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Friday, March 31, 2023

江口寿史『東京彼女』

【3月30日 記】 江口寿史イラストレーション展『東京彼女』を観に行ってきた。於:東京ミッドタウン日比谷 BASE Q HALL。

写真撮影OK だったので結構撮りまくって、facebook には 8枚も上げてしまったので、こちらは 1枚にしておく。Photo_20230331130501

僕は江口寿史の漫画はほとんど読んだことがないのだが、イラストのほうは昔からかなり好きだ。とにかく女の子が可愛いのだ。

顔も可愛いし、髪型も可愛いし、表情もいいし、体の線もきれいで、お洋服も靴もアクセサリも、バッグやその他手に持っているものすべてが可愛い。特にポーズにキュンと来る。

場所の選択(今回は当然東京のどこかであるケースが多い)も背景の描き方も素敵で、かつて 10年以上暮らした西荻窪駅前を描いた作品を見つけたときにはなんだか嬉しかった。

そしてあの彩色である。陰影の付け方、色の配し方、果てはスクリーントーンの貼り方に至るまで、顔を近づけて至近距離で見るとなおさら感慨深い。

どうしてこんなものが描けるのだろう?と思う。

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Wednesday, March 29, 2023

Netflix『ちひろさん』

【3月27日 記】 映画館と Netflix が同時公開だったのでまず映画館で観てきた『ちひろさん』をもう一度 Netflix で観た。

映画館で観たのと一番印象が違うのは、家で観ていると BGM がやけに際立つなあということ。これは多分映画館と Netflix の差というよりも、テレビ受像機の特性もあるのだろう。他の受像機で見たらそんな印象も受けないのかも知れない。

そして、やはり2回目となると、1回目のときは見逃していたいろんなことに気づく。ここにはいちいち書かないけれど、あ、背景にそんなものが映り込んでいたのか、とか、画面の端にそんなものがあったのか、とか、ここではそんな表情してたっけ、とか…。

改めて思ったのは、とても良い画作りをしていたのだなあということ。海辺とか夜の街灯とかばかりではなく、人物を捉えるアングルであったりサイズであったりもする。

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Monday, March 27, 2023

いざ格安へ

【3月27日 記】 長年使っていたソフトバンクを格安SIM に切り替えた。

生まれて初めて携帯を買ったときに選んだのは docomo で Panasonic だった。まあ、寄らば大樹の陰ですな。

それから iPhone が出たときに、最初はソフトバンクの独占販売だったので、迷うことなくソフトバンクに切り替えた(厳密に言うと、しばらく docomo のガラ携も併用していたが)。

それから何十年。別に不満はなかった。iPhone には心から満足していたし、孫正義の下で働きたいとは全く思わなかったが、実業家としての孫正義には親近感と敬意を抱いていたし。

MVNO とか 格安SIM などというものが出てきたときにも見向きもしなかった。最初は「そんなものに切り替えて品質が維持できるのか?」という思いもあったし、何よりも SIMロック解除したり物理的に SIM を入れ替えたりするのがとても面倒くさそうだったからでもある。

ところが定年退職して収入がなくなるとさすがに余裕がなくなってきた。とりあえず当面はお金に困ってはいないが、今の時代自分と妻が何歳まで生きるか見当がつかない。2人とも 100歳を超えて生きるかもと考えると途端に不安になる。

一方で、もうそろそろ品質的にも劣らないものになっているみたいだし、元から SIMフリーが普通の時代になり、e-SIM になって物理的にいじくる必要もなくなって、変更の手順や手続きも簡単になっているみたいだし…。

それで思い切って夫婦で切り替えた。

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Sunday, March 26, 2023

映画『ロストケア』

【3月26日 記】 映画『ロストケア』を観てきた。やりきれないテーマの、重苦しい映画である。Photo_20230326160801

この映画は犯罪を扱ったものであるが、真犯人や手口を観客に隠して進めるような類の作品ではないので、かなり先までストーリーを明かしても良いのではないかと思うが、もし何も知らずに観たいというのであれば、ここから先は読まないほうが良いと思う。

