富田望生
【6月19日 記】 富田望生という女優がいる。名前はミウと読む。2000年2月25日生まれ、まだ 23歳だ。
僕が初めて彼女を見たのは映画『ソロモンの偽証』(宮部みゆき原作、成島出監督、2015年)だったが、これがデビュー作とは知らなかった。
ある雪深い朝、主人公の藤野涼子(藤野涼子──彼女もこれがデビュー作で役名をそのまま芸名にした)が同級生の柏木が校舎脇の雪の中で死んでいるのを発見する。それは事故ではなく不良の大出(清水尋也)が殺したのだという嘘の告発状を送ったのが三宅樹里(石井杏奈)と浅井松子で、この松子を演じたのが富田望生だった。
可愛いけれどニキビに悩む樹里や優等生で裕福な家庭の娘である涼子とは違って、松子は極めて庶民的な家庭に育ったちょっと太めの、コンプレックスいっぱいで友だちの少ない女の子である。その役柄は結構強烈だったので印象に残っている。
ちなみに同じ小説が今度は WOWOW で 2021年にドラマ化されたが、ここでも富田望生が同じ松子役を演じたので、その印象はますます強くなった。ちなみにこの時の藤野涼子役は上白石萌歌、三宅樹里役は山本舞香だった。
僕は映画版で富田望生を初めて見た時に、印象は強かったがあくまでこういう特殊な役柄を演じただけであって、そのうちに消えてしまうだろうと思った。
ところがその後、彼女はちょっと太めの女の子役で、次々と映画やテレビに出始めたのである。考えてみればクラスに(あるいは近所に)ひとりぐらいはこういう太めで気立てが良くてちょっとトロい感じの女の子はいるもので、そういう役柄では他に人材がいなかったこともあって引っ張りだこになったと言える。
僕が観た作品では、映画では
- 『モヒカン故郷に帰る』(2016年)
- 『チア☆ダン』(2017年)
- 『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018年)
- 『町田くんの世界』(2019年)
- 『老後の資金がありません』 (2021年)
などがある。特に『チア☆ダン』での、デブで下手くそなチアリーダー役で、ずっこけたダンスを披露していた彼女は印象に残っている。
一方、テレビではついに今年の3月に NHK BS で『富田望生の日日是芸術』というドラマで本人役で主演を果たしている(これは僕は観ていない)。
そして最近では、今も放送中(もうすぐ最終回)の NTV『だが、情熱はある』での、南海キャンディーズの山崎静代役が本当に秀逸である。僕は静ちゃんの役を一体誰がやるんだろうと思いながらこのドラマを観ていた(最初のころの回には登場しない)のだが、富田望生が出てきて「なるほど!」と膝を打ったのである。
見事に山崎静代に似せているというところもあるが、演技そのものが一級品である。
先日テレビを見ていたら、彼女がバラエティ番組のゲストで出演しており、「カメレオン女優」と紹介されていたので、おお、今ではそんな異名を取るほど評価されているのか!と驚いた。
そして、話を聞いていると、彼女はデビュー前から太っていたわけではなく、撮影前に監督から「もうちょっとぽっちゃりしてほしい」と言われてそこから 15kg 増量したのだそうだ。
番組の司会者から、「太るということに抵抗はなかった?」と聞かれて、「演技できるのが嬉しくて、そういうのは全くなかった」みたいな答えをしていた。15歳にしてあっぱれな女優魂ではないか!
そういうわけで彼女は僕の予想に反してしっかり生き残っている。
僕がひと目見て「この娘はスターになる」と思った女優が本当にスターになったというケースは結構ある。逆に「この娘は消えちゃうだろうな」と思ったのにしっかり生き残り、しっかりメジャーになったという例も決して少なくない。
後者の例を目にすると本当に祝福したい、嬉しい気持ちになる。富田望生の今後の活躍を祈りたい。
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