『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆(書評)
【8月31日 記】 三宅香帆の「著書」となると『女の子の謎を解く』しか読んでいないが、note や東洋経済オンラインなどで数多くの記事を読んできた。
そんな風に僕が割合早くから目をつけていた三宅がこの著書で一躍ベストセラー作家になってしまって、僕としてはちょっと悔しい気さえする。
僕は今まで彼女を「解釈の人」だと思ってきた。
小説、古典文学、漫画、テレビドラマ、アニメ、映画、配信番組などについて彼女が書いている文章には、いずれも彼女でなければ読み込めないような深くて斬新な解釈があった。
それは単に「こんな風にも読める」とか「こんな印象を持った」というようなことではなく、いずれもその本やドラマが作られた背景にある現代社会のあり方と密接に結びついた解釈だった。
そして、今回のこの本を読んで驚いたのは、この本では彼女がしっかりと史学的なアプローチに基づいて検証しながら論を進めているところである。
今まではむしろ人文科学の人だと思っていたのだが、この本は極めて社会科学的なアプローチで書かれており、その点が僕にとっては新しく、意表を突かれた。
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