僕自身は長澤まさみと松山ケンイチというだけで観たので、ストーリーはおろか、どんな設定なのか、何を扱った映画なのかさえ全く知らずに観た。結果的にそれはとても良かったと思う。

一人住まいの老人の家で殺人が起きる。殺されたのはその老人と、彼が介護サービスを受けていた会社のセンター長(井上肇)だった。

最初は金に困ったセンター長が盗みに入って老人を殺したあと、誤って階段から転落して死んだと思われたのだが、実はその介護サービス会社の模範的な介護士だった斯波(松山ケンイチ)が犯人だったと分かる。

斯波の取り調べに当たったのは検事の大友(長澤まさみ)と助手の椎名(鈴鹿央士)だった。そして、取り調べの中で斯波は他にも 41人の老人を殺していたことが分かる。しかも、彼はそれを殺人ではなく「救った」のだと言う。

このドラマは検事室における2人の会話劇だと言える。もちろん他のシーンもたくさんあるのだが、ここでの会話劇が一番の見どころである。お互いの経験と理屈と信念の応酬、そして論点のすれ違い。大友に何を言われても、全く信念が揺るがない斯波に対して、自分の母と、離婚してもう 20年以上会っていない実の父親のことが脳裏に浮かんでたじろいでしまうこともある大友。

これは舞台にしたら良いんじゃないかと思う息詰まるシーンだった。

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Saturday, March 25, 2023

リモコン考

【3月25日 記】 昨日 CanDo でリモコン・ボックスを買った。Photo_20230325233801

CanDo だから当然 100円である。100円だから当然安っぽい(前面のシールは当然剥がして使っているが)。でも、機能的には充分だ。

様々な大きさのリモコンがきれいに片付くし、底まで仕切りがあるので箱の中でそれぞれのリモコンがグラグラしない。

前方が少し低く後方を少し高くしてあるのも、ちょっとした工夫だが、それぞれのリモコンを識別しやすく取り出しやすい。

何しろ今まで使っていたのは本来フロッピー・ディスク入れだったものである。フロッピー・ディスクなんて、若い人は知らないだろうが(笑)

フロッピー用の高さと幅の箱に縦長のテレビのリモコンを入れておくと横に倒れてしまうのである。そこから考えると大きな進歩である。

しかし、それにしてもなんで家電のリモコンって黒一色が多いんだろう? 我が家で言うとエアコンのリモコンと、たまにしか使わない天井照明用のリモコンが白っぽいだけで、あとは全部黒だ。

赤とか緑とか柄物とかにしてくれると区別がつきやすいのだが…。それが無理ならせめてツートンカラーにでもしてくれれば良いのにと思う。

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Thursday, March 23, 2023

映画『ひとりぼっちじゃない』

【3月23日 記】 映画『ひとりぼっちじゃない』を観てきた。伊藤ちひろ初監督作品。原作は伊藤が10年をかけて書いた小説なのだそうだ。脚本ももちろん伊藤である。

伊藤ちひろは行定勲監督の子飼いの脚本家という感じで、事実彼女が脚本あるいは脚本協力でクレジットされている映画で僕が観たのは7本とも行定監督作品だ。

しかし、最後に見たのが 2014年の『円卓』で、あれ?そんなに間が空いたかな?と思ったのだが、なんと「堀泉杏」が彼女の変名だったとは知らなかった。となると『ナラタージュ』、『窮鼠はチーズの夢を見る』(この2本もまた行定作品)、『母性』まで合計 10本観ていることになる。

要するに結構好きな脚本家なのである。しかし、それにしてもこの映画はおっそろしく観るのがしんどい映画だった。じっと観ているのが本当に骨が折れる。ともかくなんだか分からないのである。

