にっかつロマンポルノ『感じるんです』
【9月28日 記】 WOWOW から録画しておいた『感じるんです』を観た。にっかつロマンポルノである。
ポルノと言っても昨今の AV に比べると表現は格段にマイルドである。しかし、映してはいけないところをどうやって隠すか、とか、台詞回しでどうやって妄想を掻き立てるか、とか、そういうところに心血を注いでいるのが、却ってエロい効果を出していたりもする。
年代的に全くご存じない方もおられるかもしれないので書いておくと、にっかつロマンポルノというのは、どんどん斜陽になった日活が一発逆転を狙って路線転換した産物である。低予算+短期間撮影の量産体制に入り、大体は2本建てか3本建てで上映されていたと思う。
しかし、その量産体制のお陰で若手監督がどんどん起用され、今では日本を代表すると言っても良いような数多くの名監督を輩出している。これまたご存じない方のためにほんの少しだけ紹介しておくと、初期では神代辰巳や曽根中生、後期には根岸吉太郎、金子修介、石井隆らがロマンポルノ出身である。
あ、あとあまりに多いのでもう例は挙げないが、日活ロマンポルノから転じた名女優もたくさんいる。
この『感じるんです』は 1976年の作品だが、僕が観たのは多分 1977年だったのではないかと思う。場所は豊中パールという二流館だった。
調べてみたらどうやらこれが僕が生まれて初めて観た18禁映画だったようだ。あまりに好きすぎて、時を措かずもう一度見に行った記憶がある。2度とも併映の作品には目もくれず、ただこの映画だけを観てさっさと帰ってきた記憶がある。それほどに思い入れのある映画だった。
さて、四十数年ぶりに WOWOW で観てみたら、僕にしては珍しくいろんなシーンが蘇ってくる。オープニングのハンモックのシーンはカメラ・アングルまで含めて完璧に憶えていたし、初めのほうのシーンで主人公じゅん(泉じゅん)の弟が「黒い花だね」と言った台詞も鮮明に憶えていた。
何がそんなに好きだったかって、やっぱり泉じゅんである。可愛い。いや、令和の可愛さの基準で言うとそれほど可愛くないかもしれない。中にはブスだと言う人もいるだろう。でも、これが昭和50年代の可愛さだったのだ。
で、にっかつ作品は他社の「ピンク映画」と違って、セックス・シーンの間に無理やり短い展開を繋いだような構成ではなく、ちゃんとストーリーがあり、ロマンがある。だからロマンポルノなのだ。
そして、どの作品も大抵コミカルな味付けをところどころに挟んでいる。
男性がすぐにイッてしまうというのはロマンポルノの定番ではあるが、それに加えてこの映画で言うと、じゅんの親友のパン子(水城ゆう)の兄(小見山玉樹)である。
牛乳瓶の底みたいなメガネを掛けて、24歳だけれどキスもしたことがなく、でも、全くひるむことなくじゅんのあそこにキスさせてほしいなどと迫る。このキャラが歩き方ひとつにしても笑える(なんでクラシック・ギター抱えてんねん?)。
びっくりするほどあっさりした終わり方を含めて、大変よくできた映画だと思う。
俳優たちはむしろ下手だし、あまりに他愛ない話ではあるが、時間はかけずともアイデアを凝らして、そこそこ表現が練ってあるから、今見ても(というのは、令和の今見ても+この年になっても)結構コーフンしてしまった(笑)
監督は白鳥信一。この人は一般映画には転じなかったようだが、にっかつでは宇能鴻一郎ものなどで鳴らした人である。
この作品がデビュー作となった主演の泉じゅんについては、てっきり僕はこの作品だけで消えてしまったのだと思っていたのだが、ウィキを見たら1989年まで現役だったようだ。他の作品も観てみたくなった。
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