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Tuesday, November 26, 2024

映画『アングリースクワッド』

【11月26日 記】 映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』を観てきた。

2018年の『カメラを止めるな!』は、観る前にはかなり躊躇したのだが、実際観てみたら最高に面白かった。

しかし、あの映画はジャスト・ワン・アイデアの、しかも、そのアイデアが半端なく冴えていた作品で、それだけに「あれをもう一度やるわけには行かないだろう」という気がして、それ以降上田慎一郎監督には逆に期待する気持ちが湧き起こらなくて、作品もほとんど観ていなかった(『カメラを止めるな! リモート大作戦』は観た。そこそこおもしろかった)。

今回は知人が facebook と note でこの映画を激賞していたので観に行ったわけだ。

とは言え、上田監督のオリジナルでもないし、紹介文などを読む限りはフツーのエンタテインメント作品ではないか。あの『カメ止め』の上田監督が撮るにはあまりにありきたりだなあと、今回も少し乗り切れないまま観に行ったわけだが、しかし、観てみるとこの映画もまた傑作だった。

この作品を上田監督に提案したプロデューサーは上田監督の作品を『カメ止め』以前から観ていたのだそうで、うむ、確かにそういう人でなければ『カメ止め』の先入観があまりに強すぎて、こんな映画を作らせようとは思わなかったかもしれない。

韓国ドラマの原作があるとは言え、原作は 16話もあり、それを2時間の映画にするのはさぞかし大変だったろうと思う。脚本は上田監督と岩下悠子という人。この人はそれほど実績のある人ではない。

でも、よく書けた脚本だったと思う。笑いも存分に取れていたし。

上田監督は、出演者の提案も受けて何度も何度も現場で脚本を書き直したと言うが、ああ、この人は基本的に台詞を書く力があるんだろうな、と思った。

さて、上田監督にとってはこんなに大勢の名の通った役者を使うのは無論初めての上に、スタッフの座組も本格的で、「ワンカット撮るのにこんなに時間がかかるんだ」と思ったと言っているが、主演の内野聖陽を中心に上手にチーム作りが進み、コミュニケーションが巧く行ったようだ。

しがない税務署職員・熊沢を演じた内野聖陽は、いつもの精悍な感じは微塵も感じさせないぐらい封印して、とにかく気が弱く、事なかれ主義で、妻には尻に敷かれ、いつもおどおどしているキャラをほんとに見事に演じきった。

その熊沢が、(長くなるので説明はすっ飛ばすが)一流詐欺師・氷室(岡田将生)のチームに加わって、元女優の白石(森川葵)、当たり屋・村井(後藤剛範)、偽造のプロ・丸(上川周作)、闇金業者・五十嵐(真矢ミキ)とそのクレイジーな娘(野木聖奈)と一緒に悪徳実業家・橘(小澤征悦)を嵌める話である。

彼が金持ちになりすますシーンでは、如何にも緊張しながら一生懸命演じている感が出ていて、とても面白かった。

他にも川栄李奈、皆川猿時、吹越満、神野三鈴ら、結構な豪華キャストである。

なお、副題には「7人の詐欺師」とあるが、上記を数えると6人しかいない。7人目は映画を見れば判る。

Netflix の『地面師たち』が記憶に新しいが、こっちはもっともっとエンタテインメント色が強い。『オーシャンズ』シリーズや『コンフィデンスマンJP』を思い出す人も多いのではないか。

この手の”ケイパーもの”(caper film)としてもトリックの完成度は高いし、おお、それはここのシーンの伏線だったのか!みたいな面白さも多々あった。

こんなに面白いものが撮れるのであれば、『カメ止め』みたいな奇抜なアイデアでなくても、フツーのエンタテインメント作品で良いかなという気もした(笑)

なお、この前日譚の3話ドラマが Lemino で公開されている。初入会は初月無料だから観てみようかな、と言うか、前日譚も是非観たくなるような映画だった。

ただ、タイトルは良くないね。angry は中学生でも知っている単語だが、squad となると、大学生でも意味を即答できる人は少ないのではないだろうか。どうして英語タイトルにする必要があったのだろう?

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