出雲大社訪問記
【3月14日 記】 一昨日から一泊で出雲大社に行ってきた。妻が一度行ってみたいと前から言っていたのと、僕も行ったことがあるとは言え、行ったのは寺社仏閣にも神話にも歴史にもろくに興味のなかった中学時代だったので、改めて訪れてみたいと思っていたから。
現地に着いてみると、出雲大社の境内はもちろんのこと、市内のあちこちにうさぎの彫像がある。何かと思ったら因幡の白うさぎであった。
で、白うさぎがワニザメを騙して島に渡ろうとして、最後にそれがバレて皮を剥がされてしまうところまでは憶えていたが、その後通りがかった3人の悪い神様に騙されて余計に痛い目に遭ったとか、その後通りがかった大国主命(オオクニヌシノミコト)に助けられたとか、そんな結末だったとは知らなかった(のか、憶えていなかったのか)。
また、うさぎを助けた後、大国主命はヤマタノオロチ退治で有名な素戔嗚尊(スサノオノミコト)の娘を妻にもらったとか、その後に大国主命が統治を任されたのがこの出雲の国で、さらにその何年か後に出雲の国を天照大神(アマテラスオオミカミ)に返せと迫られて泣く泣く「国譲り」をした大国主命が、その交換条件として作らせたのが出雲大社だったとか、調べれば調べるほど「なるほど、そんなことになっていたのか!」みたいな話がゾロゾロ出てくる。
その辺の話は2日目に訪れた島根県立古代出雲歴史博物館で仕入れたのだが、そこの売店で売っていたのが『水木しげるの古代出雲』という文庫版の漫画本である。
この本を最初から最後まで読むと、旅行ガイドブックや境内にある掲示や博物館の展示などから仕入れたもろもろの話が網羅されていて、全部がきれいに繋がってきた。いやはやあっぱれな本である。
僕は若い頃にギリシャとローマの神話が面白くて少し調べたことがあるのだが、ギリシャやローマの神話が面白いのは登場人物(神物?)がバラエティに富んでいて、それぞれの神が嫉妬したり騙したりする、何というか「人間味溢れる神」だからである。
そして、出雲の国で語り継がれてきた神話に出てくる神々もすこぶる人間らしくて人間味溢れていて、自分勝手にひどいことや強欲なことをやっているところが同じように面白いのである。
そもそも水木しげるがこれを描いたのは、古代の青年が何度も水木の夢枕に立って「出雲の話を描け」と迫ったからだそうで(そのこともこの漫画の中で描かれている)、ほんまかいなという気もするが、他ならぬ水木しげる先生のことだからあるかもしれない(笑)
ここで描かれている話もあくまで神話であって事実ではないのだが、意外に全部ほんとうにあったことかもしれない、なんてね。
出雲大社について、今回訪れる前に知っていたのは、11月になると日本全国の神々が出雲大社に集結して、他の地域では神がいなくなるためこの月は「神無月」と呼ばれ、しかし、出雲の国では「神在月」と呼ばれている、という程度のことだった。
その話をアメリカ人何人かに話したら例外なく受けたのだが、そのうちのひとりが「そんなに大勢集まって何をしてるんだ?」と訊くので、「コンベンションがあるんじゃないかな」と適当に答えたのだが、来てみるとほんとうにそうだった。
ただし、コンベンション会場は八百万の神々が全員入場できるとはとても思えない狭いスペースだったので、皆さんどうやっておられるのか心配になった(笑)
今回知ったエピソードで一番面白かったのは、この漫画本にも書かれていたが、「国引き」神話と呼ばれる部分で、素戔嗚尊から4代目の神が、出雲の国は狭いのでもう少し広くしようとして、新羅の岬などに投げ縄をして島に引っ掛けて、それをグイグイ引っ張って出雲の国にくっつけたという話。
そのくっつけた部分が中海と宍道湖の北側の、現在の島根県の日本海に面した部分だと言う。いやはや、神様というのはめちゃくちゃなことをするものである。
で、この神様たちのめちゃくちゃぶりに水木しげるの画風がそれこそぴったりなのである。博物館に行ってほんとうに良かった。そして、この本を買ってほんとうに良かった。良い旅だった。
ちなみに、今回宿泊したのは竹内まりやの実家の旅館だった。立地条件は最高で、料理も美味しく、従業員も感じが良かった。
聞いた話によると、このホテルのロビーや食堂などでは朝から晩まで一日中竹内まりやの曲が流れているとのことだったが、実際に行ってみると決してそんなことはなかった。山下達郎の曲も結構流れているのである。
ただ、その2人以外の曲は一切流れて来なかった(笑) 如何にも神様がやりそうな我田引水であるが、まあ、縁結びの神様だから良いのではないだろうか。
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