Netflix『アンブレラ・アカデミー』
【12月15日 記】 Netflix で『アンブレラ・アカデミー』THE UMBRELLA ACADEMY 全30話を見終わった。一番思ったのは、よくもまあ、こんなとっちらかった物語を考えたな、といういこと。
主人公はハーグリーブス家の7人きょうだい。きょうだいと言っても血が繋がっているわけではない。全員が同じ年の同じ日の同じ時刻に生まれた。それを金満家のハーグリーブス卿が養子にして(と言うより、むしろ金で買い取って)育てた。
7人にはそれぞれ異なった超能力があるが、そのうちの一人ベンはすでに死んでいて幽霊になっており、一番下(7号)のヴァーニャには何故か超能力がない、というのが冒頭の設定だ。
こういう物語では一般的にその7人がそれぞれの特性を活かして、力を合わせて悪を倒すというのがありがちなパタンだが、如何せん、この7人はそれぞれが違うことを考えて、バラバラに行動し、いざという時にみんな勝手にどっかに行っていて人数が揃わなかったり、時には殴り合いの喧嘩をしていたりもする。
起承転結の転として仲間割れによるチームの危機が描かれることはよくあるが、この物語では起から結までずっとバラバラなのだ。
そして、育ての親であるハーグリーブス卿は、この手の話では大体は慈愛に満ちた父であるか、厳しい指導者ではあるが実は子どもたちのことを心底思っているかのどちらかであるのだが、これが結構ひどい爺さんなのである。
それに加えて、5号(何故か彼だけは名前ではなく Five と呼ばれる。しかも、時間移動に失敗して彼だけは半ズボンの子供の姿をしている)の能力によって、彼らは頻繁に時間移動していろんな時代に飛んでしまう。
そんなてんこ盛りにとっちらかった設定にすると、却々物語が収束しないのである。なのに、よくもこういう駒を揃えて物語を始めようと考えたものだと感心するのである。
単なるスーパーヒーローものに留まらず、それぞれの出生の秘密が絡み、メンバー同士の、あるいは他の誰かとの色恋もあり、そのうちの何人かは敵だったりもする。
謎の「委員会」との壮絶な戦いがあり、新しい能力の覚醒や新しいセクシュアリティの発見もあり、送り込まれる殺し屋たち、飛んだ先の別の世界での自分との邂逅、タイムリープのパラドックスなどなど頭がくらくらする。
あまりにもとっちらかって、観ていて途中で分からなくなったりもしたが、あっち行ったりこっち行ったりの、そのとっちらかり具合がとても面白かったのも事実。
随分時間がかかったが 30話を堪能した。
Comments