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Tuesday, October 18, 2022

映画『カラダ探し』

【10月18日 記】 映画『カラダ探し』を観てきた。羽住英一郎監督の作品を観るのは7年ぶりである。携帯小説が原作。漫画化もされているとのこと。

橋本環奈、眞栄田郷敦、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠と人気のある若手を6人揃えた。全員が主演経験があり、誰が主役でもおかしくない(醍醐だとちょっと弱いかもしれないが)。

冒頭は事件の発端の説明。夜の森を少女が何かから逃げて走っている。最初は森だけが映っており足音と息遣いが聞こえるのみであったのが、カメラがぐるんと回ると少女の姿がフレームインしてくるのは効果的な演出だ。

そして、その後、その少女を追う者の姿が一瞬映る。顔も映っておらず腰から下のショットなのだが、左手に斧を持っているのだけが見える。却々怖い画作りだ。

そして、その後、同じ高校に通い同じクラスに所属する登場人物をひととおり紹介して行く。

クラス内でハブられてボッチの生活を続けている明日香(橋本)、スポーツ万能で皆に人気がある高広(眞栄田)、クラスメートと交わらずにバーの雇われ店長(栁俊太郎)とつきあっている留美子(山本)、引きこもりで長らく登校していない篤史(神尾)、クラスでイジメに遭っているオタクの翔太(醍醐)、優等生で学級委員長の理恵(横田)。

この6人が、7月5日の 0:00 に、気がついたら学校にいる。そして人形を抱いた7~8歳の女の子=“赤い人”に襲われ殺される。結構派手なスプラッタである。ただし、夜の暗いシーンで全員が制服なので、役者をやや識別しにくいという憾みがあったのは確か。

で、実は6人とも前日に見知らぬ少女が「私のカラダを探して」と言って消えてしまうのを目撃している。そして、殺されたところで目が覚めると、それはまた 7月5日の朝なのである。

その道に明るい翔太によると、これは「カラダ探し」で、殺されてバラバラになった少女のカラダの部位を全部見つけ出して棺桶に入れてやるまで永遠に続くと言う。

なかなかよく考えた設定である。ホラー映画というのは通常は登場人物が順番に殺されて行って遂に主人公に迫って来るという体を取るものだが、それだと6人なら5回しか殺せない。それをこういう設定にしたお陰で、主人公を含む6人×何回でも惨殺シーンが描けるのである。

ただ、逆に言うと、死んでもどうせまたリセットされると分かっていると、観ているほうにそれほどのインパクトは与えない。この辺りがこの映画の構造的な弱点であると思う。

原作のほうはもっと長い話で、途中で探す人物が入れ替わるなどいろんな展開があるようなのだが、2時間の映画ではそれは無理で、映画オリジナルの篤史というキャラを作るぐらいが精一杯だ。

で、結局その構造的な問題をこの映画は乗り越えられたかと言うと、そこは少し疑問である。図書室の司書(柄本佑)が語る新しい設定を導入することによって、ひとつのアクセントはできたが、そこからが却々難しいところだ。

ただ、それまでは仲が良くもなかった6人がこうやって共通の秘密を持ち、経験を共有することによって、思わぬ絆ができ、中盤は青春ドラマ風の展開になるのは良い進み行きだったと思う。翔太の人物設定がよくあるネクラのヲタクではなく、意外に陽キャだったという辺りも面白かった。

怖がらせるシーンはよくできていた。あとは最後に何かもうひとひねりほしかったところ。あの終わり方ではちょっと弱いかなという感じだった。

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