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Thursday, November 30, 2023

Amazon の画像リンク廃止という悲報

【11月30日 記】  Amazon に切り捨てられてしまいました。

突然メールが来て、アソシエイトツールバーの「画像リンク」及び「テキストと画像」リンクを廃止すると言うのです。

やっていない方はそんなものの存在をご存じないかもしれませんが、Amazonアソシエイトに登録するとサイトの全てのページの左上部にアソシエイトツールバーというのが表示されるようになり、そこからテキスト、画像、テキスト+画像の3種類のページリンクが設定できるようになります。

例えば、僕は画像リンクを使っている(当初はテキスト+画像でした)ので、このブログで僕が書評を書いた場合、Amazon にその本が置いてある限りは右上に書籍の写真があって、それをクリックすると Amazon の商品ページに飛ぶようになっています。

それができなくなると言うのです。11/30 を以てサービスは廃止、12/31以降はリンクが表示されなくなるとのこと。

これは大変困ったことです。

もらったメールには「画像リンクを掲載されている場合は、お早めに別のリンクへの差し替えのご対応をお願いいたします」と書いてあるのですが、僕のブログには一体何百(何千?)のリンクが張ってあるのか想像もつきません。

リンクは書籍だけではないということもありますし、とてもじゃないけど全部の差し替えは無理です。従って 2024年1月以降は、僕のブログは不体裁だらけになってしまいます。

世の中には僕と同じような人がいっぱいいるはずで、今回の変更によって Amazon へのリンクが切れてしまう記事の数は何万、何十万どころではないはずです。

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Wednesday, November 29, 2023

視聴生活

【11月29日 記】  今季の視聴状況はちょっと立て込んでいる。

「10月期」というテレビの言い方で大雑把に言ってしまうが、今観ているのは(すでに最終回を迎えたものもあるが)テレビ(WOWOW含む)の G帯のドラマ3本、深夜ドラマ2本、アニメ3本の合計8本である。

主に録画、一部は配信、たまにリアルタイムで観ている。

人生で一番観ていた時期には週に8本のドラマを観ていたことがある。それと同じということになるが、当時の8番組のうちには(月~土)の NHK の朝の連続テレビ小説が含まれており、一方今見ている深夜ドラマやアニメは 30分規模なので、合計分数としては当時のほうが今より多かったことになる。

ただ、今はそれらに加えて配信オンリーのドラマがある。Amazon Prime では今レギュラーで観ているものはないが、Netflix では今期は最大3本同時に観ていた。

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Monday, November 27, 2023

『パン工場はワンダーランド』野村雅之(書評)

【11月27日 記】 この本の著者は僕の知人である。

何を隠そう、僕が住んでいるマンションの前の管理人さんだ。

僕は以前 note に『僕が人生で遭遇した最強のマンション管理人の話』という文章を書いた。

そこでは偽名になっているが、まさにその人こそがこの野村雅之さんである。

野村さんがウチのマンションの管理人を辞めて3年半ほど経つが、突然野村さんからハガキでこの本を上梓したことを知らせてきた。それで初めて、彼がその後パン工場の深夜アルバイトで食いつないでいたことを知った。

これはそのパン工場での体験記である。

いやはや、まことに野村さんらしい文章で嬉しくなってしまう。野村さんを知っている人なら間違いなく楽しんで読めると思う。

しかし、野村さんを知らない人が読んだら面白いだろうか?そんなに面白いと思う人はいないのではないかという気もする。それよりも、彼はなんでこんな本を執筆したのか、出版社はなんでこんな本を出版したのかが不思議に思えるかもしれない。

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Sunday, November 26, 2023

血圧の話

【11月26日 記】  今朝血圧を計ったら元の正常な水準に戻っていた。

こういうのを経験すると、血圧って健康状態を知るための指標としては今イチ当てにならないなと思う。なぜならここ数日高めだったのが下がったのは、病気が治癒したからではなく、明らかに CTスキャンで異常なしだったので安堵したためだと思われるからである。

「体調悪いな。何か悪い病気なんだろうか?」と思って血圧を計ってみるわけだが、実はそんな風に不安に思っているから血圧が上がっているだけかも、ということである。そして、上がっている血圧の値を見て余計に不安になる。

