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Tuesday, May 30, 2023

はてしないトイレ談義(8) ~All-Gender Restroom For Everyone

【5月30日 記】 トイレについてはこのブログにも随分いろいろと書いてきました。ここまで書き連ねてきたものについては『果てしないトイレ談義』という共通タイトルでひとつにまとめて別立てにしてあります。

そして、また久しぶりのトイレ談義です。多機能トイレってあるじゃないですか。少し前までは多目的トイレという言い方もありました。この名前、どう考えてもとても変ですよね?

多機能(あるいは多目的)って、うんことおしっこと、それから何ができるの?──みたいなことを僕は以前の記事に書いています。いや、分かるんですよ、これは障碍のある人のためのトイレだって。でも、それを多機能とか多目的とかマルチユースとか言うかな?って感じです。

おまけに、トイレの前でよく音声ガイドが流れていて、例えば「向かって右が男子トイレ、左が女子トイレ、左奥が多機能トイレです」などと言っているのですが、これが何度聞いても「左奥が滝のおトイレです」に聞こえてしまいます。流そうとしたら頭から水を被るのではないかと心配になります(笑)

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Saturday, May 27, 2023

映画『波紋』

【5月27日 記】 映画『波紋』を観てきた。荻上直子監督には最初の頃は熱中したのだが、ある時期からこの映画作家はダメだと絶望して、それ以来全く観ていなかった。

何に絶望したかと言うと、この人はいつも人の悲しみを描いているようで、それが何の悲しみなのか、過去に一体何があったのかということを具体的かつ明確に描かないまま、なんか仲間たちと触れ合っていると、あらあら不思議、それがちょっぴり癒やされました、みたいな作りをしていると思ったからだ。

それは観ている人々に全く根拠のない希望を与えてしまうことになる。それではダメだと思った。げっそりした。むかっ腹が立った。まるでインチキな新興宗教みたいな手口ではないか。

前作『川っぺりムコリッタ』は随分評判が良かったのでよっぽど観てみようかと思ったのだが、やっぱり今までと同じような映画なのではないかという思いが拭えなくて、どうしても見に行けなかった。その後 WOWOW で放送した際に録画もしたのだが、どうしても観る気にならず、結局消してしまった。

それほど絶望していたのである。

それが今回は少し風合いが違うような気がしたのだ。奇しくもインチキな新興宗教が描かれた映画だ。実に『トイレット』以来 13年ぶりに映画館で観た荻上作品である。

で、果たして、観てみると、それはニュー荻上直子だった。いや、13年も観ていないわけだからそんなことを言う根拠も資格もないし、そもそも 13年も経てば誰だって変わるだろうと言われるだろうが、少なくともそこにあったのは僕が長らく忌避していた荻上直子ではなかった。

しかし、それにしてもこの映画はさながら筒井真理子ショーだった。

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Friday, May 26, 2023

あいみょんとユーミン

【5月26日 記】 もう何ヶ月も前に facebook で読んだ知人の記事がいつまでも心に引っかかっている。

彼はシンガーソングライターのあいみょんが好きらしいのだが、彼女を褒めるだけでは事足りなかったのか、「ユーミンを超えた!」と書いていたのだ。

そんなこと書くか? というより、その2人を比較するか? ──そこがどうしても僕には理解できない。あいみょんと松任谷由実を並べて論じようとする感性が理解できない。音楽性に共通点が少なすぎやしないか?

あいみょんとユーミンはキダ・タローとモーツァルトぐらい違う、とまでは言わない(キダ・タローとモーツァルトでは天と地ほどの隔たりがあるからこそ、キダ・タローが「浪速のモーツアルト」と自称していることがギャグになるのである)。

そこまでかけ離れているとまでは言わないが、逆に彼にとっては並べて比較したくなるほど近いのか? 僕からすると、そこが根本的に解せない。

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Tuesday, May 23, 2023

映画『宇宙人のあいつ』

【5月23日 記】 映画『宇宙人のあいつ』を観てきた。最初に予告編を見たときにはあまりにバカバカしい設定で、全く観る気は起こらなかったのだが、飯塚健が監督・脚本だと知ったら話は別だ。僕はこの監督にはそれくらい入れ込んでいる。

実際観てみたら断然面白かった。ギャグ映画なんかじゃなかった。設定はむちゃくちゃながら結構ハートウォーミングな家族の物語ではないか!

