Netflix『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』
【7月1日 記】 Netflix で『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』を観た。
僕にとっては、一瞥しただけで本編を観る気が失せてしまうようなタイトルである。本来ならまず観ない作品だ。
でも、三木孝浩監督なのである。これは見逃したくない。
それに主演が出口夏希だ。『舞妓さんちのまかないさん』で初主演してから、あっと言う間にスターになった。そして、どんどん魅力的に、どんどん巧くなっている。
さらに、彼女の幼馴染役で横田真悠も出ている。先に書いてしまうと、先日観た『言えない秘密』とは全く違うタイプの役柄を上手に演じていて、彼女もまたどんどん巧くなって、どんどん売れ始めている。
ダブル主演の永瀬廉(このくらいになってくると、僕のような老人でも顔と名前がはっきり一致する)の妹役に『からかい上手の高木さん』の月島琉衣が出ているのも楽しみだ。
最初、映画.com のサイトでこの作品を見つけてリストアップしていたのだが、公開日になっても映画.com の「映画館を探す」ボタンがグレイアウトしたままアクティブにならないので、どうしてだろうと悩んだのだが、映画.com には配信作品も掲載されることを忘れていた。
これは Netflix の作品だったのだ。
設定やストーリーはあまり書く必要はないだろう。
少しだけ書いておくと、余命一年の秋人(永瀬廉)が余命半年の春奈(出口夏希)に病院の屋上で会う。この時点では秋人は入院はしていない。2人とも絵を描くのが好き。ほとんど中学校にも行けなかった春奈と違って、秋人は高校の美術部で、二科展入賞を目指している。
春奈は自分が余命半年であることをあっけらかんと秋人に告げる。それで、秋人は自分のことは言えなくなってしまう。
さて、タイトルからして、最後には主人公が死んでしまうことは目に見えている。タイトル通りであれば、まずは春奈が、次に秋人が。
ひょっとしたら、ドラマでは順序を変えてくる可能性もある(あるいは、どちらかの病気が完治するという展開も考えられなくはないが、僕はこのタイトルでそれをやるのはあくどいと思う)。
だから、その死までどうやって持って行くかがドラマの命になる。
結論から言うと、このカップルの話だけに終始せず、もうひとり別の要素として2人の親友である綾香(横田真悠)を登場させ、彼女の思いを上手に絡めて、とても良いドラマに仕上げたと思う。
さすがに脚本は吉田智子、撮影は柳田裕男という、ともに名の通った実力のあるスタッフである。
こういう恋愛ドラマの常として、当然2人のアップの構図が多くなる。それをどの角度から撮るのか、2ショットに収めるのかそれとも1人ずつ切り返して撮るのか、カメラは動くのか固定なのか、背景に何を据えるのか、その背景を思いっきりぼかすのかぼかさないのか、いちいち適切だと思った。
こういう一つひとつの画作りが感動を支えるのである。
やっぱりこの手の映画を撮らせたら三木孝浩の右に出る監督はいないと思った。
余談だが、出口夏希と横田真悠が抱き合ったシーンで、横田の髪が少しブラウンがかっているのに対して、出口の髪がそれと対照的に真っ黒なのが目についた。長期入院中の身だから当然髪を染めているはずがないとは言え、やっぱりこの娘は黒髪がものすごく似合うなと改めて思った。
出口夏希の魅力全開である。MBS の深夜ドラマ『ガールガンレディ』で初めて彼女を見たときには、あれだけ登場人物が多い中で確かに目立って可愛かったが、しかし、名前を記憶するには至らず、まさかこんな良い女優になるとは夢にも思わなかった。
しかし、それにしても、若手俳優たちがこれだけ良い演技をしているのに、秋人の父親役の仲村トオルのワン・パタンは少し悲しかった。
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