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Monday, February 10, 2025

記憶について考える

【2月9日 記】このブログにも何度も書いているように、僕はいろんなことを次から次へと忘れてしまう。

一度観た映画であっても、観たという事実さえ記憶になくて、見始めてから少なくとも暫くは一度観たということを思い出さないし、推理ドラマだったりすると、映画が終わる 10分前くらいに漸く、「そうだ、こいつが犯人だ!」と気づく(と言うか、思い出す)とか…。

「ああ、この小説、前から読みたかったんだ」と思って買った本を読み終わり、「ああ、面白かった」とその本を本棚に持って行ったらそこに同じ本があった(しかも、僕の場合、紙のカバーがかかっていないということは既に読み終えているということだ)とか…。

映画や本だけではない、日常生活の中で起きたいろんなことを次々と忘れる。

もちろん全てを忘れるわけではない。映画や小説でも部分的に克明に憶えているシーンや表現があることもあるし、ほとんどすべて忘れていても、それが面白かったか面白くなかったかという記憶だけは残っていたりする。

そんな僕の文章を読んでくれていた、僕と同年齢の友人が、先日、「君はいつもそんな風に言っているけど、そこまで達観できたら楽だろうね」と言うので少し驚いた。

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Sunday, February 09, 2025

「キネマ旬報」2月号増刊(2)

【2月9日 記】 今年もまた毎年やっているキネマ旬報ベストテンの得票分析をしてみます。

キネマ旬報ベストテンは、審査員がそれぞれ合計 55点を持って、1位には 10点、2位には 9点、…、10位には1点と入れて行き、その合計得点で順位が決められています。今回 2024年第98回の審査員は、前回と同じく「本誌編集部」を含めて 60名でした。

で、僕が何をやっているかと言うと、それぞれの映画の得点を、「合計点=点を入れた審査員の人数×平均得点」という形に分解してみるのです。

例えば同じ 150点獲得の映画でも、一方は

(a)合計150点=30人×平均5.00点

他方は

(b)合計150点=20人×平均7.50点

だったとすると、(a) は多くの人に広く受けた映画、(b) は特定の人の心に深く刺さった映画と言えるのではないか、ということです。

これは統計学的には必ずしも正しい手法とは言えないのでしょうが、1~10位くらいまでに絞ってやってみると、それなりに審査員たちの評価の傾向が見えてくる気がして、それが面白くて毎年やっています。

さて、2024年の結果は:

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Friday, February 07, 2025

映画『ファーストキス 1ST KISS』

【2月7日 記】  映画『ファーストキス 1ST KISS』を観てきた。

塚原あゆ子監督も早いもので5本目の劇場用映画である。

僕は坂元裕二のことは良い脚本家だと思ってはいるが、熱狂的な信者ではない。

ただ今回、塚原あゆ子 + 坂元裕二という取り合わせがどんな風になるのかについては興味があった。

硯駈(すずり・かける、松村北斗)とカンナ(松たか子)は出会ったその日に強く惹かれ合い、交際1か月で結婚を決めたのだが、知り合ってから 15年の年月が過ぎるうちに、気持ちも言葉もすれ違うようになってきて、ついに離婚届を提出するというその日に、駈は駅で線路に落ちた赤ん坊を助けようとして電車に轢かれて死んでしまう。

── と、ここまでは導入部分なので、テキトーに手早く描いても良いところなのだが、さすがに坂元裕二の脚本に手抜きはない。

駈が電車に轢かれるところから始まって、駈の遺影があるカンナの部屋に移り、デザイナーとして舞台美術を手掛けているカンナの職場のシーンとなり、同僚の杏里(森七菜)の台詞でカンナが離婚したこと、彼女の最近の日々が冴えないことを匂わせながら、仕事場で奮闘するカンナの姿もユーモアを交えて描いて行く。

その帰り道にカンナは 15年前の初めて駈と会った日にタイムスリップして、駈と出くわしてしまう。駈は 29歳、自分は 45歳である。

その日はさすがに何もできなかったが、前と同じことをすれば同じようにタイムスリップできることを発見したカンナは、何度もあの日に戻って、駈が死なないで済むように歴史を変えようとする。