高知県土佐市で4人のきょうだいが暮らす真田家。

長男の夢二(日村勇紀)は亡き両親が残した焼肉屋を継いでいる。次男の日出男(中村倫也)も焼肉屋を手伝っている。長女の想乃(伊藤沙莉)はモテない、と言うか男運の悪い31歳。ゴミの集積所でゴミの仕分けの仕事をしている。三男の詩文(柄本時生)はガソリンスタンド勤務。

しかし、実は日出男は23年前に調査のために地球にやってきた土星人で、そのことを知っているのは亡くなった両親と夢二だけだった。下の2人は記憶を消されたこともあって、そんなことは全く知らずに実の兄だと思っていた。

その日出男が土星の1年(地球に換算すると 23年)の任期が終わって土星に帰ることになった。それを夢二が朝食の席で下の2人に明かすところからストーリーは始まる。

毎日の朝食の席での儀式めいたルーティンとか、その席で4人のうちの誰かが議題を持ち出す「真田サミット」とか、想乃の同僚・あかり(関めぐみ)の娘の不思議な能力と物言いとか、何があろうとも毎日焼肉を食べに来る常連客・望月(山中聡)とか、とにかく如何にも飯塚監督らしい微妙におかしいシチュエーションがふんだんに用意されている。

台詞回しも微妙におかしいのだが、とりわけ伊藤沙莉はまだ無名の頃からずっと飯塚監督が使い続けてきた役者だけあって、飯塚健の脚本のリズムを完璧に掴んでいて、飯塚健ファンにはたまらない感じである。

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Monday, May 22, 2023

友だち論

【5月22日 記】 みんなそうだと思うのだが、我々は長い人生で、恋愛相手も友だちも随分ととっかえひっかえやってきた。

恋愛の相手に関して言えば、好きになって、そのあとうまく行けば恋人になり(結婚する場合もあるが)、そのあと破局を迎えて、暫くして次の恋をする──という割合同じことの繰り返し(うまく行けばどこかでその繰り返しを阻止できる)だが、友だちのほうはもう少しバリエーションがある。

幼い頃からずっと続いている友だちもいれば、最近できた友だちもいる。前から知ってはいたが全然親しくなかったのに急に親しくなった友だちもいる。あれだけ仲が良かったのに些細なことから仲違いしてしまった友だちもいる。長らくの音信不通ののちに復活する友情もある。

そういうことを考えると、なんとなく幼馴染からずっと続いている友人関係が一番素晴らしい、みたいな印象を持ちがちなのだけれど、最近僕はそれは違うんじゃないかという気がしてきた。

その時の自分や自分をとりまく環境、あるいは時代などに相応しい友だちというのがあったのではないだろうか、と。

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Sunday, May 21, 2023

Play Log File on my Walkman #153

【5月21日 記】 ときどきやっている僕の Walkman でのプレイログ披露。ランダム再生した中から今回も5曲。

  1. ハートブレイク(松任谷由実)
  2. スカンピン(MOONRIDERS)
  3. 純愛(片平なぎさ)
  4. 私は忘れない(岡崎友紀)
  5. ジャンクビート東京(リアル・フィッシュ)

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Thursday, May 18, 2023

Netflix 『ザ・クラウン』 season 5 まで

【5月17日 記】 Netflix の『ザ・クラウン』(The Crown)を season 5 まで見終わった。season 5 で終わりだと勝手に思い込んでいたのだが、season 6 を今年中に配信するとのテロップが出て驚いた。当初から 6 seasons, 60 episodes と発表されていたらしい。

いずれにしても壮大なドラマである。これはイギリスの大河ドラマだと思う。

NHK の大河ドラマは1話45分で週1回、1年間の放送なので合計 40時間弱だが、この『ザ・クラウン』は 60話。ネット上のコンテンツの常で毎回の尺は決まっておらず、50分前後のこともあれば1時間を大きく超えることもあるが、仮に毎回 60分だとしたら合計 60時間となり、大河を凌駕するボリュームである。

