『地下室のヘンな穴』
【12月8日 記】 久しぶりに WOWOW で観た映画について書く。ちなみに、映画館で観た映画についてはほぼ全てここに何か記事を書き残しているが、テレビで観た映画についてはあまり書いていない。
この映画は去年妻に頼まれて録画したまま放ってあったのだが、昨夜夫婦で漸く観た。2022年の仏白合作のコメディ映画である。言語はフランス語。監督は鬼才(なのだそうだ)カンタン・デュピュー。
中年夫婦のアラン(アラン・シャバ)とマリー(レア・ドリュッケール)は初めて一戸建てを買って引っ越してくるのだが、その家の地下室にはマンホール状の変な穴が空いている。
蓋を開けて梯子を降りると何故かそこは同じ家の2階で、降りたときは夜だったのに朝になっている。時間が 12時間進んでいるのだ。その代わりに降りた人の肉体は3日分若返っている──という不思議な穴である。
アランのほうはそうでもないのだが、マリーは若返ると聞いてこの穴に取り憑かれてしまう。
3日若返るということは 100 回降りても1年も若返らないわけだが、マリーは必死になって、これを何千回もやってしまう。
一方、アランの親友で、アランが勤める保険会社の社長ジェラール(ブノワ・マジメル)とジャンヌ(アナイス・ドゥムースティエ)の夫妻は、2人揃って“すきもの”で、ジェラールは自分のペニスを「電子ペニス」にする。スマホのコントローラでサイズと形状と硬さを自在に調節でき、いつでも勃起できるという代物だ。
このとんでもなく突飛でバカバカしい2つの設定をスタート地点としてストーリーは進んで行く。2つはあくまで別々の設定であり、有機的に絡み合うというようなこともないのだが、ジャスト・ワン・アイデアではなく2つを設定したことでおかしな話が出来上がった。
終盤はラスト・シーン直前まで全く台詞なく BGM だけで早回しのダイジェスト版みたいに展開するのもおかしかった。
あくまで大人の話だが、童話にでも出てきそうな「欲を張ってはいけません」という解りやすい教訓を組み込んだブラック・コメディである。
しかし、それにしてもいつもながら妻の嗅覚については驚いてしまう。彼女が「面白そう」と言った映画で今まで面白くなかったものはほとんどない。本当にいつも変なものを見つけてくる。
うん、面白いものと言うより変なものを見つけ出してくる才能である。
彼女はなんでこれを録画したいと思ったのか憶えていないと言っている。番組説明文には「新居の地下室に変な穴があって、そこに入ると若返る」ぐらいのことしか書いていなくて、少なくとも2つ目の設定については知らされていなかったはずだ。
「笑い転げた」「お腹が痛い」と言うほどの爆笑作品ではないが、ともかく一風変わっていて、バカバカしくて面白かった。
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