映画『BLUE GIANT』
【2月28日 記】 映画『BLUE GIANT』を観てきた。
僕の周りの人がみんな褒めていた。そして、そのうちの少なからぬ人たちが激賞していた。普段あまりアニメを観ないような人まで観に行っていた。
上原ひろみが手掛けた音楽が素晴らしいのだろうという想像はつく。でも、それだけではなさそうだ。それが何なのか知りたいと思った。単に他人が褒めているというだけでは心が動かないが、それを超えるものがありそうだったった。
ジャズのプロ演奏家を目指す若者たちの話。原作の漫画については全く知らなかった。僕は他のジャンルに比べるとジャズの CD は数えるほどしか持っていないが、嫌いではない。上原ひろみのアルバムも1枚だけ持っている。
見始めて最初に圧倒されたのが、その画力である。僕の周りにはストーリーについて書いている人が多く、画力についてあまり触れていないのが意外なのだが、アニメである限り絵の表現力が最重要ポイントであることは言うまでもない。
平面アニメと 3DCG の組合せで、演奏シーンなどではモーション・キャプチャーもかなり使ったようだ。
とにかく構図が飛び抜けている。主人公がサックスで豪快な音を鳴らすシーンでは真下から煽った角度で描いていたりする。実写でこれをやろうとすると役者をアクリル板の上に載せるしかなく、まさにアニメでしか描き得ない表現になっているところがすごかった。
そして、素晴らしいのはその瞬間の画だけではなく、そこからの構図の動きであり、変化である。人物は大きく動き、それを捉える視点も縦横無尽に動く。そこに光の変化、影の動きも加わって、まさに圧倒的なカットになっていた。
演奏者の背後や、会場の環境、都市の風景なども極めて忠実にきれいに描かれているのだが、演奏シーンになるとそこに心象風景的なものも加わって、かなりぶっ飛んだ画面になる。写実的な意味でも比喩的な意味でも、これは究極の作品だったと思う。
心象的な風景、比喩的な意味というのは、例えば数十年前のアニメ『巨人の星』では、主人公の飛雄馬の情念を表すには、マウンドに立った飛雄馬の目の中でメラメラと炎が燃えるぐらいが関の山だったのを、この映画ではその 100倍以上のバリエーションと迫力で描き分け、描き切っているということだ。
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