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Tuesday, October 29, 2024

正しい翻訳

【10月29日 記】 長年使っているアメリカ製のヨガのアプリが、多分アップデートをきっかけにだと思うのだが、アナウンスが突然英語に変わってしまった。

設定を確かめると、「言語」はちゃんと「日本語」になっているが、流れてくるのは英語のインストラクションなのだ。念のため一度他の言語に変更してから日本語に再設定してみたが、やはり英語しか流れてこない(ちなみに、文字の表示は全て日本語だったが)。

それで「フィードバック」用のフォームから現象を説明して対応を促した。

そうしたら、その翌日、こんなメールが返ってきた。

こんにちは、私たちは現在、すべての練習タイプをすべてのサポートされている言語に対応させるために取り組んでいます。これを実現するためにご辛抱いただき、ありがとうございます!

僕は最初うまく意味が掴めなかった。はぐらかされたのかと思った。しかし、よく読むとこれは、

今対応しているのでもう少し待ってくれ

という趣旨のメールのようだ。

元の英語はおそらく

Hi, we are currently working on making all practice types compatible with all supported languages. Thank you for your patience!

みたいな感じなのだろう(日本語の翻訳文からすると、多分 patience の後にもう少し何か続いていたのだろうけれど)。

しかし、もし「もう少しご辛抱を」と言うのであれば、次のような日本語が適当ではないかと思うのである。

ご迷惑をおかけして申し訳ありません。アナウンスが英語になってしまうというバグについては当社も把握しており、現在鋭意対応中です。対応が完了するまで今しばらくお時間をいただきたく、よろしくお願いいたします。

どこが違うか、何が違和感があるかと言えば、それは Thank you for your patience! である。

いや、Thank you for your patience! という英文で聞くと違和感がないのだが、「ご辛抱いただき、ありがとうございます!」と言われると、なんか喧嘩を売られているような気分にさえなってしまう。

ここが翻訳の難しさ、と言うか、直訳することの不適切さなのだ。

翻訳するという行為はひとつひとつの単語や熟語を置き換えることではない。同じ意味の文章に、あるいは、同じ意図を伝えられる表現に置き換えることである。その背景には当然民族性や文化、習慣の違いなどが反映されなければならない。

僕は何も「謝れ!」と言いたいのではない。むしろ、何かといえばすぐに「申し訳ございません」と言ってしまう日本社会を如何なものかと思っている。

しかし、「ご辛抱いただき、ありがとうございます!」などと言われると、まあ Thank you 文化ではなく、「申し訳ございません」文化に長年浸ってきてしまっているせいかもしれないが、やっぱりなんか違うのである。

そして、「なんか違う」と感じさせてしまう翻訳は、やっぱりなんか違うんじゃないかなと思ってしまうのである。

ちなみに、その4日後にアプリを開いてみたらこの不具合は解消されており、5日目にもう1通メールが来た。

そこには、

こんにちは!ご不便をおかけして申し訳ありません!この問題は解決されたはずですので、まだ英語の音声しか利用できない場合はお知らせください!

こっちはちゃんと「申し訳ありません」文化圏の表現になっている。こっちはできたのに、どうしてあっちはできなかったんだろう?

ま、なおったからそれでいいか。

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