それに長い。映画全体の尺も長いが、カット変わりがやけにゆっくりで、人がいなくなった風景をずっと撮っていたりする。今となってはこういうテンポは大変疲れる。

主人公のススメ(井口理)は歯医者で、宮子(馬場ふみか)のことが好きだということぐらいは分かるのであるが、宮子が何の仕事をしている人なのかも分からない。そう言えばパンフレットで主人公の名前を知ったのだが、映画の中で名前を呼ばれることはなかった。

宮子の勤め先も原作には書いてあるらしいが、映画を観ていると一体彼女は何で生計を立てているんだろうと不思議になる。彼女は坂を上がって折り返したところにある不思議な造りのアパートに住んでいて、玄関は多分2階にあって、階段を降りて突き当たりの 101号室が彼女の部屋だ。

不思議はそれだけではない。幻想的なシーンがやたら多く、どこまでが現実なのか区別がつかない。いや、もしかしたら、この話全部が主人公の妄想なのかもしれないという気がしてくる。

ススメは宮子の家を頻繁に訪れ、ついにキスをして、やがて体も交わすのであるが、宮子にはどう考えても他にも男がいるようにしか見えないし、突然現れた蓉子(河合優実)と宮子の関係もなんだか分からないし。

宮子が部屋の鍵を一切かけないので、ススメもそうだがいろんな人が勝手に入ってきて、寝ていたり、飲み物を飲んでいたりする。宮子の部屋はベランダだけでなく部屋の床まで緑の植物に溢れ、ハンモックやらぼんやりとしたスタンドやらいろんなものがあって、ものすごく不思議な感じ。

そこに宮子が寝ていたり、宮子とススメが並んで寝ていたり、その2人の間に宮子の友だちの蓉子が挟まって寝ていたり。そうかと思えば詳しくは書かないがススメが2人いたりもする。

ススメは自分でレバニラ炒めを頼んでおいて、レバーを一生懸命取り分けているし、ごく普通に道を歩いていたかと思うと突然コケて倒れるし、そこを通りがかった車に轢かれて松葉杖になるし、しかし、倒れた瞬間にフレームアウトしているから観客には何が起きたのかさっぱり分からないし。

そう、カメラワークも独特で、こちらはかなり面白い。伊藤ちひろは「私に映画的知識が勉強できていないということもあった」と言っているが、師匠の(そして、この映画の企画・プロデュースの)行定勲は「空間の捉え方に独創性が溢れている」と言っている。

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Tuesday, March 21, 2023

映画『わたしの幸せな結婚』

【3月21日 記】 映画『わたしの幸せな結婚』を観てきた。

タイトルの割には中味は「異能者」同士の戦いの物語で──と考えるのは誤りで、この話はあくまでそういう戦いに巻き込まれながらも幸せな結婚をするヒロインを描いたものである。だから、一見『帝都物語』のような話に見えても、終わり方は妖術や戦闘ではなく、あくまで結婚に焦点を絞ってある。

観客の9割が女性だった。おそらくそのうちの8割、9割が目黒蓮のファンだろう。予想したことだが、上映5日目にしてすでにパンフレットは売り切れだった。

こういう物語だからこそ、主役はあくまで婦女子がとろんとなるくらいの、(たとえばジャニーズ系の)イケメンでなければならない。そして、その相手役であり、物語の語り部となるのは、そのイケメンが恋に落ちるのも仕方がないと思わせる程度に可愛くなくてはいけない。

ただし、目黒蓮のファンを観客のメインと想定するのであれば、2人はキスしてはいけない。ハグが限度だろう。この映画はそういうところをよく分かって作ってある。

僕は目黒蓮のファンではないし、(めちゃくちゃ可愛いとは思うけど)今田美桜のファンだというわけでもない。この映画を観たのは監督の塚原あゆ子目当てである。

TBSスパークル所属。旧ドリマックス時代から TBS のゴールデンタイムで数々の名作ドラマを手掛け、その見事な演出力に何度も舌を巻いてきた。映画監督デビューとなった『コーヒーが冷めないうちに』は、「う~ん、こういう作風の人じゃないんだけどな」という素材で、ちょっと可愛そうであった。

