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Saturday, October 14, 2023

『ヒトラーはなぜ戦争を始めることができたのか』刊行記念トークショー

【10月14日 記】  清澄白河の Books & Café ドレッドノートで『ヒトラーはなぜ戦争を始めることができたのか』刊行記念トークショーを聴いてきた。

ベンジャミン・カーター・ヘットによるこの本の翻訳者が、僕の勤めていた放送局の同期入社で、今は翻訳家になっている寺西のぶ子さんだという繋がりである。彼女の翻訳を読むのは大ヒットした『英国一家、日本を食べる』以来2冊目である。

登壇したのは彼女の他に、この本の監修を務めた神戸大学大学院の衣笠太朗氏と出版社である亜紀書房の担当者・西山大悟氏である。

のぶ子さんに「どうしてこの店を選んだの?」と訊いたら、この店のほうからオファーがあったとのことで、どうやらこの店ではこういうイベントをよくやっているようだ。

その際の司会はいつも店主(名前は憶えていない)が務めるようなのだが、このおっさんが、どうも最初は戦車マニアみたいなところから始まって、次第に戦争に、そして歴史全体にと興味を広げていった人のようだ(「ドレッドノート」という本屋らしくない店名と置いてある蔵書のラインナップがそれを物語っている)。

これが却々押しの強い、思い込みも激しそうな、めちゃくちゃねちっこいおっさんで、最初はそれが少し気に障ってどうなることかと気を揉んだが、進むに連れて皆少しなごんできた。

この著者によるこのシリーズは『ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか』(これも寺西のぶ子・訳)に続く2冊目で、3冊目は鋭意執筆中とのこと。

何しろ分厚い本なので僕はちょうど半分ぐらいまでしか読めていない状態でトークショーを聴きに行ったのだが、充分楽しめた。今まで翻訳家が書いた本は何冊か読んだことがあるが、翻訳家がほぼ単一の本に絞って語るのを聴くのは今回が初めてだったし。

全部読んだ人によると、『ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか』はテーマもやや狭くて却々読みづらい本であったとのこと。2冊目のこの本では、我々が歴史の授業などで習って名前を知っている政治家(ドイツだけでなく米英など)もたくさん出てきて、読みやすいとのこと。

僕も、一緒に行った友人も、読んでいる最中に何度も寝落ちしてはいるものの、しかし、日本語訳としては大変こなれた読みやすい文章だと思う。

のぶ子さんによると、2冊目が読みやすくなったのは、今回は時間があって何度も推敲する余裕があったということもあるが、著者自身が上達し、どう書けば読んでくれるか、どう書けば読みやすいかを掴んできたという面も多分あるとのこと。

彼女は請負仕事で翻訳をする人ではなく(もちろんそういう仕事もしてはいるだろうが)、翻訳されずに埋もれている作品を自分で探してきて出版社に売り込むような仕事をしてきた人だ。この本も彼女と出版社とどちらが先に目をつけたかはともかくとして、そんな感じの作品のようだ。

今回のイベントでは監修者の衣笠先生による解説や、出版社の西山氏による出版に至る経緯の話もあって、非常に面白かった。とりわけ、コロナ禍によって監修者探しがはかばかしく進まなかった時に、twitter で「若くて優しそうな」衣笠先生を見つけて一本釣りしたという話には笑った。

読み終えたらまたここに書評を載せたいと思っている。

なお、せっかく清澄白河に行ったので、トークショーに行く前に東京都現代美術館に寄って、デビッド・ホックニーと横尾忠則を観てきた。

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