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Sunday, January 29, 2023

映画『ミスター・ムーンライト』

【1月29日 記】 映画『ミスター・ムーンライト』を観てきた。1966年のビートルズ来日公演をめぐるドキュメンタリ。当時の様々な関係者、及びファンへのインタビューを中心に構成してあり、ところどころフッテージも出てくるが、そっちよりも結構深いインタビューのほうがメインである。

僕はビートルズを、まずは社会現象として知り、彼らの解散後に遡って音楽を聴いて行った世代であり、もちろんビートルズの偉大さはよーく分かっているつもりだが、そんなに熱狂的なファンというわけではない。

今回見に行った一番大きな理由は「監督 東考育」という文字を目にしたからだ。この人はテレビマンユニオンに所属するディレクターで、僕が勤めていたテレビ局の海外体験番組でも海外取材Dとして何度も名前を連ねていた人だ。

「孝」という字はよく名前に使われるが「考」は珍しいのですぐに名前を憶えてしまった。名刺こそ交わしていない(と思う)が、スタジオやサブやスタッフルーム、あるいはテレビマンユニオン社内の廊下ですれ違っていても不思議はない。

で、これは見に行って良かった。とても面白かった。

この映画を観るまで知らなかったことがいくつかあって、ひとつは当初ビートルズは日本の音楽関係者にほとんど評価されておらず、東芝レコードの高嶋弘之という人が奔走して漸くレコードが発売され、人気が爆発し、大ヒット連発になったということ。

一般の大人たちが「うるさい」などと言って相手にしなかったのは解る(現に僕の父親もそうだった)が、音楽史的に見てもこれだけエポック・メイキングな曲作りとパフォーマンスを展開した彼らが業界人のおじさんたちにも当初は理解されなかったというのはとても意外な新事実だった。

それから、まあ、これは考えたら確かにそうだったのかもしれんと後から思ったが、日本武道館は言うまでもなく元々武道のために建てられた施設であり、そこでコンサートなんぞをやったのはビートルズが最初で、警備をはじめ前代未聞の対応だったということ。

そして、そのコンサートは、前座を除くとわずか 35分間で終わってしまったということ。今、僕らはスタジアムでのライブと言うと、大体2時間から2時間半ぐらいの長さを想定してしまうが、当時はそうじゃなかったのだ。そのわずか 35分に観客たちは大感激、大満足して帰って行ったということがにわかに信じがたいが、逆に言うとそれだけビートルズという存在がすごかったのかと驚いたりもした。

帰宅してググってみると、高嶋弘之という人はビートルズの日本での仕掛け人として大変有名な人だと知った。で、なんか見たことある人だと思ったら、高嶋ちさ子のお父さんではないか! 先日彼女がレギュラー出演している番組にゲストで出ているのを見たばかりだ。

さらに、兄は高島忠夫! えっ、高嶋ちさ子って高嶋政宏・政伸兄弟のいとこだったの?

あとは知ってる人/知らない人、存命/故人(あるいは故人の子息)を問わず、いろんな関係者や伝説上の人物、そしてオタクの走りみたいな研究者たちが出てきて、興味を逸らさない。

ただ、名前と役職のテロップは最初だけではなく、全シーンの最初に繰り返して出したほうが良かったんじゃないかな?

星加ルミ子、湯川れい子、朝妻一郎、堀威夫、亀渕昭信、新田和長、長沢純らは、たとえ年を取りすぎて映像を見ても識別できなかったとしても、僕らは名前を聞けばピンとくる世代だ。でも、若い人たちにはそうではないだろう。彼らに分かるのはひょっとしたら井口理と黒柳徹子ぐらいで、見ている内に誰が誰か分からなくなったのではないかな?

ミュージシャンでは、この人は外せないだろうと思っていた加山雄三と奥田民生は当然インタビューされていて、奥田が「あの人たちの音楽は、悲しいのかなと思ってたらまた急に楽しくなるんですよね」みたいなこと(もちろんこれはコード進行のことである)を言っていたのがまさに言い得て妙で深く共感した(奥田民生もおんなじことやってるやんかw)。

そして、金持ちのお坊ちゃまだった松本隆はある程度予想できたが、財津和夫が福岡から下駄はいて上京して武道館に観に行っていたとは知らなかったし、北山修がハガキを5枚書いたが抽選に外れてチケットが取れなかったというのも面白いエピソードだった。

でも、もっといいなあと思ったのは、上記の井口理をはじめ峯田和伸や浦沢直樹ら、みんながみんなビートルズに心酔していたということだ。

そして、僕が敬愛して止まない傑出した音楽評論家でありプロデューサーでもある高護氏の姿を映像で初めて見られたのも嬉しかった。

その高氏が「井上陽水や吉田拓郎は間違いなくビートルズの強い影響を受けた人たちであり、もう少し下の桑田佳祐になると受け止め方がもっと普通になり、そしてもっと下の世代、奥田民生あたりになると、ビートルズは完全にスタンダードであり教科書になる」みたいなことを言っていたのを聞いて、桑田世代である僕は大きく頷いた。非常に説得力のある分析である。

あらためてビートルズの偉大さとユニークさを認識させる素敵なドキュメンタリであったと思う。

ただ、あの女子高生の映像は必要だったのかな?という気もしないでもない。ま、なんとなくナビゲータ的なイメージで彼女の映像を入れるのはまだ良いだろう。ただ、ついこの間の警官たちの映像を、まるで当時の武道館の警備の様子みたいにインサートするのは如何なものかと思った。

タイトルが Mr. Moonlight だからてっきりあの曲がかかるもんだと思っていたら一度もかからなかった。じゃあ、何故このタイトルにしたんだろう?

あと、シーンの繋ぎにジングル的に使っていた  Strawberry Fields Forever のイントロに似た曲は、あれは一体何だったんだろう( Strawberry Fields Forever じゃないよね)?

エンディング・ロールの街頭インタビューで年齢カウントダウン的に(笑)好きな曲を語らせたのは楽しいアレンジだった。

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