録

【1月23日 記】他人に見せるものでも何でもなくて、 完全に僕個人の備忘録でしかないのですが、『ザ・クラウン』を見終えたので一応更新しておきます。

それにしても、『ザ・クラウン』はすごかったです。全60話です。これは圧倒的な労作としか言いようがありません。

毎回1時間前後なので、NHK の大河を凌ぐ長さです。エリザベス女王を演じた女優は4代4名。広大なロケ、膨大なセット。何よりも脚本の出来が秀逸。

最終回で言うと、例えば、女王がリクエストしたバグパイプの演奏が始まると、椅子の拭き掃除をしていた宮廷の掃除係の若い女性が歌い出すところなど、ストーリーの進行上は全く必要のないシーンなのですが、こういうのがジーンと染みてきます。

Netflix では『クイーンズ・ギャンビット』と並ぶ感動の巨編だと思います。

Amazon Prime Video のほうは、最近そそられる作品がなくて、ちょっとご無沙汰しています。

 

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Friday, January 19, 2024

映画『ゴールデンカムイ』

【1月19日 記】 映画『ゴールデンカムイ』を IMAXレーザーで観てきた。

例によって僕は原作漫画を知らないし、監督も元々はミュージック・ビデオを撮っていた僕の知らない人(久保茂昭)だったが、これは面白そうだと思った。

ちなみに英会話学校の先生(カナダ人)に明日この映画を観ると言ったら、目を輝かせて「え、ゴールデンカムイ!? あれは面白いよ。君は読んだのか? あれは日露戦争の頃の北海道を舞台とした話で、主人公のひとりは日本の青年で、もうひとりは、あの、何て言ったかな、北海道原住民の、あ、そうだアイヌだ、アイヌの娘で、歴史上の実在の人物も出てくるんだ。僕はあの漫画が大好きで全巻読んだ。次回是非感想を聞かせてくれ」と大はしゃぎだった。

で、その日露戦争の二〇三高地の生き残りの「不死身の杉元」(山﨑賢人)とアイヌの少女アシリパ(山田杏奈)が手を組んで、アイヌ民族が倭人に奪われた巨額の金塊を探す話。

その金塊の隠し場所の謎が実に手の込んだ細工になっていて、アイヌから全金塊を奪った男が、網走監獄に収監されている時に、24人の死刑囚に暗号を記した全身入れ墨を施した上で彼らを脱獄させたと言う。24人全員の入れ墨をひとつにしない限り謎は解けない。

その財宝を巡って杉元たちと、鶴見篤四郎(玉木宏)率いる大日本帝国陸軍第七師団と、実は生きていた新選組副長・土方歳三(舘ひろし)が三つ巴の争いをするというもの。

山﨑賢人は『キングダム』に続く長編大作シリーズの主演である。

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Monday, January 15, 2024

映画『ある閉ざされた雪の山荘で』

【1月15日 記】   映画『ある閉ざされた雪の山荘で』を観てきた。

東野圭吾という作家は僕が2、3作読んでげっそりしてそれ以降全く読んでいない作家だが、しかし、この作家の原作がドラマ化されるとどれもこれも結構良いのである(多分脚本家にしてみたら、いいとこ取りで換骨奪胎しやすいのだろうと思う)。

しかも、今回の映画は僕が敬愛してやまない飯塚健監督の作品だ。

重岡大毅、間宮祥太朗、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵という8人の若手(ざっくり言ってアラサー、堀田だけ少し若い)俳優が出演している(他には誰も出てこない)のだが、その8人の顔も名前もちゃんと分かっているというのは、僕のような年寄には珍しいことだ。

その中で僕が特に高く評価しているのは、重岡、岡山、西野、戸塚の4人である。

ものすごく複雑な設定で、とある海辺の別荘で劇団水滸の最終オーディションが合宿形式で行われる。ここまで勝ち残ってきたのは、劇団トップ俳優の本多(間宮)、面倒見が良いリーダー的な雨宮(戸塚)、こじらせ系の田所(岡山)、勝ち気な温子(堀田)、温子といつも対立している貴子(中条)、世間知らずのお嬢様女優・由梨江(西野)と、唯一劇団員ではない久我(重岡)の7人で、トップ女優の雅美(森川)は3次選考で落ちているので、この場にはいない。

ここで演出家が指示したのは、外部との連絡が一切遮断された大雪の山荘という設定。そこで、事件が起きる。その謎を解くのがこの7人に課された課題だが、実際に1人、2人と殺されて消えてしまう。ただし、死体は見つからない。

そんな中で、7人がそれぞれ如何にもその人物らしい反応を示し、疑心暗鬼や対立、混乱もある中で、主に久我が謎を解いていくような展開だ。

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Friday, January 12, 2024

映画『カラオケ行こ!』

【1月12日 記】  映画『カラオケ行こ!』を観てきた。

近年、今泉力哉監督+冨永昌敬監督(『あの頃。』、今泉監督・冨永脚本)や今泉力哉監督+城定秀夫監督(『愛なのに』と『猫は逃げた』。監督と脚本を交代して担当)、是枝裕和監督+坂元裕二脚本(『怪物』)、山下敦弘監督+宮藤官九郎脚本(『1秒先の彼』)など面白いコラボが多いが、恐らくこの組合せが一番期待できるなと思ったのが今回の『カラオケ行こ!』の山下敦弘監督+野木亜紀子脚本だった(しかし、僕は知らなかったのだが、この2人はすでにテレビの連続ドラマで一度組んでいたらしい)。

原作は和山やまの漫画。この人の漫画は読んだことはないが、この人の原作がテレビドラマ化された『夢中さ、きみに。』は毎週見ていた。なるほど、かなりユニークな発想で描く人だ。

今回は組長主催のカラオケ大会でなんとしても最下位を避けたいヤクザ・成田狂児(綾野剛)と、突然成田に歌唱指導を請われた中学のコーラス部部長・岡聡実(齋藤潤)の話。舞台は大阪である。

設定としては大変面白い。しかし、映画が始まってみるとあんまり笑えない。

これは非関西出身者である綾野剛、齋藤潤、芳根京子、坂井真紀らの大阪弁が悉く気持ち悪いからではないかという気がした。単にイントネーションの問題ではないと思う。メリハリのつけ方や間の取り方が根本的に違うのである。だから、関西人としては今イチ乗り切れない。

それが証拠に恐らく関西人中心で揃えたと思われる聡実の同級生たちの会話や、狂児の両親を演じた加藤雅也とヒコロヒーのシーンを観ていると何度か吹き出してしまった。

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