ここでは熱烈に愛し合っていた2人ではなく、倦怠期を迎えていたのに、やっぱり駈を生かせたいと思い始めたカンナの気持ちの変化を捉えたところがミソである

しかし、カンナが行って何かをするたびに、歴史は少しは変わるのだが、駈がその日に死ぬことだけは変わらない。

── というような設定の映画だ。

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Thursday, February 06, 2025

映画『君の忘れ方』

【2月6日 記】  映画『君の忘れ方』を観てきた。

坂東龍汰の名前を憶えたのは、2021年の WOWOW の連続ドラマW『ソロモンの偽証』で、2015年の映画版では清水尋也が演った不良少年・大出を演じたときだ。僕は清水尋也の名前もこの役の時に憶えた。どちらも非常に印象に残る役だった。

それからずっと坂東龍汰をある意味追いかけてきたのだが、順調にいろいろな役をこなし、ついに去年 10月クールの TBS『ライオンの隠れ家』(僕も全話観た)での障碍を持った若者の役で一躍ブレイクした。

西野七瀬については、例よってアイドルに弱い(自分が若い頃にはそうでもなかったのだけれどw)僕のことなので、乃木坂46 時代は全く知らなかったのだが、本格的に女優としてデビューしてからは結構好きでよく見ていた。

とりわけ『恋は光』での、主人公・神尾楓珠を支える幼馴染みの役などは出色の出来だったと思う。

というわけで、要するにこの映画の主演の男優も女優も好きなのである。

そして予告編を見る限り面白そうでもあった。

でもなあ、監督が聞いたこともない奴だからなあ…というのが、僕が映画館に行くのを躊躇していた理由だったのである。

ところが一昨日、学生時代からの友人からのメッセージで、作道雄監督が実は僕らの共通の知人の息子さんだと知って、「こりゃ、見なきゃ」となったわけである。

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Wednesday, February 05, 2025

掘り出しモノ賞

【2月5日 記】 昨年末に 2024年の掘り出しモノ賞を選ぶのをすっかり忘れていた。『チャチャ』か『アット・ザ・ベンチ』かのいずれかかなと思ったのだが、『アット・ザ・ベンチ』を選んでおきたい。

存在さえ知らなかった映画で、会社員時代の映画好きの先輩に教えられて見に行っただけに、これこそ“ほんまもん”の掘り出しモノという気がする。

奥山由之という、映画の世界ではまだあまり実績のなかった監督だが、CM界では有名な人らしく、この小さなオムニバス作品に有名な俳優たちが集まった。

よく書けた脚本で、画作りも、役者たちの演技も非常に良かった。次回作が楽しみな監督である。

ちなみに、僕がこれまでに選んできた作品のリストは下記の通りである:

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「キネマ旬報」2月号増刊(1)

【2月5日 記】 今年もまた『キネマ旬報』2月号増刊が届いたので、僕が年末に書いた「『キネマ旬報』ベストテンの20位以内に入ってほしい邦画10本」とつきあわせてみたい。

まず、僕が選んだ 10本を改めて挙げておく:

  • デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章/後章
  • 青春18×2 君へと続く道
  • ミッシング
  • あんのこと
  • 違国日記
  • 劇場版モノノ怪 唐傘
  • ナミビアの砂漠
  • 八犬伝
  • 本心
  • 雨の中の慾情

毎回書いている通り、これは、

他の映画賞ではなく「キネ旬の」
10位以内ではなく「20位以内に」
「入るだろう」ではなく「入ってほしい」

10本である。そして、上記は僕が観た順番であって評価の高い順ではない。

さて、まずは 2024年キネマ旬報日本映画部門の1位から20位(4位、14位、19位は同点で複数作品)までを提示する:

  1. 夜明けのすべて
  2. ナミビアの砂漠
  3. 悪は存在しない
  4. Cloud クラウド
  5. ぼくのお日さま
  6. ぼくが生きてる、ふたつの世界
  7. ルックバック
  8. 青春ジャック 止められるか、俺たちを2
  9. ラストマイル
  10. あんのこと
  11. 箱男
  12. 基盤斬り
  13. 侍タイムスリッパー
  14. 一月の声に歓びを刻め
  15. 正体
  16. ゴールド・ボーイ
  17. 十一人の賊軍
  18. 違国日記
  19. 辰巳
  20. ミッシング

