映画『見える子ちゃん』
【6月9日 記】 映画『見える子ちゃん』を観てきた。僕が勝手に「中村器用監督」と呼んでいる中村義洋監督。これまで映画館で 17本の作品を観てきた大好きな監督なのだが、劇場用映画を観るのはなんと5年半ぶりである。
1999年からは『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズを中心としてホラーの作品がとても多くなっていたが、僕はこの人がホラーに特化してしまうのはものすごく勿体ないと思っている。
この映画を見れば、この監督の物語構成力がどれだけ卓越しているかがよく分かると思う。
原作漫画はあるものの、原作者の信頼も得て、中村監督オリジナルの人物や展開も加えて、まさに青春ホラー・コメディと言うべき、とても素敵な作品に仕上がっている。
ともかく、話のまとめ方がとてもきれいなのだ。よくぞこんなにきれいにまとめたものである。
誰が脚本を書いたのか知らずに観たのだが、エンドロールが始まる前に、これは中村監督自らが手掛けた脚本に間違いないと確信した。この手際の良さ、爽やかで鮮やかな終え方は中村脚本ならではである。
今回は監督が仕込んだいくつかの仕掛けに、僕は途中で何一つ気づかないままラストまでなだれ込んでしまったが、問題は読み切れるか読み切れないかではない。仮に早い時点で全部読み切れたとしても問題なく楽しめたと思うし、読後感も変わらなかったと思う。
女子高生の四谷みこ(原菜乃華)はある日突然霊が見えるようになってしまう。ネット動画を調べて、最初は「霊を怒鳴りつければ良い」と教えられてやってみるがひどい目に遭い、別の動画で「とにかく見えていないフリをすること」と言われてそうすることにする。
どうやら同じように霊が見えてしまうユリア(なえなの)が学校で気持ち悪がられていることを知って、彼女はなおさら見えないフリをすると固く決心して、ユリアに対してさえそのことを隠す。
一方で、みこの親友のハナ(久間田琳加)は持っているエネルギーが強い「おびき寄せタイプ」であることもあって、次々と霊に取り憑かれてしまう。
はなはめちゃくちゃ怖がりながら、最後はユリアや、同じように霊が見える生徒会長の昭夫(山下幸輝)と協力して、ユリアや新任の担任教師・遠野(京本大我)に取り憑いた霊を祓って行く、という話。
と書くと、なんかストレートなホラーものに見えてしまうが、そこに卒なくコメディと学園ドラマの要素がてんこ盛りに盛り込まれている。
で、もちろん霊の出方、見せ方などで怖い場面も結構あるにはあるのだが、やっぱり中村監督が何重にも仕組んだ設定(ネタバレになるので書かないけれど)が見事で、エンタテインメント作品として本当に堪能させてもらった。
そして、何と言っても原菜乃華、久間田琳加、なえなのの3人が(クロースアップもふんだんにあって)とびっきり可愛く撮れているところも大きな魅力のひとつ。そんなことは映画の本質とは無関係だと言う人もいるかもしれないが、僕はアイドルを撮る上ではものすごく大切なことだと思っている。そういう意味では満点だ。
さらに、なんかぬぼっとした役を演じていた山下幸輝やなよっとした役柄だった京本大我が、エンドロールでキレッキレのダンスを披露するのもギャップが効いていて面白かった。
いやあ、久しぶりに中村義洋監督・脚本の職人芸を見せてもらった。大満足である。
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