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Tuesday, August 13, 2024

映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる』

【8月13日 記】 映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる』を観てきた。Img_2332

櫻坂48 の藤吉夏鈴が主演だが、彼女が目当てではない。僕は小林啓一という監督が好きなのである。

小林監督はずっと青春映画を撮ってきた。そして『殺さない彼と死なない彼女』にしても『恋は光』にしても、登場人物は多少イタイやつでも、そこで描かれる青春は決して痛々しくないのである。そこが素晴らしいと思う。

さて、この映画での藤吉の演技は所どころぎこちない。演技経験がないわけではないが、映画は初出演で、共演の髙石あかりや久間田琳加と比べるとやはり少し見劣りしてしまう。

だが、それなりに味は出てたかな、という感じ。

ストーリーは、いろいろいきさつがあって新聞部に入部した高校一年生・所結衣(藤吉夏鈴)が部長の杉原かさね(髙石あかり)と2人で、学内に巣食う悪を告発し駆逐して行くというもの。

どんでん返しが用意されているとは言え、話は上手く転がりすぎだし、チャチなところもあるし、何よりもテーマが青臭い。

しかし、その辺りが小林監督の腕の振いどころなのではないかな。

テンポは良いし、結衣の一直線な正義感が描かれて、何よりも観ていてスカッと胸のすく青春映画に仕立て上がっているのである。何とも気持ちが良い。

筋運びにケレン味がないのである。それでこその青春映画ではないか!

脚本の大野大輔という人は、今回観るのが初めてだと思いこんでいたのだが、調べてみたら前田聖来監督の『幕が下りたら会いましょう』を観ていた。そんなに台詞が切れる人とは思わないが、よくまとまっている。

アップテンポの BGM がやたらと鳴っているのも、本来僕はそういうのは好きじゃないのだが、この映画では却ってそれが心地良く、映画のリズムを後押ししていた。

高嶋政宏が悪の権化役を務めていて、いつもながらのオーバーな演技が、この映画にはむしろぴったりだ。

初っ端から味方なのか敵なのか分からない文芸部部長を演じた久間田琳加や、謎の3年生男子役の綱啓永も良かった。

定番の勧善懲悪モノの展開ではあるが、正義をこんな風に清々しく描くなんてそんなにできることではない。

やっぱり小林啓一の手腕なんだろうと考えるのは贔屓目なんだろうか?

結衣とかさねの学年差を活かしたラストも良かった。そう、この監督は後味が良いのである。

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