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Monday, February 03, 2025

ある意味での演歌批判と、五木ひろしの再評価

【2月3日 記】  僕は最近、五木ひろしを再評価している。いや、正確に言うと、五木ひろしが歌った楽曲を再評価している。

なぜなら、大雑把に「演歌」と括られるジャンルにあって、彼が放ったヒット曲にはかなり斬新なものが多かったと、今頃になって気づいたからだ。

世代的な特徴と言っても良いのかもしれないが、僕(ら)は積極的には聴かないものの、さりとて演歌というジャンルに拒否感はない。いや、逆かな? 演歌に拒否感はないけれど積極的に聴くには至らない、と言うべきか。

それはどうしてかと言うと、同じような曲ばかりだからだ。

演歌というのはある程度伝統を踏まえたものだから、その伝統を守り続けると同じような歌ばかりができてしまうという面はあるだろう。それはちょうどアメリカにおけるカントリーやブルースみたいなものなのかもしれない。

しかし、カントリーやブルースにもいろいろな色合いのものがあり、新しいものも順次出てきている。

それに対して演歌は、詞・曲ともにどれを聞いても同じような歌が溢れかえっている。いや、

もちろん時々毛色の違う作品もあるし、その中には名曲というべきものも少なからずある。演歌のサブ・ジャンルもいくつか新しくできてきた。でも、それは昭和の中期までで、昭和の終盤以降、演歌はほとんど進化していない印象がある。名曲と呼ぶべき作品もほとんどないのではないか?

昔の焼き直しみたいなメロディがものすごく多いのである。それは前奏が始まった途端に痛感する。

例えて言うなら“チャンチャカチャン演歌”なのだ。どれもこれもチャンチャカチャンなのである。

昔、平野雅昭という人が歌った『演歌チャンチャカチャン』というのがあったじゃないですか? と言っても、1977年のスマッシュ・ヒットなので、「そんなもん知らん」と言われそうだが(笑)

いろんな演歌を ♪ チャーンカラッチャッチャッチャ という口三味線の間奏で次々に繋いで行くやつ。それぞれ違う歌なのに全部 ♪ チャーンカラッチャッチャッチャ で繋がって何の違和感もない。

僕はあの歌はある意味で演歌のマンネリズムをパロディ化したものだと思って聞いていた。

そして、今この時代に『演歌チャンチャカチャン』に追加で入れ込んでも何の違和感もない、詞も曲もいつまでも“昭和”を引きずった演歌が平成になっても令和になってもたくさん残っているのである。

旧態依然たる男女の関係を、聞いたような節回しに乗っけて歌う演歌が、いつまで経っても幅を利かせているのである。

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Saturday, February 01, 2025

鎌倉アルプス

【2月1日 記】  昨日、友人に誘われて「天園ハイキングコース」にハイキングに行ってきた。「鎌倉アルプス」などという素敵な別名を持つコースである。

途中、何箇所かのポイントから富士山をきれいに望むことができる、素晴らしいコースだったのだが、日頃の運動不足もあって、まずは下山してしばらく歩いていたら突然右足の太ももが攣って歩けなくなったり、帰宅してから足も腰も筋肉痛で、一晩明けた今も続いていたりと、結構大変だった。20250131

しかし、それにしても、最高地点である大平山の頂上は海抜わずか 159m である。

そんなものあっという間だろうと高を括っていたのだが、これが結構しんどい。

まっすぐな坂を 160m の高さまで登るのであれば、たとえ山道であっても、確かにどうってことないだろう。現にそんなイメージでいた。

しかし、実際に行ってみると、急な勾配を登ったかと思うとそこからしばらく下り坂が続いたり、また上りまた下りの繰り返しである。

せっかく必死で昇った高さが、下り坂でチャラにされてしまうことの切なさを何度も痛感した挙げ句、ようやく頂上にたどり着くのである。

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