で、今回の映画は塚原あゆ子本来の路線かと言うとそうでもない。でも、今回は彼女なりの見せ場があったと僕は感じている。

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Monday, March 20, 2023

映画『シン・仮面ライダー』追記

【3月20日 追記】 昨日の記事を書いた後パンフレットを読んだら、庵野監督の面白い話がてんこ盛りだった。

コンテ通りに撮り始めていても突然監督が「今のカット、こっち側からも撮れませんか?」とか「今のテイクよりもさっきのほうが良かった」などと言い出して、“監督の画作りへの探究が始まる”とアクション監督や演出助手は四苦八苦したらしい。

現場でト書きが1行増えるごとに殺陣は3~4手増えたのだとか。

ちなみにカメラは常時4台で、多いときには iPhone10台とか、GoPro も使ったらしい。

CGのアニメーション・ディレクターも、監督は空中戦時の放物線の軌道にこだわっていて、動きが変だと言われるたびに1コマずつ修正して行くことになったと言っている。彼が理解しきる前に監督のアイデアが先行してどんどん発展してしまうのだそうだ。

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Sunday, March 19, 2023

映画『シン・仮面ライダー』

【3月19日 記】 丸の内TOEI で映画『シン・仮面ライダー』を観てきた。Img_1640_20230319163201

先に観た知人によると、これは昭和ライダーであり、平成ライダーや令和ライダーのファンはがっかりするかも、とのこと。そりゃまあ、庵野秀明監督の年齢を考えると当然昭和ライダーだろう。

僕は庵野監督よりほんの少し年上で、『仮面ライダー』の放送が始まったときには子供向けの実写ヒーローものはそろそろ卒業という感じだったのだが、この番組だけはなんか今までのヒーローものと違うぞと思って時々見ていた。

その 10年後に、最初の『仮面ライダー』を製作し(業界で言う「衣」付きの「製作」であり「制作」ではない)発局となって全国放送していた局に縁あって入社し、その 6年後には何年ぶりかの『仮面ライダー』テレビ放送復活に関わり、担当営業マンとして『仮面ライダーBLACK』と『仮面ライダーBLACK RX』を見守ってきた。

大泉の撮影所にも通ったが、数寄屋橋の東映本社にもよく行った。まだ若かった僕からしたら、当時の東映や石森プロの面々は魑魅魍魎みたいな人ばかりで、えらくしんどかった記憶がある。

そんな思い出もあって、この映画は、その東映本社ビルの1階にある丸の内TOEI でどうしても観たかったのである。ほんの数分歩けば TOHOシネマズ日比谷の IMAX 画面で観られたにも関わらず。

で、いきなり走る車のタイヤが映って、なんじゃこりゃと思ったらもう映画は始まっていて、しかも怒涛のカーチェイスである。池松壮亮が後ろに浜辺美波を乗せて逃げるバイクを何台かの大型車が追っている。説明は後回しの小気味よいオープニングだ。

んでまた、その後も展開速い速い! 説明を小出しにしながらどんどんストーリーが進んで行く、と言うか、うねって行く。

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Saturday, March 18, 2023

【note】 あなたが泣いた映画は何ですか?

【3月18日 貼】 久しぶりにまた note に上げた記事を貼っておきます。

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Tuesday, March 14, 2023

出雲大社訪問記

【3月14日 記】 一昨日から一泊で出雲大社に行ってきた。妻が一度行ってみたいと前から言っていたのと、僕も行ったことがあるとは言え、行ったのは寺社仏閣にも神話にも歴史にもろくに興味のなかった中学時代だったので、改めて訪れてみたいと思っていたから。

現地に着いてみると、出雲大社の境内はもちろんのこと、市内のあちこちにうさぎの彫像がある。何かと思ったら因幡の白うさぎであった。Photo_20230314155401

