【4月1日 記】 僕は「ことばのWeb」というのをやっていたくらいで、言葉に対して強い興味関心があります。と言っても、多少とも知っているのは日本語と英語だけなので、対象はおのずからその2つの言語に限られるのですが…。
そんな中で最近よく考えるのが日本語の「生(なま)」という言葉の多様性です。
まず誰でも思いつくのが、「生野菜」「生肉」「生魚」でしょう。これらの単語における「生」は「調理/加工されていない」という意味です。
「生ジュース」というのもそれに近いですね。端的には生の果物を絞ったジュースということで、ある意味「調理はされているけれど、加工はされていない」と言えるかもしれません。ただ、それよりもここでは「フレッシュな」という意味合いが強いのではないかと僕は考えています。
じゃあ、「生ビール」って何でしょう? これは製造過程で熱処理されていないビールのことです。僕はこのことを知るまで、ビールが熱処理されているなんて知りませんでした。ビールを鍋でぐつぐつ煮るイメージで捉えていたので、そんなことしたらビールじゃなくなるんじゃないかと心配したのでした。
でも、調べてみると熱処理と言っても低温で短時間なのだそうです。今では居酒屋で出てくるビールだけではなく、缶ビールも含めて多くのビールが熱処理をしていない生ビールなのだそうですが、熱処理をしたビールもしっかり残っていて、それがラガービールです。
要するにビールの「生」は「熱処理されていない」という意味だったんですね。
ちなみに「生水」というのも沸かしていない(= 熱処理されていない)水という意味です。
じゃあ、「生ハム」とか「生チョコ」は? ハムやチョコレートもやはり製造過程で熱処理しているのでしょうか?
「生ハム」は決して「生肉」ではありません。調理加工された豚肉です。ただ、一般的にはやはり加工の途中に熱処理(蒸したり茹でたり)があるらしく、それをしていないのが「生ハム」とのこと。これも調べてみるまで知りませんでした。
じゃあ、「生チョコ」は? いくらなんでも途中で加熱したら元のドロドロに戻ってしまうんじゃない?
調べてみて驚いたのは、「生チョコ」というのはどうやら日本だけでの呼称のようで、何でも神奈川県の洋菓子店主が命名したとか。なんだかほとんど雰囲気で名前をつけちゃったような気もしないではありません。
「生」という言葉を使っているのはどうやら「柔らかい」というイメージから来ているようです。
じゃあ、何故柔らかいかと言うと、一般的なチョコレートは水分量が 3%以下でパリッと堅いものですが、生チョコは水分量が 10%以上で柔らかい食感なのだそうです。
じゃあ、どうやって柔らかくしているかと言うと、生クリームや洋酒を加えるとのこと。
ちょっと待った! 「生クリーム」って何でしょう?
「生クリーム」とは「生乳」のみで作られたクリームだそうです。生乳は分かりますよね。生の乳ですね。いや、人間のおっぱいじゃなくて牛の乳。
ちなみに牛から絞ったそのままが「生乳」、それを加熱殺菌して売られているのが「牛乳」、さらにいろんなものを加えて作ったのが「加工乳」とのこと。
で、その生乳から遠心分離で脂肪分を取り出して濃縮したものが生クリームで、脂肪分が 18%以上でないと生クリームとは呼べないのだそうです。
「生クリーム」の「生」は多分原材料の「生乳」から引き継がれた命名だったんですね。そして、多分原材料の「生クリーム」から「生」を引き継いだのが「生チョコ」。
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