映画『宇宙人のあいつ』
【5月23日 記】 映画『宇宙人のあいつ』を観てきた。最初に予告編を見たときにはあまりにバカバカしい設定で、全く観る気は起こらなかったのだが、飯塚健が監督・脚本だと知ったら話は別だ。僕はこの監督にはそれくらい入れ込んでいる。
実際観てみたら断然面白かった。ギャグ映画なんかじゃなかった。設定はむちゃくちゃながら結構ハートウォーミングな家族の物語ではないか!
高知県土佐市で4人のきょうだいが暮らす真田家。
長男の夢二(日村勇紀)は亡き両親が残した焼肉屋を継いでいる。次男の日出男(中村倫也)も焼肉屋を手伝っている。長女の想乃(伊藤沙莉)はモテない、と言うか男運の悪い31歳。ゴミの集積所でゴミの仕分けの仕事をしている。三男の詩文(柄本時生)はガソリンスタンド勤務。
しかし、実は日出男は23年前に調査のために地球にやってきた土星人で、そのことを知っているのは亡くなった両親と夢二だけだった。下の2人は記憶を消されたこともあって、そんなことは全く知らずに実の兄だと思っていた。
その日出男が土星の1年(地球に換算すると 23年)の任期が終わって土星に帰ることになった。それを夢二が朝食の席で下の2人に明かすところからストーリーは始まる。
毎日の朝食の席での儀式めいたルーティンとか、その席で4人のうちの誰かが議題を持ち出す「真田サミット」とか、想乃の同僚・あかり(関めぐみ)の娘の不思議な能力と物言いとか、何があろうとも毎日焼肉を食べに来る常連客・望月(山中聡)とか、とにかく如何にも飯塚監督らしい微妙におかしいシチュエーションがふんだんに用意されている。
台詞回しも微妙におかしいのだが、とりわけ伊藤沙莉はまだ無名の頃からずっと飯塚監督が使い続けてきた役者だけあって、飯塚健の脚本のリズムを完璧に掴んでいて、飯塚健ファンにはたまらない感じである。
この映画はテレビで『荒川アンダー ザ ブリッジ』や『REPLAY&DESTROY』、『ランドリー茅ヶ崎』などを撮っていた頃の飯塚監督のテーストで、久しぶりにこの感じ、長年のファンとしてはめっちゃ嬉しかった。
パンフを読むと、監督自身も「比較的真面目な映画が続きそろそろドラマ『REPLAY&DESTROY』みたいなノリの作品がやれたらと考えていた」と言っている。
そう言えば中村倫也も『REPLAY&DESTROY』に出演していた。あの頃は下手くそな役者だなと思ったが、良い役者になった。とりわけ今回みたいに謎の宇宙人みたいな役柄は彼にぴったりだ。
そして、何と言ってもバナナマンの日村。──彼の起用は大正解だった。
他には関めぐみがいたり、井上和香(飯塚健夫人)が鰻の声を担当していたり、飯塚組結集の感じがあり、ぶっ飛んだり透かしたりの内容もまさに飯塚健ならではのもので、もうお腹いっぱいである。
結構長いカットを多用して(撮影は相馬大輔)、役者たちのニュアンスたっぷりの芝居をしっかり見せてくれた。部屋や焼肉店などの美術も効果満点だった。
久々に飯塚健ワールドを満喫して文句なし! 満足度 100%である。
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