で、白うさぎがワニザメを騙して島に渡ろうとして、最後にそれがバレて皮を剥がされてしまうところまでは憶えていたが、その後通りがかった3人の悪い神様に騙されて余計に痛い目に遭ったとか、その後通りがかった大国主命(オオクニヌシノミコト)に助けられたとか、そんな結末だったとは知らなかった(のか、憶えていなかったのか)。

また、うさぎを助けた後、大国主命はヤマタノオロチ退治で有名な素戔嗚尊(スサノオノミコト)の娘を妻にもらったとか、その後に大国主命が統治を任されたのがこの出雲の国で、さらにその何年か後に出雲の国を天照大神(アマテラスオオミカミ)に返せと迫られて泣く泣く「国譲り」をした大国主命が、その交換条件として作らせたのが出雲大社だったとか、調べれば調べるほど「なるほど、そんなことになっていたのか!」みたいな話がゾロゾロ出てくる。

その辺の話は2日目に訪れた島根県立古代出雲歴史博物館で仕入れたのだが、そこの売店で売っていたのが『水木しげるの古代出雲』という文庫版の漫画本である。

この本を最初から最後まで読むと、旅行ガイドブックや境内にある掲示や博物館の展示などから仕入れたもろもろの話が網羅されていて、全部がきれいに繋がってきた。いやはやあっぱれな本である。

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Sunday, March 12, 2023

日本一

【3月12日 記】 今日機内から撮ったやつ。

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Thursday, March 09, 2023

映画『少女は卒業しない』

【3月9日 記】 映画『少女は卒業しない』を観てきた。朝井リョウ原作、中川駿監督・脚本。ちなみに中川監督はこれが初長編、初商業映画らしい。Photo_20230309163601

全く知らない監督とは言え、この映画は早くからマークしていたのだが、結局やっぱりパスしようかなと思い始めていたところ、思いの外評判が良いので気を取り直して見に行った。で、かなり良かった。正直びっくりした。

ほとんどの場面が高校の校舎や校庭のシーンである。そんな中で人がよく動く。

通例こういう映画では画面の前面中央にメインの登場人物がいて、その背景に同級生たちが映り込んでおり、彼らはその場であまり動かずに、喋ってはいるが声は聞こえない。

ところが、この映画では背景の同級生たちが非常によく動いており、さかんにフレームイン/フレームアウトがある。

実際の高校生がそんなにじっとしているはずがないので、こういう演出はとてもリアルだ。しかも、その動きが如何にも高校生が教室や校庭でじゃれ合っている感じが出ている。

メインの人物が歩いていてカメラも動いているときにも、その背景で名もない役者たちが語り合い、動き回っている。

ものすごくデザインされた画作りである。ちなみにカメラマンの伊藤弘典は中川監督の出世作『カランコエの花』も撮った人らしい。

長回しも結構使っているのだが、このまま最後までワンカットで行くのかなと思ったら、さらっとカット変わりして別の構図になる。この辺りのリズムが非常に気持ちが良い。

卒業式後の図書室での作田(中井友望)と坂口先生(藤原季節)の2ショットでは、カメラがゆっくりゆっくりと左に動いている。そんなところにも作田の先生に対する思いともどかしさ、バツの悪さがよく出ていた。

階段のところで後藤(小野莉奈)が彼氏である寺田(宇佐卓真)の話を親友の倉橋にしているところに、他の生徒が階段を上がってくると、2人は話をやめて、彼らが通り過ぎるのを待って小声で話を再開する。──そういう演出もめちゃくちゃリアルだ。

ちなみに小野莉奈は『アルプススタントのはしの方』の主演の子。

他の人物のことを先に書いてしまったが、主人公は山城まなみ(河合優実)である。河合優実は『由布子の天秤』と『サマーフィルムにのって』で注目を浴び、さまざまな映画新人賞を受賞した女優だが、その辺りの映画は観ておらず、全く知らなかった。

その後 MBSの深夜ドラマ『夢中さ、君に』や映画『ちょっと思い出しただけ』にも出ていたが、僕が彼女の名前をはっきりと記憶したのは僕が2本目に観た映画『愛なのに』の、古本屋(瀬戸康史)に恋する女子高生役だった。この娘は良い、と思った。

