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Tuesday, March 21, 2023

映画『わたしの幸せな結婚』

【3月21日 記】 映画『わたしの幸せな結婚』を観てきた。

タイトルの割には中味は「異能者」同士の戦いの物語で──と考えるのは誤りで、この話はあくまでそういう戦いに巻き込まれながらも幸せな結婚をするヒロインを描いたものである。だから、一見『帝都物語』のような話に見えても、終わり方は妖術や戦闘ではなく、あくまで結婚に焦点を絞ってある。

観客の9割が女性だった。おそらくそのうちの8割、9割が目黒蓮のファンだろう。予想したことだが、上映5日目にしてすでにパンフレットは売り切れだった。

こういう物語だからこそ、主役はあくまで婦女子がとろんとなるくらいの、(たとえばジャニーズ系の)イケメンでなければならない。そして、その相手役であり、物語の語り部となるのは、そのイケメンが恋に落ちるのも仕方がないと思わせる程度に可愛くなくてはいけない。

ただし、目黒蓮のファンを観客のメインと想定するのであれば、2人はキスしてはいけない。ハグが限度だろう。この映画はそういうところをよく分かって作ってある。

僕は目黒蓮のファンではないし、(めちゃくちゃ可愛いとは思うけど)今田美桜のファンだというわけでもない。この映画を観たのは監督の塚原あゆ子目当てである。

TBSスパークル所属。旧ドリマックス時代から TBS のゴールデンタイムで数々の名作ドラマを手掛け、その見事な演出力に何度も舌を巻いてきた。映画監督デビューとなった『コーヒーが冷めないうちに』は、「う~ん、こういう作風の人じゃないんだけどな」という素材で、ちょっと可愛そうであった。

で、今回の映画は塚原あゆ子本来の路線かと言うとそうでもない。でも、今回は彼女なりの見せ場があったと僕は感じている。

設定は一応日本だが、いつの時代なのかは分からない。かなり明治っぽい感じはあるが、いずれにしてもまるごと架空の設定である。

帝都を脅かそうとする異能者と、それを阻止して国を守ろうとする異能者の軍隊。その軍隊のリーダーが久堂清霞(目黒蓮)である。そして、そこに嫁いで行くのが、異能者の血を引きながら未だ異能が発現しない美世(今田美桜)である。

強力な異能者であった美世の母親(土屋太鳳)は美世が2歳のときに亡くなっており、美世は継母(山口紗弥加)とその娘(髙石あかり)に、まるでシンデレラみたいに、絵に描いたようにステレオタイプのいじめられ方をしている。美世は政略的に結婚させられるわけだが、この家を出られるだけでも幸せだった。

結婚相手の清霞はこれまた強い異能者であるが、怖い男として知られており、何人花嫁候補が来ても耐えきれず帰ってしまうという、これまたおとぎ話的な設定である。

タイトルから分かるように、つっけんどんな清霞といじけた美世がやがて強く惹かれ合い、結ばれるドラマであるが、途中で何度か異能者同士の派手な戦闘シーンもあり、そういう場面も楽しめるという寸法だ。

青い軍服と言い、火を操る術と言い、清霞に『鋼の錬金術師』のマスタング大佐を思い出すのは僕だけではあるまい。

おそらく原作がそうなのだろうが、異能者の世界を描きながら、その時代の建物や衣服は近未来的な無機質なものではなく、日本の伝統的な建築であり、和装であるところが良かった。そういう構造を巧く活かして、様式美を取り込んだ撮り方をしていたと思う。

途中2人の愛が揺らぐことは全くない。そういう映画なのだからそれで良いと思う。むしろ、いじらしい美世とキュンと来る清霞を今田美桜と目黒蓮が好演していたと思う。

他にもジャニーズ系(そのうちの誰がジャニーズ事務所所属なのかまでは知らないが)のイケメンたちも大勢出ており、そういう人たちのファンにも支えられて、この映画はヒットするだろう(何しろジャニオタの人たちは自身で何度も見るだけではなく、自腹でチケットを買って友だちにあげたりもするのだから)。

帝(石橋蓮司)の嫡男を大西流星が演じており、ああ、昔だったらこの役は千葉雄大だったなあ、と変なことを考えた。いくら童顔と言っても、彼ももう30代半ばだからね(笑)

エンドロールの後エピローグがあり、あれ?続編作る気?と思わせる終わり方をしていたが、塚原監督にはできれば次回はシリアスなドラマ(犯罪がらみとかが良いかな?)を作らせてあげたいなと願うばかりである。

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