映画『か「」く「」し「」ご「」と「』
【5月30日 記】 映画『か「」く「」し「」ご「」と「』を観てきた。
主演が奥平大兼と出口夏希、原作小説が『君の膵臓をたべたい』の住野よる ── と話題に事欠かないが、僕が観に行ったのは監督・脚本の中川駿が目当て。長編デビュー作の『少女は卒業しない』がかなり良かったので。
で、誰でもまずこの特異な設定に目が行くと思う。そこで引っかかってしまって「ありえない」とか「ここまでやられると白ける」とか言う人もいるだろうし、僕の場合は2つ目の設定が明かされる直前に「ああ、きっとそうなんだろう」と予測がつき、その直後に全部でいくつの設定があるのかまで読み切ってしまった。
しかし、この映画、ポイントはそこではない。そんなところに引っかかってはいけない。ストーリー上も大きな要素に見えて、しかし、決して決定的な要素ではないのだ。
学園ドラマである。同じ高校の男子生徒2人、女子生徒3人の群像劇である。
京(奥平大兼)は、ひと言でばっさり言ってしまうと、とんでもないヘタレだ。ミッキー(出口夏希)のことが気になっているが、何もしないで諦めている。そして、京には人の気持が読めてしまうというのが第1の設定である(ここまでは予告編で明かされている)。
ミッキーは天真爛漫な不思議少女。出口夏希自身が「今まで演じた役の中でも自分とすごく似ている」と言っているところが興味深い。
ヅカ(佐野晶哉)はすごく気さくで良い奴なんだけれど、その一方で何を考えているのか読みにくいところがある。
パラ(菊池日菜子)は行動力抜群でしっかりとした女の子。エル(早瀬憩)は引っ込み思案の優しい女の子。
この5人の織りなす、五人五様の感情の移ろい、そして、それを演じた5人の俳優たちの見事に繊細な演技 ── それこそがこの映画の真髄だと思う。設定の奇抜さではなくまずそこを見てほしい。ありえない設定の上に、めちゃくちゃリアルでリリカルな世界が見えてくるから。
Recent Comments