その後、彼女は立て続けに映画に出演して、僕は昨年だけで彼女の出演作を6本観たことになる。それから、同じく昨年の NHKのドラマ『17歳の帝国』も非常に良かった。次回作は伊藤ちひろの監督2作目の『ひとりぼっちじゃない』ということで、こちらも大いに楽しみである。

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Wednesday, March 08, 2023

『芸能界誕生』戸部田誠(書評)

【3月8日 記】 僕はこういう分野の話が大好きである。それは長らく放送局に勤めていたからと言うよりも、むしろそういう世界に憧れて放送局に入ったと言うべきなのだと思う。

2006年5月26日(土)と27日(日)の2日間にわたってフジテレビが放送した『ザ・ヒットパレード 芸能界を変えた男・渡辺晋物語』というドラマがあって、僕はこのドラマがものすごく好きだった(これはもちろん入社後であるが)。

ちなみに渡辺プロダクションの創設者である渡辺晋・美佐夫妻を演じたのは柳葉敏郎と常盤貴子だった。何かの創成期を扱ったドラマが面白いのは、それが一種の梁山泊的な場を扱っているからだ。

このドラマでも、後の芸能界で活躍する歌手や作詞・作曲家、マネージャーなどが全てこの渡辺夫妻の周囲に集まっている。

恐らくこのドラマの原作となったのが『芸能ビジネスを創った男 渡辺プロとその時代』(野地秩嘉)という本で、その後加筆されて『昭和のスター王国を築いた男 渡辺晋物語』という本になっている。

言わばこれらは芸能界の全てが渡辺夫妻の周りから始まっているという話である。

それに対してこの『芸能界誕生』は、日本の現在の芸能界は全て「日劇ウェスタン・カーニバル」に端を発している、という構成である。もちろんその多くのパートに渡辺夫妻は出てくるし、野地氏の著書からの引用もある。

けれど、ウェスタン・カーニバルに関わった人たちという括りにすると、同じく構造的には梁山泊だが、もう少し規模の大きい梁山泊ということになる。

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Tuesday, March 07, 2023

成熟を考える

【3月7日 記】 子供の頃は、大人になったら「自分は一人前だ」みたいな感覚を持って、何に対しても自信を持って事に当たることができるんじゃないか、みたいなイメージでいた。

マディ・ウォーターズが言うところの

Man!
I'm a grown-up man.
No B O, child, Y!

みたいな感じね(笑)

でも、大学に入っても、成人になっても、会社に入った後でも、一向に自分が大人になったとか成熟したという感じは持てなかった。

中年になったら、あるいは世にいうところの管理職になったらそういう感覚が出てくるのかなとも思ったが、いくつになっても自分は未熟で未成熟だという思いしかなく、ついにそのまま老境に達してしまった。

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Sunday, March 05, 2023

映画の邦題を考える

【3月5日 記】 昨日も少し書きましたが、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』というタイトルはちょっとないよな、と思うのです。

もちろん映画の邦題というものは、どういうタイトルにしたらその映画が当たるかを考えて付けるものだから、そういう観点からはこの邦題が良いと判断したのかもしれません。でも、だからと言って翻訳の努力を放棄しないでよ、と思うのです。

こういう傾向は 20年以上前からあって、当時自分のホームページ(現在は閉鎖)にも書いたのですが、例えば『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992年)とか『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002年)とか、原題をカタカナに置き換えただけのものが前世紀の終わりごろから急に横行し始めたのです。

いくら日本人に英語が浸透してきたと言っても、あまりに手抜きじゃないでしょうか? そして、カタカナにすると長すぎやしませんか?