僕には一時かなり血圧が高かった時期があって、その頃は人間ドックなどで高めの数値が出て再計測になったりすると、「もし次で下がらなかったらどうしよう」と不安になって、2回目、3回目と計り直すたびにどんどん記録を更新したりしていた。

「白衣性高血圧」という言葉がある。白衣の医者を見ると緊張して血圧が上がるというやつだ。僕にも身の覚えがある。しかし、もう何年も通っている主治医のクリニックで計ると、慣れちゃったせいか常に正常値で、先生は「私も白衣着た医者なんですけどね」と不満そうに笑っている。そういう精神状態をとても忠実に反映するのが血圧ではないだろうか。

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Friday, November 24, 2023

#7119

【11月24日 記】  休日の夜間に診療してもらおうとするとえらいことになるという話。

11/21(火)の夜、マンションのゴミ置き場にゴミを出しに行ったとき、ゴミ置き場のドアを開けた途端に突然のめまい。転びはしなかったがよろけた。幸い数秒で収まって部屋に戻ったが、少し頭がぼんやりした感じ。眠かったので早めに就寝。

ところが、翌日目が覚めてからも断続的に強烈な睡魔に襲われる。これが丸2日続いた。そして、なんか両手に力が入らない感じ。

その辺りで気になり始めてネットで検索してみたら、めまいと眠気というのは TIA と呼ばれる脳梗塞の前兆に特徴的な症状であるとの記事に突き当たった。そしてその症状は通常48時間以内に治まるのだが、そのまま放っておくと、その後何日かの間にかなりの確率で脳梗塞を起こすとのこと。

そして、11/23(木・祝)の夜後頭部にうっすらと、頭痛というほどのものではないのだが、ちょっと痺れるような感じがしてきて、さすがに不安になってきた。しかも、夜になると、最初のめまいから 48時間が過ぎて、嘘みたいに眠気がなくなっているではないか!

とは言え、そんな時間に診てくれる専門医はおいそれと見つからない。それで、ネットで医師に相談できるサイトに電話をした。

看護師が出てきていろいろと症状を告げる。「手足に痺れはありますか?」と訊かれて、上述の通り力が入らない感じがあったので「あります」と答えたら、「では、医師と相談します」と言ってしばらく待たされた後、「今すぐ救急車を呼んでください。当方では対応できません」との答え。

しかし、倒れてもいないのに救急車は来てくれるのだろうか? そこで救急相談センター #7119 にダイヤルした。ここは救急車を呼ぶかどうか迷ったときに相談に乗ってくれるところである。

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Tuesday, November 21, 2023

iOS 17.1.1 の怪

【11月21日 記】 以下は facebook に書いた記事なのですが、PC や iPhone の不具合(と解決策)については備忘録としていつもこのブログに書き残しているので、ここにも転機しておきます(以下若干加筆修正してコピペ)。

iOS をアップデートしたら、iPhone の(ロック画面ではなく)ホーム画面の壁紙を設定するところがなくなっていることに気づきました。

「設定>壁紙」には、前みたいにホーム画面とロック画面に分けた設定ができるようにはなっていなくて、現在ロック画面の壁紙にしている画像だけが登録されています。ではホーム画面の壁紙はどこで設定するのでしょう。

「設定>壁紙」に現在ホーム画面の壁紙に使っている画像を「+新しい壁紙を追加」で入れて、それを「現在の壁紙に設定」したら、ロック画面の壁紙まで同じになってしまいます。

もう2つを別々に設定できなくなってしまったんですかね? でも、現状では2つ別々に設定されています。

どうなってるの?

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映画『法廷遊戯』

【11月20日 記】  映画『法廷遊戯』を観てきた。

全くマークしていなかった映画なのだが、深川栄洋監督ならまあ面白いかな、と(もっとも深川監督が特に好きというわけでもないが)。

それだけで見に行ったので、どんな内容なのかは全く知らなかった。こういうのをリーガル・サスペンスと言うのだろうか。原作の小説がある。随分と込み入った話である。

法都大学法科大学院の同級生である馨(北村匠海)、セイギ(永瀬廉)、美鈴(杉咲花)の3人。馨は在学中にしてすでに司法試験に合格している。

まずはセイギが過去に殺人未遂事件を犯していたことが暴かれる。そして、美鈴も何者かに脅されている。その裏には複雑な事件があった。それが少しずつ明らかにされて行く。

冒頭のシーンは学生たちが興じている「無辜ゲーム」。自分たちの身の周りの実際の揉め事を題材にして疑似裁判をやろうというものだ。

ここで最初にゲームに負けるのが藤方(戸塚純貴)だ。この戸塚の演技が何とも言えず大げさで芝居がかっていて、いきなりげっそりしてしまった。戸塚はもっと肌理の細かい演技ができる役者なんだけどな。

