『みかづき』森絵都(書評)
【12月21日 記】 今年の9月に『風に舞いあがるビニールシート』で初めて森絵都を読んで、面白かったし巧い作家だと思ったので、2冊めに選んだのがこの本だ。
割合新しいもので、短編集ではなく、かつ Kindle化されていることを条件に適当に選んだので、迂闊にも中身についてはあまり知らなかった。
読み始めて驚いた、と言うか、読み進むに従ってさらに驚いたのだが、この小説はどこまでも教育を描き、教育論を語っている。この作家はこんなにも教育に興味のある人だったのか?という素直な驚き。『風に舞いあがるビニールシート』からは想像できなかった。
そして、さらに読み進むうちに気になったのは、この作家は一体今何歳だっけ?ということ。物語は戦後それほど時間が経っていない頃から家族4代に亘って書き綴られている。彼女が実際に生きて経験した時代はどこからなのだろう?
調べてみたら、1968年生まれの 52歳。つまり、この言わばサーガの最初の部分は、彼女の記憶によらず、いろんなことを調べて取材して書かれたものなのである。
最後まで読んで参考文献リストを見るにつけ、この作家がこの小説を書くに際して、どれだけの文献に当たり、どれだけの人と会って話したのかが想像がついた。
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