そのボリュームの中でエリザベス2世の少女時代から、どうやら彼女の死までを描くのだろう。

それにしても驚くのは、この撮影の規模である。英国の王室の話なので、当然彼らは巨大な城に住んでいて、しかも城は1つではなく、広大な土地を持っており、そこで猟銃を持って狩りにいそしみ、競走馬の馬主であり、大型船に乗って世界に航海し、外交目的で諸外国にも渡る。

このロケやセットは一体どこなのか? どこまでがロケやセットなのか? CG はどの程度使ったのか? ──その辺のことは分からないのだが、ともかく毎回毎回圧倒的な景色なのである。

そして、このドラマの特徴は、王族も我々と変わらない人間なのであって、王族には王族の、我々とは全く違った強烈な束縛があって、とても生き辛いのだということに焦点を絞っているところである。脚本、演出ともに見事としか言いようがない。

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Wednesday, May 17, 2023

記事「乱丁・落丁本」へのコメント

【5月17日 記】 インターネットというのは恐ろしいところで、書いたことを本人が完全に忘れている何年も前の記事にコメントやリプが付いたりする。

このブログに凡そ8年半前(2014/10/15)に書いた記事「落丁・乱丁本」に昨日突然コメントが付いた。

その記事の内容を要約すると、

僕が買った本の中に、折り畳まれたまま裁断されてその上に印字されたみたいな箇所があり、本には「落丁・乱丁本はお取り替えいたします」と書いてあるが、申し出れば果たして本当に替えてくれるんだろうか?

みたいな感じだ。

それに対して昨日いただいたコメントは、

これは乱丁とは言いません。
印刷機に入る時に紙が折れていて
そのまま印刷してしまった、と言う現象です。

というものだった。

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Sunday, May 14, 2023

『統計学が見つけた野球の真理』鳥越規央 (書評)

【5月14日 記】 我々の世代の小学生男子はほとんど全員が野球をした。人数が揃うとしょっちゅう野球をしていたものだ。当時は野球をせずにサッカーをしている小学生は変な奴だと思われた(中学に進学すると少し違ってくるのだが)。

そして、少年たちはほとんど例外なくプロ野球が大好きで、どこかのチームのファンだった。

僕もそんな少年のひとりだったのだが、僕はそれに加えて小学校のころから無類のデータ好きだった。まだ「データ好き」という単語で自分を捉えてはいなかったが、実際いろんなデータを眺めたりそれを分析することに興味があり、例えば新聞に載っているプロ野球選手の個人成績を見たりするのも大好きだった。

そんな僕だから、この本に嵌まるのは当然のことである。

一方、長いことプロ野球のデータを見てきたが、打率とか防御率みたいな馴染みのデータに加えて、知らないうちに OPS とか K/BB とか WHIP などという新しい指標が出てきている。これが憶えられなくて、その都度調べてはまた忘れの繰り返しだったのだが、この本を読んで漸く僕の頭の中で定着した。

この本は所謂「セイバーメトリクス」による、選手や球団を評価するための指標を、ひとつずつ丁寧に解説してくれる。それが僕には面白くて仕方がない。NPB の選手ではこうだ、みたいな例もふんだんに載せてあって、「なるほど!」と納得するばかりである。

ところが、読み進めていくと、「セイバーメトリクスの指標ってそんなにあるのか!」と驚くほど、次から次に聞いたこともない分析法や公式が出てきて、これはとても憶えられない。むしろ辟易かも。あなたもきっと分からないようになると思う(笑)

そんな話をすると、多分「人間のやることはそんなに簡単に数字で割り切れるものではない。データ、データでスポーツをこねくり回しすぎるといろいろな弊害が出るだけだ」みたいなこを言う人が出てくるだろう。

しかし、実際にデータをこねくり回して弱小貧乏球団を常勝チームに立て直した事例があったのだ。それが本書でも触れられているオークランド・アスレチックスの GMビリー・ビーンだった。僕はそのビリー・ビーンを描いた小説『マネー・ボール』を読んで大きな感銘を受けた。

