映画『パリピ孔明 THE MOVIE』
【5月3日 記】 映画『パリピ孔明 THE MOVIE』を観てきた。
諸葛孔明が現代日本の渋谷に転生してくる話で、原作漫画やドラマの存在は知っていたが、あいにく諸葛孔明にはそれほど興味がなく、パリピな人々とのつきあいもまるでないので、漫画もドラマも見たことがなかったし、この映画についても観るつもりは全くなかった。
それが、映画を見る眼については信頼を置いている知人が褒めていたので、観る気になった。そして実際観てみると、事前に想像していたのとは全然違っていた。
中国三国志時代の天才軍師・諸葛孔明(向井理)が現代の日本で、アマチュア・シンガーである英子のプロデューサーとなって、彼女の歌で民草を救おうとする、ある意味で気宇壮大な物語である。
英子役には歌唱力に定評のある上白石萌歌を持ってきて、そのライバルである shin には水曜日のカンパネラの詩羽を充てるという、なかなか素敵なキャスティングである。
他にも(チョイ役も含めてだが)小室哲哉や石崎ひゅーい、女王蜂のアヴちゃん、アヴァンギャルディ、EXILE軍団から岩田剛典と関口メンディー、菅原小春ら(他にももっともっと出ているが)、実力のあるアーティストが次々と出てきて圧倒された。
僕はてっきり歴史パロディか、あるいは歴史的人物を持ち込んでの現代社会の戯画化かと思っていたのだが、いやいや、これは本格的な音楽映画だった。
全てがしっかりと音楽讃歌になっているところが素晴らしかった。そして、巨大なフェス会場でのパフォーマンスのシーンがいずれも圧巻である(とりわけアヴちゃんがすごかった)ところに強い説得力があったと思う。
本番の舞台だけではなく、英子が控室で2人のラッパーとラップを繰り広げるところも、ぐるぐる回るカメラワークを含めて、とても素敵だった。英子のラップがたどたどしいのは、そういう演出だったのだろう。
根本ノンジというベテラン脚本家は、僕は『左ききのエレン』ぐらいしか観ていないのだが、却々良いなあと思う。
そして、その『左ききのエレン』に主演していた神尾楓珠が、孔明のライバルであった司馬仲達の子孫・司馬潤の役でやはり敵方の“軍師”として現れ、その他にも孔明を支える小林役の森山未來、レコード会社の P である菊地凛子と和田聰宏、孔明の夢の中に出てくる劉備役のディーン・フジオカらがまことに良い味を出している。
そして、エンディングでは上白石と詩羽のデュエットになるんだと思ったら、なんと何の脈略も説明もなく、幾田りらが加わって3人になっている! これがまた良かった。この歌は幾田の作品らしいが、いやあ、しかし、幾田りらと詩羽と一緒に歌えるなんて、上白石萌歌はなんと幸せなんだろう!
バカバカしい設定や展開も含めて多少コメディっぽいところもあったが、そんなことよりもまず音楽に対する真摯な思いがビンビン伝わってきた。くっきーが全くギャグをかましたりせずに演技していたのも非常に印象に残った(そして、それが良かった)。
良い映画だったと思う。監督は渋江修平。
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