英語の EVERY THING EVERY TIME ALL AT ONCE であれば9音節ですが、日本語カタカナの『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』になると 21音節にもなってしまいます。邦題としてはいくらなんでも長すぎると思うのです。

「いやいや、だから『エブエブ』という略称を前面に出して宣伝を展開していて、その言い方は結構浸透してるし」などと配給会社は言うのでしょうね。はい、配給会社が何も考えていないと言う気はありません。ただ、翻訳するという作業を諦めないでほしいのです。

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Saturday, March 04, 2023

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

【3月4日 記】 映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観てきた。この邦題は如何なものかと思うが、そのことはまた別の機会に。

最初に予告編を見たときには観る気は全くなかったのだが、何度か予告編を見せられているうちに面白そうな気がしてきて、本国アメリカではアカデミー賞を獲るかもしれない勢いと聞き、とりあえず観に行った。

冒頭からいきなりとっ散らかった感じで、どういう設定なのだかあまりうまく頭に入ってこない。そもそも会話が英語と中国語のチャンポンだ。

ネイティブと話す時は英語、中国人同胞と話す時は中国語、という風にきれいに分かれているのではなく、ひとつの文中に英単語と中国語単語が入り乱れているというハチャメチャがなんだか象徴的である。

中国系移民でコイン・ランドリー(店自体は結構大きい)を経営するエヴリン(ミシェル・ヨー)とウェイモンド(キー・ホイ・クァン…『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』の少年だったと後から知って驚いたが、たしかに面影はある)の夫婦。

机の上には小さな紙片が散らかっていて、エヴリンが必死で整理している。どうやら全てが領収書のようで、明日国税庁に行かなければならないらしい。エヴリンの父ゴンゴン(ジェームズ・ホン)も同居していて、彼は最近中国からアメリカに来たらしい。エヴリンの娘ジョイ(ステファニー・スー)は英語が堪能で、本来通訳として一緒に国税庁に出向くはずだったが、女性のパートナーを連れてきたことで母親と喧嘩になり帰ってしまう。

この辺の設定が分かりにくいと言えば分かりにくい。

で、仕方なく娘抜きの3人で(なんで車椅子の父親まで連れて行く必要があるのかよく分からんが)国税庁に行くが、係官のディアドラ(ジェイミー・リー・カーティス)にこてんぱんにやられる。

その途中で旦那とそっくりだが別のマルチバースであるアルファバースから来たと言う別のウェイモンドに異空間に連れて行かれ、一緒に悪と戦うように要請される。

エヴリンにとっては一体何がなんだかさっぱり分からない話で最初は当惑一辺倒なのだが、その心情とここまでのとっ散らかった展開が非常にマッチしているのがおかしい。エヴリンが心を決めかねているうちに、税務官のディアドラが別世界のディアドラになって襲いかかってくるなど、まさにカオスである。

ヒーローもヒールも中高年の女性というのはハリウッドからは出て来ない発想ではないかな(笑) バトルはマジだがところどころで笑える。

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Thursday, March 02, 2023

久々に当たった

【3月2日 記】 久しぶりに懸賞の類に当たった。僕はわりと当たる方ではないかと思っているが、そのことを忘れないためにも時々整理してここに載せている。

宝くじは、もちろん通算すると大赤字であるが、5万円当たったことが2回ある。3000円クラスならもっと何度も当たっている。

生涯最初に何かをもらったのは、ラジオのリクエスト番組にハガキを出して当たったポール・マッカートニー&ウィングスの LP (如何にも昔っぽい話w)。

そう言えば、去年は映画『母性』の試写会が当たった。試写会はこまめに応募しているとたまに当たる。

年に1回の読書週間に本を買ったら付いてくる図書くじで 10万円分の図書券が当たったこともある。もらったくじはたった1枚だったので、まさか当たるとは思っていなかった。これは非常に使い勝手があり、消化するのに随分時間がかかってしまった。

UNUQLO のサイトで自分のアバターを行列に並べるという企画(確か twitter で募集していた)があって、そのときには1万人にひとりだったか何万人にひとりだったか忘れたが、見事にキリ番を取って Tシャツが当たり、ツイ友たちから「ほんまに当たるんや!」と驚かれた。

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