歌舞伎じゃないんだから、芝居じみた芝居をしてはいけない。どうしてこんな演出をしたんだろう?と思ったのだが、その疑問と違和感は杉咲花にもついて回り、結局最後まで続いてしまった。

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Monday, November 20, 2023

『つまくんといっしょ』緒真坂(書評)

【11月20日 記】 この本はそこら辺の本屋では売っていない。所謂自費出版である。しかし、Amazon には置いてある。昔はそんなことは考えられなかったが、そういうことができる時代になったのである。

著者の名前は「いとぐち・まさか」と読む。僕がこの人を見つけたのは note である。目の付け所、表現ともにちょっと面白いと思ってフォローするに至った。

日芸出身で大学時代から小説を書いていろんな賞にも応募したが「佳作止まり」で、賞レースはもう諦めて、今は仕事をしながら小説を書き、このような形で出版を重ねているらしい。note には結構フォロワーもいて、「スキ」も集めている。

我が家からほど近い公民館的なところで講演をするというので聴きに行ったりもした。パワポを見せながら用意した原稿を読むというスタイルだったが、そこそこ面白かった。そして、帰りにそこで販売していたこの本を買った。

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Sunday, November 19, 2023

三宅香帆と映画『ゴジラ -1.0』の追々々記

【11月19日 記】  このところ僕のブログと note は、三宅香帆の記事と映画『ゴジラ -1.0』の記事が非常に多くなっているのだが、三宅香帆が映画『ゴジラ -1.0』について note に書いた記事を読んでこの2つが繋がってしまい、また書かざるを得ない気分になった。

この三宅香帆の分析がまたしても見事なのである。

有料記事なのであまり内容を書きすぎてもいけないのだが、彼女は「戦後」がファンタジーの舞台になってしまっていると指摘しているのである。同じような例として、福原遥が扮した女子高生が戦時中にタイムスリップして特攻隊員と恋をする映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』を挙げている。

「ファンタジーとして機能している」とはどういうことかと言えば、第二次世界大戦が遠い昔の歴史物語として扱われているということだ。

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Friday, November 17, 2023

『アポロ18号の殺人』クリス・ハドフィールド(書評)

【11月17日 記】 この本をどこで知ったのだったか? 多分シミルボンで誰かが書いていた書評を読んだのだと記憶しているのだが、シミルボンが跡形もなく消えてしまった今となっては確かめようもない。

この小説の一番のミソは著者が本物の宇宙飛行士であったということである。

月面に着陸こそしていないが、3度も宇宙に出ている。アメリカのスペースシャトルで2度、ロシアのソユーズ宇宙船で国際宇宙ステーションに渡り、そこで半年ほど滞在している。

そういう著者であるからこそ書けること、そういう著者でなければ決して知り得ないし語り得ない情報がこの小説には満載である。

もちろんここで描かれている宇宙や科学技術に関する諸々はとてもじゃないが難しすぎて、一般人である我々、特に SF小説にもほとんど接してこなかった僕などにはほとんど理解できない。仮に著者が多少の嘘を交えて書いていてもそれを見破る術はない。

でも、それはそれで良いのである。

著者は間違いなく、本物の科学理論や史実に自分の夢や空想を織り交ぜながら物語を展開している。でも、重要なのはどこまでが事実でどこからが事実でないのかを確かめることではない。これだけ微に入り細を穿った描写を、これだけ深い分析と必然性を、これほどまでの大量の文章で描けるということこそがこの小説の真骨頂なのだ。

そう、この分量こそがリアリズムを呼び覚ましている。

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Wednesday, November 15, 2023

