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Sunday, November 03, 2024

映画『がんばっていきまっしょい』

【11月3日 記】 映画『がんばっていきまっしょい』を観てきた。Img_2440

僕はアニメを(ま、年の割には観ているほうかもしれないが)そんなに観るほうではないのだが、このアニメは映画館で最初に予告編を目にしたときにすぐに「これは観たい!」と思った。

何に惹かれたかと言えば、まずは構図である。

僕はボート競技なんかほとんど見たことがないから想像で言うのだけれど、実際にボートを漕いでいるすぐ側にカメラを設置することはできないはずだ。

それが、こんな風に 3DCGアニメになると、オーソドックスにボートの真横から同じ高さで撮ったり、真上から映したり、グルっと回ったり、斜めに動いたり、何よりも視点の移動が縦横無尽なのである。

とりわけ、漕ぎ手の目線でコックスが近づいたり遠ざかったりする画はひときわ力強く爽やかだった。練習し始めた頃は微妙にバラバラだったオールの動きが次第に揃ってくる辺りも丁寧に表現していた。

ボートだけではない。こういう設定だと当然水の描きかたがキモになってくるが、水はもちろんのこと、風、光、影、空(青空と雲、そして赤すぎるぐらいの夕焼け)など全てのものをものすごく生き生きと描いている。

そして、彼女たちの髪が風に揺れ、光が影を作る。そんなところも超一流である。

人もそうだ。それぞれのキャラの描き分け。髪型も、髪の色も、目の色も、スカートやソックスの長さもそれぞれ違っていて、歩き方さえ一人ひとり独特に描いている。

しかも、人間が歩くシーンンというのは安物のアニメだとどうしても少しぎこちなくなるのだが、そういうことがまるでない。3DCG はもう完全に不気味の谷を越えたのだなと大いに感心した。

ライバル校の寺尾梅子がトイレに入って行くシーンでは、トイレのガラスは曇りガラスなので中は曇って見えないのだが、ドアを締めたらそこに梅子の影がぼんやりと映って、梅子が中に進むにつれてその影が薄くなって消えていくシーンを見て、演出の細かさに舌を巻いた。

とにかく端々まで神経の行き届いた描画である。

女の子たちを少し下から描いて、スカートの内側にスリップなのかペチコートなのか知らないが、下着のレースが少し見えたりするのは、僕は軽いエロチシズムの表現というよりは、暑くてもそういうのをちゃんと着ている子たちなのだという表現と受け取った。

下からの画と言えば、二宮くんとリーが(確かこの2人だったと思うのだが)話をしているのを下から撮って、それがさらにパンナップして満点の花火が突然始まる、というのもとてもきれいな演出だった。

この完璧な表現力で、このアニメは、ボート部で同じ艇に乗るメンバーとなった5人の女子高生たちの青春を描いている。とりわけ悩み多きは主人公の悦ネエであるが、彼女を取り巻くヒメ、リー、イモッチ、ダッコの4人も個性的に描かれている。

それほど大したことは起こらない。でも、それほど大したことでないことに悩んだり迷ったりするのが青春なのだ。わざとらしい起承転結がないところがまた素晴らしい。それが余韻になるのである。

もう、うっとりするような、愛おしくなるようなアニメであった。完全に魅了された。素晴らしいアニメだった。

ただ、ひとつだけ思ったのは、ボート部員にしてはみんな細すぎるということ。ライバル校も含めて、これでは大した記録は出ないのではないだろうか? もうすこしだけ筋肉をつけてあげても良かったのではないかな。

僕が思うにこれはやっぱり「細くなければ可愛くない」という呪いなのだと思う。

でも、パリ五輪やり投げ金メダルの北口榛花みたいに、ぽっちゃり型でもとても可愛い人もいる。そういう意味では同じアニメでも少し太目のトツ子を主人公に据えた『きみの色』は偉かったとも言える。

まあ、しかし、それを措いても、これは今年を代表するアニメだったと思う。

「アニメーション制作」とクレジットされている萌は設立して7年、REIRS(レイルズ)はまだ4年のプロダクションである。今後の作品に注目したい。

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