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Wednesday, June 11, 2025

『浮世絵現代』展(東京国立博物館表慶館)

【6月11日 記】  昨日東京国立博物館の表慶館で『浮世絵現代』展を観てきた。ちなみに写真撮影 OK の展覧会だった。Photo_20250611165701

里中満智子、池田理代子、安藤モヨコ、水木しげる、石ノ森章太郎、ちばてつや、楳図かずお、山藤章二、さいとうたかお、池上遼一ら新旧の漫画家だけでなく、黒川紀章、横尾忠則、草間彌生らアート界の大御所たち、さらに和田誠、ビートたけし、安彦良和ら僕らがよく知っている人もいれば、名前は全然知らなかったけれど世界的に認められているらしい世界中のアーティストたちが、あくまで自分たちの感覚と解釈で新たに描き上げた現代の浮世絵の数々が展示されていて、全く飽きなかった。

そして、作品そのもの以外で非常にインパクトが強かったのが、ところどころに添えてあった浮世絵の作り方についての詳しい解説である。

浮世絵というものがどういう手順で作られるのか全く知らなかったわけではないのだが、具体的な説明文や行程を収録したビデオに触れると、ひとつには「よくまあこんな面倒くさいことをやるなあ」と、そしてもうひとつには「よくまあこんなに精緻にできるものだ」という驚きにあらためて襲われる。

とかく絵師ばかりが脚光を浴びるが、浮世絵はあくまで絵師、彫師、塗師、版元の4者の共同作業であるということがよく分かる。

そう言えば、NHK の大河ドラマ『べらぼう』でも前々回の放送で、元の絵は同じなのに、版元の適切な指示によって塗師が絶妙に彩色したものとそうでないものの仕上がり具合の違いを見て、歌麿(染谷将太)が驚くシーンがあったばかりだ。

そして、その『べらぼう』の人気に乗じて併催されていたのが『蔦屋重三郎』展である。

で、僕が買ったのはこの『蔦屋重三郎』展のチケットだった。もちろん『浮世絵現代』展単独のチケットも発売されていたのだが、『蔦屋重三郎』展のチケットを買うと、同日に限り『浮世絵現代』展にも入れると書いてあり、こちらのほうがお得感があったからである。

しかし、僕と妻の狙いはあくまで『浮世絵現代』展であり、『蔦屋重三郎』展は“おまけ”であり“ついで”でしかなかったので、開門と同時に博物館入りした僕らは、『浮世絵現代』が開催されていた表慶館に一直線に進んだのだが、僕ら以外にそちらに向かう客はおらず、ほとんどが『蔦屋重三郎』が開催されていた平成館に向かって一目散に歩いて行くのが見えた。

おかげでゆっくりと『浮世絵現代』展を鑑賞することができたのだが、その後で平成館に寄ってみると、入場規制こそかかっていなかったが、中はラッシュ・アワーの電車並みの混み具合である。とても美術品を鑑賞する環境ではない。

僕は『べらぼう』の大ファンではあるが、浮世絵に関しては、風景画には惹かれるものも多いが、美人画や役者絵にはあまり魅力を感じないということもあって、たまに観客が密集していないところの展示だけはちらちら覗いて、あとは群衆の頭越しに横目で見ながら猛スピードで平成館を抜けてきた。

しかし、日本人って、どうしてこうなるんだろうね? 不思議で仕方がない。

『べらぼう』に魅せられた人が多いのは分かる。しかし、そんな人たちがみんな浮世絵やその他の古文書をつぶさに観たいのだろうか。不思議で不思議で仕方がない。

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