こんなところに行ってきた。

【11月15日 記】 こんなところに行ってきた。

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Sunday, November 12, 2023

追々記:映画『ゴジラ -1.0』

【11月12日 追々記】 たまたま note や他のサイトで『ゴジラ -1.0』のレビューをいくつか読んでみたら、あまりに多くの異なった感じ方や評価に出くわして、ちょっと頭がクラクラしてきた。

いや、多様な感じ方や評価があることは間違いなく良いことであって、「こうでなければならない」「こうであるべきだ」というようなことはない。

しかし、それにしても、である。

それにしても「君はそんなところに引っかかって、この映画を評価できないのかね?」と言いたくなるような文章がたくさんある。あまりにたくさんあるし、それぞれがあまりにバラエティに富んでいるので、いちいちここで何がどうであると書き始めるときりがないので書かないけれど、しかし、それにしても、なのである。

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Saturday, November 11, 2023

【note】茶化す、という親密性について考える

【11月11日 貼】 また note に書いた記事を貼っておきます。

note に何か書いたら必ずここに貼っているわけではなく、よく書けた自信作だけをここに貼っているわけでもなく、まあ、その辺はいい加減です。

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Wednesday, November 08, 2023

追記:映画『ゴジラ -1.0』

【11月8日 追記】  僕は昨日観た『ゴジラ -1.0』で、ゴジラが立ちすぎているのが気に入らないと書いたが、パンフレットに載っているインタビューの中にそのことに触れた部分があった。

山崎貴監督はこう言っている:

僕は首が立ってないと日本のゴジラにならないと思うんです。ハリウッドのゴジラは前傾姿勢で戦う気満々だけれど、日本のゴジラは半分神様だから、基本的には直立している。それでいて人間のようには見えないように、足は獣脚にしました。

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Tuesday, November 07, 2023

映画『ゴジラ -1.0』

【11月7日 記】  映画『ゴジラ -1.0』を IMAX で観てきた。1_20231107234201

山崎貴監督については、最初に観た彼の監督作品の印象がとても悪くて(それが何の映画だったか記憶が定かでないのだが、自分のデータベースに残っていないということは、多分映画館ではなくテレビで観た作品だ)、それ以来僕は彼のことを基本的に CG の専門家でしかないと思ってきた。

悪しざまに言うと、「お前は CG だけやってろ!」って感じかな。

それでも僕は彼が演出に絡んだ(共同監督なども含む)映画をこれまで 10本も観ており、ここ何作かでは特に落胆したなんてことはなかったのも事実ではあるが、でも、最初の印象があって、やっぱり彼を「CG屋」という印象で捉えてきたのも確かである。

ゴジラを撮ったことがあるアメリカの何とかいう監督が山崎貴と対談した映像(宣材として TOHOシネマズで流れている)の中で、今回の映画のことを emotional な作品だと言っていたが、確かに非常に emotional な作品だった。

僕はゴジラ作品をあまりたくさんは観ていないが、なるほど、こういうゴジラもあったのかと、今回は大いに納得した。設定としては随所に(特に無理やり民間にゴジラを退治させようとしたところに)無理があったと思うが、進行は非常にスムーズで、よくできた脚本だと思った(山崎監督のクレジットは「監督・脚本・VFX」)。

造形的に気になったのは、ゴジラがあまりに立ちすぎている感じがしたこと。天に向かってあまりにすっくと立ち、如何にも直立歩行という感じになると、どうしても「着ぐるみ感」が出てしまう。

今回は着ぐるみなんか使っていないだろうから、こんなに立たせる必要はなかったはずなのだが、どうしてこうしたのだろう? あのバカでかい足とのバランスの問題とか?

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Sunday, November 05, 2023

あ、お母さんから電話だ

【11月5日 記】  ずっと気になってることがあるんです。

テレビドラマや映画でスマホに電話がかかってくるシーン。主人公がスマホを見ると、画面に「母」とか「お兄ちゃん」などという文字が出ます。──そういうシーンしょっちゅう見るでしょ?

みんなほんとにあんなことやってる?

