『<きゅんメロ>の法則』スージー鈴木(書評)
【3月29日 記】 多少とも楽器をやってきた人であれば、著者が編み出してこの本で展開している「ス式楽譜」やその説明文を読むと、ちょっと幼稚な印象を受けるだろうと思う。
でも、読み進めて行くと、スージー鈴木の知識は想像以上に広く、分析は意外に深く、その説明は非常に分かりやすいということに納得してしまう。
「Fmaj7 は F の上に Am が乗っかったもの」「Em7 は Em の上に G が乗っかったもの」などという説明の仕方も非常に良いと思う。
この本は彼が「きゅんメロ進行」と名づけたコード進行 IV → V → IIIm → VIm が J-POP においてどれだけ使われているか実例を示しながら、何故その進行がとりわけ日本人に受けるかということを切々と説いた本である。
「切々と」と書いたのは、彼のこのコード進行に対する比類なき愛情を感じるからである。
「きゅんメロ進行」はもちろんこれだけではない。この進行を基本形として、そこには当然代理コードも当てはめられるし、さまざまなバリエーションがある。
そして、そのそれぞれについて「後ろ髪進行」「おくれ毛進行」「イケイケダンス進行」「きゅーーーんメロ進行」などというネーミングがいちいち秀逸である。
巻末には『ザ・カセットテープ・ミュージック』での盟友・マキタスポーツやプロデューサー/作曲家の川原伸司との対談もあって、分析はどんどん深まって行く。
却々の力作ではないか! 音楽を理論で捉えるのが好きな人にはたまらない、これこそ好事家の書であると思う。
僕がこの本を買ったのはこの本の出版記念イベントに参加するためであった(本の予約が入場券代わりになっていた)ので、その時のこの記事
『<きゅんメロ>の法則』出版記念トークショー”<きゅんメロ>フェス”
や、別のイベントの際のこの記事
も合わせてお読みいただくと、興味が深まるかもしれない。
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