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Thursday, November 24, 2022

Amazon『仮面ライダー BLACK SUN』全10話

【11月24日 記】 Amazon Prime Video の『仮面ライダー BLACK SUN』全10話を見終わった。

最初のリリースを目にしたときに、僕は仮面ライダーの純粋な新作だと思った。へえ、西島秀俊がやるのか。中村倫也も出るのか。え、監督は白石和彌か、すごいな。で、脚本は高橋泉!──これはしびれた。

高橋泉は監督・脚本・編集・出演のデビュー作である『ある朝、スウプは』(2005年)の時からずっと高く評価してきた脚本家である。

そして、美術監督が今村力というのもすごい。

そんなことを思いながら読んでいたら、これは新作ではなく、タイトルから分かるように、1987年から1988年にかけて、毎日放送を発局として日曜の午前中に全国放送していた『仮面ライダーBLACK』のリブート作品であると分かって驚いたのである。

なぜなら当時の同局の営業担当が僕だったからだ。

あくまで担当営業マンだから制作内容には関わっていない。だが、折に触れて撮影現場には顔を出していたし、主役の倉田てつをが選ばれたオーディションにも同席していたし、当然放送は(次のシリーズである)『仮面ライダーBLACK RX』も含めて全回観ている。

しかし、いつもいつも書いているように、僕は何を観ても何を読んでもほとんど記憶に残らない。だから、今回も記事を読みながらすぐに気がつかなかったわけだが、主人公の南光太郎という名前には記憶があったのである。え? これは仮面ライダーBLACK ではないか!と。

すると、西島秀俊が演じる南光太郎に続いて、中村倫也が演じる敵役の秋月信彦という名前が記されていた。この名前も一気に記憶が甦った。そして、確か南光太郎が BLACK SUN で 秋月信彦が SHADOW MOON ではなかったか?

これらの名前を全部引き継いでいたのだ。そして、もう一度頭から記事を読み直すと、ちゃんとリブート作品と書いてあるではないか。見落としていた。

リブートという単語が何を指すのかは明確ではない。でも、登場人物と設定をかなり引き継いでいることは確かだ。しかし、BLACK では同年輩だったはずの2人が、西島と中村では年齢が違いすぎるではないか? ──この辺りは本編を観て初めて分かることである。

そして、いろいろ調べてみて初めて、ファンの間では『仮面ライダーBLACK』が歴代仮面ライダーの中でも名作と位置づけられていたことを知った。ふーん、そうだったのか!

放送を見始めるとさすがに今の時代の映画だけにいろいろなものが豪華で精緻で、そこはさすがという感じがしたが、一方で昔と変わらぬ「着ぐるみ」感が出ているところもたまにあり、それは逆に好感が持てた(笑)

一貫してダークなイメージで押しているのは前作も今作も同じだ。

そして、第何話だったか、濱田岳が扮するクジラ怪人が出てきたところで、もうひとつ記憶が甦った。そうだ、確か『仮面ライダーBLACK』では最後にクジラ怪人が海が汚染されることに怒ったか何かでライダー側に寝返ったのだ!

そして、当時の悪の組織ゴルゴムは今作ではゴルゴム党という政党になっている。他にもいろいろな設定や登場人物を引き継いでいる。そうか、今回三浦貴大が演じているビルゲニアという人物もまた『仮面ライダーBLACK』から引っ張ってきていたのか。

もちろんすんなり繋がらないところもたくさんあるだろうが、制作チームはしっかり過去作を見てチェックして、取り込むものは取り込み捨てるものは捨てて今作を作っているのである。そこにあるのはやっぱりこの過去作へのリスペクトではないだろうか!

ただ、大きく違うのは、このドラマは人間による怪人に対する差別と排斥いう要素を織り込んで、ある意味学生運動(あるいは市民による政治運動全般)の敗北というようなテーマで括られていることであろう。そこが白石監督らしい社会派ドラマであると指摘する人もいるようだ。

しかし、一方でこの作品はかつてのファンからかなりの反発も受けているようだ。僕は仮面ライダー・フリークでも何でもないので、そういう観点では何も言うことがないが、激しい賛否に晒されているというのは非常に面白いと思う。

いずれにしてもキャストが豪華で、音楽も素晴らしく(最終回には倉田てつをが歌う『仮面ライダーBLACK』のテーマソングも流れた)、ライダーや怪人の造形も精緻で、やはり CG の進化が著しく、昔のような(時代ゆえの)安っぽさがほとんどない。

しかし、あの西島秀俊や中村倫也が「ヘンシーン!」とかやるのか、とニヤニヤしながら観てしまった。「ライダーーーキーック!」がなかったのは残念だが(笑)

令和のライダーらしい、極めてエッジの効いた、まさに話題作だった。

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