映画『恋を知らない僕たちは』
【8月23日 記】 映画『恋を知らない僕たちは』を観てきた。原作は水野美波による大ヒット漫画で『恋僕』と略すらしい。この人の代表作のひとつが『虹色デイズ』で、飯塚健監督が実写化した映画は僕も観ている。
観客の恐らくほとんどが原作漫画か、主演のなにわ男子の大西流星のファンなのだろう。そんな中、この回の上映で酒井麻衣監督目当てに観に来ていたのは僕ぐらいのものじゃないかな。でも、僕はこの監督の画作りがとても好きなのだ。
で、オープニングはその大西のきれいなきれいな横顔。こういうきれいな顔は監督が選ぶ背景と見事にシンクロする。
海辺の街の中学と高校。田舎道の通学路。制服のまま海に飛び込む3人。きらめいて飛び散る水しぶき。もう最初から酒井監督が得意とする画が続々と出てくる。
かざぐるま、花火、随所にインサートされる雲や夕陽。幾層にもなって寄せる波。瓦屋根のある校舎。その茶色の瓦屋根のてっぺんが渡り廊下みたいなところから大きく見える。
全編九州ロケらしいのだが、どのシーンも見事なロケーションだった。
夕暮れの光の差す窓を奥にして柔らかい逆光を浴びた図書館の書庫の細い通路を遠近感たっぷりに描く。
そして、いつものように奥行きのある構図で背景を思いっきりぼやかせて、その手前でものすごくくっきりしたワンショットを撮る。
秀逸だったのは最初のキス・シーン。影を映した見事な様式美!
大西流星、窪塚愛流、齊藤なぎさ、莉子、猪狩蒼弥、志田彩良が演じる6人のティーンエイジャーたち。窪塚と莉子のカップルを除くと、自分が好きな人は必ず他の人が好きという、まあ、ありがちな設定である。
恋か友情か──という青臭いテーマである。でも、僕も中学生や高校生だったときにはそんなことに日夜悩み苦しんでいた。
正直言ってご都合主義の展開もある。でも、登場人物がみんな瑞々しい。とりわけ、「巧い」という感じではないのだが、齊藤なぎさが魅力たっぷりである。
そして何よりも僕は酒井麻衣監督の画作りが好き。
世間的にはそんなに高い評価は得られないのかもしれないが、とにかく僕は彼女のドラマや映画が大好きである。
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