(映画化された『マネーボール』も観たが、こちらは重厚な小説を2時間の映画にするためにかなり端折った印象があったのと、ビリーを演じたブラット・ピットのイメージに引っ張られて少し歪められた感もあって、今イチだった)

ビリーは金もなかったので他球団でくすぶっていた安い選手をトレードで得て、彼らを使って勝つことを考えた。そういう選手を選ぶ際に使ったのがセイバーメトリクスだ。

例えば彼は、それまで打率ばかりが注目されていた中で、打率は高くなくても出塁率が高ければ充分勝利に貢献するということを発見して、そんな選手をゲットして試合に出したら見事にその通りになったのだ。

そして、それが MLB各球団がセイバーメトリクスを導入するきっかけになったのである。

そういう事実を知った上で読むと、この本はまさに「なるほどな!」の連続なのである。

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Friday, May 12, 2023

『女の子の謎を解く』三宅香帆(書評)

【5月12日 記】 それまで全く知らなかったのだが、note で三宅香帆を見つけて読んでみて、物の見方が非常にフラットなことに感銘を受けた。それでこの本を読んでみたのだが、こちらも非常にフラットで、しかも明晰な分析である。

いや、フラットな上に明晰という表現は正確ではなく、物事の奥深いところまでしっかり見据えているからこそ、そのフラットさが保たれるのだろうと思う。

ものすごく雑駁な言い方をすると、この本は女性と社会について書かれたものだが、彼女自身が女に生まれたことに対する呪詛めいた表現は全くない。

もちろん彼女自身の中にも今の世の中が女性をどう扱っているかということについては大いに不満もあるはずなのだが、そういうことはあくまで冗談めかした表現で短くインサートされているにすぎない。

つまり女という立場から女を語ったりはせず、ただ人間として社会を見、読者として作品を語っているのである。そのスタンスと文章のリズムには小気味良いものがある。

「あとがき」で彼女は「けっこうずっと『批評』が好きでした」と書いている。そして、

世の中で「批評」という言葉が、あまりいいイメージではなく、上から目線で語ることのように使われているのが、なんだかなあ、とずっと思っていました。

と続けている。これは僕も全く同感である。僕自身も、自分が書きたいのは読書感想文ではなく書評だと思っているから。

そして、こういうフラットな物の見方ができる人こそが、真の批評家になれるのだと僕は思っている。

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Wednesday, May 10, 2023

今週休み

【5月10日 記】 7日から入院しているので、ちょっと書くのが滞っている。

書く体力がないわけでも書くことがないわけでもないが、PC の電源コードを間違えて他のやつを持ってきてしまったので、端子が合わず使えないのが痛い。

iPhone でまとまった分量の文章を書くのはあまり得意ではない。

ま、退院したらボツボツ再開して行く。

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Sunday, May 07, 2023

私の本棚

【5月7日 記】 かつてやっていた個人ホームページ wise word web はもう閉じてしまったので、今ではネット上のどこにも存在しないのだが、かつてそこに連載していた本のコラムに、僕は

他人の本棚やCDラックを見るのはとても楽しい。
その人の嗜好や人格のルーツを覗き見たような気になってしまう。

と書いた。それは他人の本棚やCDラックだけではなく、自分の棚やラックでも同じである。そこにあるのはあの頃の自分なのだ。

ところが僕はある時期から本はできるだけ電子書籍で読むようにして、かさばる紙の本をどんどん処分し始めた(ほとんどは book off などに売った)。だから、「あの頃の僕」を知る材料はほとんどなくなってしまったのである。

しかし、気づいたことがある。本を処分したと言っても全部を捨てたわけではない。そこには残した本もあるのである。

たとえば僕はクレイグ・ライスの本は全部残してある。それは、彼女の著作を得るのは、紙であれ電子であれ、今後容易ではないだろうと踏んでいるからだ。

たとえば僕は、何度か書いているように、村上春樹のファンで、彼の長編は全部読んでいる。短編集も結構読んだ。そして、彼の本は売れているので、今後紙であれ電子であれ、もう一度手に入れることは容易だろう。だから、その多くを気軽に処分した気がする。

