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Friday, February 09, 2024

「キネマ旬報」2月下旬号(2)

【2月9日 記】毎年恒例のキネマ旬報ベストテンの得票分析をしてみます。

キネマ旬報ベストテンは、審査員がそれぞれ合計55点を持って、1位には 10点、2位には 9点、…、10位には1点と入れて行き、その合計得点で順位が決められています。今回 2023年第97回の審査員は、前回と同じく「本誌編集部」を含めて 59名でした。

で、僕が何をやっているかと言うと、それぞれの映画の得点を、「合計点=点を入れた審査員の人数×平均得点」という形に分解してみるのです。そうすることで映画がどんな風に評価されたかの傾向が見えてくるからです。

例えば同じ 150点獲得の映画でも、一方は

(a)合計150点=30人×平均5.00点

他方は

(b)合計150点=20人×平均7.50点

だったとすると、(a) は多くの人に広く受けた映画、(b) は特定の人の心に深く刺さった映画と言えるのではないか、ということです。

これは統計学的には正しい手法ではありませんが、投票結果の上位 10本に絞ってやっている限りは、そんなに外れていないのではないかと思っています。

さて、2023年の結果は:

  1. せかいのおきく
    192点=29人×6.62点
  2. PERFECT DAYS
    188点=23人×8.17点
  3. ほかげ
    171点=25人×6.84点
  4. 福田村事件
    144点=26人×5.54点

  5. 136点=21人×6.48点
  6. 花腐し
    109点=15人×7.27点
  7. 怪物
    98点=21人×4.66点
  8. ゴジラ -1.0
    91点=14人×6.50点
  9. 君たちはどう生きるか
    78点=13人×6.00点
  10. 春画先生
    75点=14人×5.34点

去年も票が割れてバラツキが大きいと書きましたが、今回も同様の結果になっています。

まずは制作本数が増えているということなのでしょうね。前回同様1点以上入った映画は 140本近くになっていますから。

100点以上を取った作品は5本と、前回を上回りましたが、前回は『ケイコ 目を澄ませて』がぶっちぎりで 239点も取ったのに対して、今年は飛び抜けた作品がありません。

しかし、去年は票がバラけすぎて特徴が見えなくなったと書いたのに対して、今回はそれなりに特徴が出て、面白い結果になりました。

投票した審査員数の多かった順に並べると、1) せかいのおきく、4) 福田村事件、3) ほかげ、2) PERFECT DAYS となりますが、平均点の高い順に並べると、2) PERFECT DAYS、6) 花腐し、3) ほかげ、1) せかいのおきく となります。

多くの観客(この場合は審査員に限られますが)にアピールできたのが『せかいのおきく』や『福田村事件』、特定の観客に熱烈に支持されたのが『PERFECT DAYS』や『花腐し』、両者のバランスが取れていたのが『ほかげ』だと言えないでしょうか?

もう少し下位の作品を見ても面白い結果が出ています。

7)怪物は 2) PERFECT DAYS に次ぐ 21人から票を集めながら、その平均点はこの 10作品中最低の 4.66 です。つまりは「大勢にそこそこ受けた」作品ということになります。

きっちり検証はしていないのですが、是枝裕和作品でこういう傾向が出るのは珍しいんじゃないでしょうか? あるいはそれは、僕が彼がまだ無名の頃から彼の映画を見てきたからそう思うのかもしれません。

是枝監督も、知名度が上がって「大御所」になるにつれて、大衆受けする傾向にシフトしているという可能性はあります。

一方 8)ゴジラ -1.0 は、投票した審査員は 14人と、下から2番目に少ないのですが、平均点は 6.50 と上から数えて4番目です。こちらは「それほど広がりはなかったけれど熱狂的なファンがいた」ということではないでしょうか?

ちなみに 9) 君たちはどう生きるか も、これと似た傾向が出ています。

どうです? お楽しみいただけましたでしょうか?

去年は「書き甲斐のない記事になってしまいました」と書きましたが、今回のように割合はっきりと傾向が見て取れると大変面白くて、やっぱりこの分析は毎年続けようという気になります。

はい、来年もやります。

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