僕は妻も姉も、親しい人も親しくない人も全員フルネームで「連絡先」に登録しています。だから、画面に「お母さん」とか「お兄ちゃん」みたいな続柄が表示されることは一切ありません。それどころか、いくつもある自分のアドレスなども自分のフルネームで登録しています(ま、iPhone だと「自分」と表示されてしまいますけど)。

それは、例えば僕が電話を受けたときに誰かが横から覗き見してたりしていて、電話をかけてきた人物と僕との関係をその部外者に読み取られたりしたくないからです。

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Friday, November 03, 2023

『ヒトラーはなぜ戦争を始めることができたのか』ベンジャミン・カーター・ヘット(書評)

1103日 記】 前にこのブログに書いたように、この本を読み始めたのは訳者が僕の会社の同期の寺西のぶ子さんだったからだ。

彼女からの誘いを受けて彼女が登壇したトーク・ショーも聴きに行くことになり、できればそのイベント本番までに読了したかったのだが、そこから半月以上かかってしまった。

なんと言っても 500ページに迫る大著である。しかも、それほど易しい内容でもない。とてもしんどい読書体験だった。読んでいる最中に何度寝落ちしたか分からない(笑)

この本は同じ著者による3部作の第2部に当たるのだそうで、最後の第3部はまだ執筆中らしいのだが、前作『ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか』(これも寺西のぶ子訳、僕は読んでいない)は、読んだ人によると、描かれている地域が我々のよく知らないドイツに限られていて、登場する人物もテーマも非常に限られたものであって、今作以上に読むのがしんどかったとのことである。

それに対してこの本ではドイツだけではなく、ドイツと敵対したイギリスやアメリカ、フランスのみならず、ドイツに征服されたチェコやポーランドのほか、ドイツの同盟国であったイタリアなどもところどころで扱われ(舞台はあくまでヨーロッパに限られていたので、日本についてはほとんど触れられていない)、チェンバレン、チャーチル、ローズヴェルト、ムッソリーニなど、僕らが歴史の授業で習うなどして多少は知っている人物が結構出てくる。その分、前作よりは遥かに読みやすいのだということは僕にも察しがつく。

加えて、この本は決して学術研究書のような書き方はせずに、各章の最初に当時の時代背景が分かるような、言わばエピソード的な記事を並べて、読者の興味を惹き、かつ読者の理解を助ける構成にしてある。

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Wednesday, November 01, 2023

映画『愛にイナズマ』

【11月1日 記】  映画『愛にイナズマ』を観てきた。石井裕也監督作品を初めて観たのは 2010年の『川の底からこんにちは』だが、あの時の衝撃が甦ってきた。まさに稲妻に打たれたみたいに。Photo_20231101195101

圧倒的な会話劇である(と言っても、無駄に会話ばかりで進行するわけではない)。

最初に4:3の画面が映るが、これは主人公の映画監督(の卵と言うべきか)の花子(松岡茉優)が撮ったという想定で、その後何度も出てきて、途中で正夫(窪田正孝)が撮ったものも混じってくる。

赤い服のカップルをカメラを持った花子が何故追ったのか、その時点では意味が分からなかったが、何かと思い入れの強い花子は赤色が好きで赤色にこだわっていることが後に分かる。何故赤が好きなのかについては特に理由はない。理由のないものは世の中にいっぱいあると彼女は思う。

そんな花子に対して、意味と理由がないものは映画としての説得力に欠けるなどと偉そうに言って、頑として認めようとしないのがベテラン助監督の荒川(三浦貴大)。一見その荒川と花子の間に入って関係をとりなしているように見えながら実は全く責任感のないプロデューサーが原(MEGUMI)だ。

花子は荒川と対立するが、キャリアも自信もなく、結局ヘラヘラしてしまう。荒川はそこにつけこんで、さらに花子を追い込む。人を馬鹿にした荒川の話しっぷりは聞いているだけでむかつく。結局花子の企画は最終的に彼らに乗っ取られてしまう。

だが、その前に花子は正夫が殴られるのを目撃する。精肉加工所でバイトをしている、アベノマスク着用者(笑)

喧嘩の仲裁に入って殴られ、小さなアベノマスクが真っ赤な血に染まる。その後花子が行ったバーに新しいアベノマスクに着替えた正夫が偶然いたのだ。話をしてみたら、正夫は全く空気というものが読めないまっすぐな青年で、お互いに少し変わり者のふたりはなんだか妙に惹かれ合う。

このふたりのちょっとズレたおかしな会話がなんと愛おしいことか!

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