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Saturday, May 06, 2023

連続ドラマW『フェンス』

【5月6日 記】 WOWOW の連続ドラマW『フェンス』全5話を見終わった。やっぱり野木亜紀子はすごい。

僕が一番思ったのはナイチャーの野木にとって、このテーマでドラマを書くのは相当きつい作業だったのではないかな、ということ。

米軍基地だけではない、沖縄に関するさまざまな、そしてめちゃくちゃ複雑な事情や問題を、単なる沖縄の問題としてではなく日本全体の、あるいは世界の問題として捉え直した意欲作だと思う。

ひょっとしたらウチナンチューが見れば「それはちょっと違う」と違和感を覚えたり、あるいは物足りなかったり、反感を抱いたりする部分もあるのかもしれない。その辺は僕には計り知れない。

でも、仮にそうだとしても、彼らも野木亜紀子を非難したりはしないのではないか。彼らにも野木亜紀子の真摯な思いは伝わったのではないかと思うのである。

松岡茉優はこの年代では飛び抜けて巧い女優だと僕は思っている。物語は彼女が扮する元キャバ嬢の記者・綺絵が沖縄で起きた米兵によるレイプ事件を取材するところから始まる。だが、これはそんな単純な物語では終わらない。

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Tuesday, May 02, 2023

TBS『東京MER 完全新作SP──隅田川ミッション』

【5月2日 記】 順序は逆になったが、録画しておいた TBS『東京MER 完全新作SP──隅田川ミッション』を観た。

と言うか、僕はこの 1.5Hスペシャルは単なる読み切りの単発で、たまたま放送と公開がこういう順番になっただけだと思っていたのだが、そうではなくて、これは完全にテレビのレギュラー・シリーズと映画を繋ぐ環だった。

だから、もし今から両方観られる人がいたら、この放送/公開の順序通りに観たほうが良い。

このスペシャルで描かれていたのは、音羽(賀来賢人)の MER での最後の日々、千晶(仲里依紗)への再プロポーズを決意した喜多見(鈴木亮平)、比奈(中条あやみ)がセカンド・ドクターに就任するまでの経緯などである。

そして、音羽のあとのセカンド・ドクターとして、ごく短期間とんでもないポンコツ医師(伊藤淳史)が就任していたことが分かった。

このポンコツを送り込んだのが悪徳厚労大臣の鴻上尚史だ。鴻上が絵に描いたような悪役をやっていてとても面白かった。本人もかなり楽しんでやっていたのではないだろうか。

しかし、先日の映画では厚労大臣役は別人(徳重聡)に変わっており、さては鴻上尚史が断ったかスケジュールが合わなかったか?と思ったのだが、そうではなく、何故この厚労大臣が辞任したかまでがちゃんと描かれている。

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Monday, May 01, 2023

『街とその不確かな壁』村上春樹(書評)

【5月1日 記】 小説の終盤に達し、残りのページ数(と言っても僕が読んでいたのは Kindle版だったので%表示だったが)がほとんどないことに気づきながら、これはどうやって締めるのか?と考えながら読んでいたら、あ、そこで終わっちゃうのか?

──僕が読み終えて最初に何かを書けるとしたらそのことだった。

村上春樹のファンなら誰もが思ったことだろうが(そして村上自身も「あとがき」で触れているが)、読み始めて割合すぐに、これは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に似た構成だなと思った。

と言っても、例によって僕は中味をほとんど憶えていないのだが(笑)

ひとつだけはっきりと憶えているのは、交わらない2つの物語を訳が分からないまま読み進めさせられた挙げ句、最後の最後になって鮮やかに「辻褄が合った」という感慨だった。

それに対してこの『街とその不確かな壁』は無理やりに辻褄を合わせようとすることを拒否するような小説だったのではないかなと感じている。

それは何と言うか、いきなりスターになってしまったデビュー間もない作家ではなく、変な言い方だが、結局芥川賞もノーベル賞も獲れないまま 70代に達した老練な作家ならではの作品のような気がするのである。

そもそもがこの小説は、村上が『羊をめぐる冒険』の前に書いて発表したが、自分ではあまり納得が行かず唯一出版されていない『街と、その不確かな壁』という小説を約40年ぶりに書き直したものだと村上は書いている。

その 40年という長いインターバルの重みがこの小説に表れているような気がするのである。

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