映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
【6月8日 記】 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』を観てきた。
原作は荒木飛呂彦の大ヒット長編漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンアウト作品。後に NHK でドラマ化もされている。今回はその NHKドラマの劇場版である。
僕はいずれも観て(読んで)いないので、普段はこういう映画は観ない(観ても分からないんじゃないかと思うから)のだが、似たような条件で観たにも関わらずしきりと褒めている知人がいて、少し気になって観に行った次第。
一応観る前に岸辺露伴は人気漫画家で、人間の心の中や記憶を書物に変えて読むことができ、そこに書き込むこともできるという特殊能力の持ち主であることだけは予習しておいたのだが、それは冒頭の骨董屋のシーンで一気にさらっと説明してくれた。
岸辺露伴に扮した高橋一生がかなり作った、と言うか芝居がかった喋り方をしている。そのお供役の編集者・泉京香役の飯豊まりえが軽くてバカっぽい喋り方でコントラストをつけている。超能力の岸辺に対しておバカな免疫力とでも言うべき京香が面白い。
その2人が、とある日本人画家が描いたこの世で最も黒い絵を求めてルーヴル美術館に行く話である。
で、何かびっくりするような特別な仕掛けがある映画かと思ったら、そうではなかった。複雑で綿密なトリックが仕込まれたミステリというわけでもないのである。
ただ、世界観があまりに濃密なのと、最後まで見ないと何のことだかよく分からない構成になっていることもあって、最初はこの独特の世界にちょっと入って行きづらかった。だが、最後まで見て話が繋がると、ふむ、これは却々雰囲気のある映画だなと思った。
露伴の住む洋館っぽい家、古い時代の場面で映し出される古い日本家屋、そして近代的なルーヴル美術館入り口のガラス張りのピラミッドと内部のヨーロッパ美術世界、地下にある薄汚れた貯蔵室など、いずれも非常に雰囲気のある画である。
そんな舞台で結構血生臭い事件も起きるのだが、それに淡々と対処して行く岸辺露伴のキャラが受けたのかな、などと考える。
エンドロールで EP に豊島雅郎さんの名前がクレジットされているのを見て、ああ、この映画は NHK ではなくアスミック・エースが製作幹事なのだと知った。最近は結構目利きの会社というイメージが強い。
ちなみにスチル・カメラマンには鈴木さゆりさん。僕がかつて勤務していた放送局の番組でもめちゃくちゃ美しく芸術的な写真をたくさん撮ってくれた人だ。それを知ると、確かにこの映画は鈴木さんがスチルを撮るに相応しい作品だなという気がしてきた。
大きな興奮や感動はない。でも、全体的にクオリティ・コントロールの効いた良い映像作品だったと思う。
調べてみたら Amazon Prime でテレビ版3シーズン合計8エピソードが配信されている。観たら嵌まるかもしれない。
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